景気動向指数の解説
景気動向指数とは
景気動向指数とは、生産、雇用、消費など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感な指標の動きを統合することによって、景気の現状把握及び将来予測に資するために作成された統合的な景気指標のことをいい、CI(Composite Index)とDI(Diffusion Index)の2種類があります。
また、CI・DIとも、景気に先行して動く「先行指数(Leading Index)」、ほぼ一致して動く「一致指数(Coincident Index)」、遅れて動く「遅行指数(Lagging Index)」、の3種類の指数があります。
現在、三重県のCI及びDIは、先行指数7、一致指数7、遅行指数6の合計20の系列により作成しています。(なお、全国は先行11、一致10、遅行9の30系列)
CI(Composite Index)指数
CI(コンポジット・インデックス)とは、採用系列の前月と比べた変化量を合成した指数で、主に景気の山の高さや谷の深さ、拡張や後退の勢いといった景気変動の大きさやテンポ、勢いなどの「量的な動き」の把握を目的とします。
【作成方法】
内閣府経済社会総合研究所の作成方法(「内閣府経済社会総合研究所景気統計部 第9次改訂後の計算方法」)に準拠して作成しています。詳しい計算方法については、内閣府経済社会総合研究所ホームページ内「統計の作成方法」のページを参照してください。
なお、三重県の外れ値の刈り込みにあたって用いるデータの期間及び閾値については、毎月の「三重県内経済情勢及び景気動向指数」の「CIを用いた景気の基調判断の基準」の頁を参照してください。
【利用の仕方】
一般に、一致指数が上昇しているときが景気の拡張局面、低下しているときが後退局面、一致指数の山(谷)の近くに景気の山(谷)が存在するといわれるように、一致指数の数値の変化の大きさが景気の拡張・後退のテンポあらわします。また、その時々の量感をグラフなどで視覚的に観察することができます。
ただし、景気が拡張(後退)局面にあるのか、景気の転換点がどこにあるのかなどについては、後述のDIと合わせて判断するのが望ましいとされています。(正確な景気の山・谷(景気基準日付)については、ヒストリカルDIに基づいて設定されます。詳細は、みえDATABOX内「景気基準日付」のページを参照してください。)
また、CIは、景気に敏感に反応するという観点から選ばれた指標の変化量を合成したものであり、経済活動を網羅的に把握したものではないことに留意する必要があります。
【基調判断】
CIによる基調判断は、一致指数の動きをみることで判断しますが、数値が上昇(低下)しても、その期間が極めて短い場合は景気拡張(後退)とみなすのは適当でなく、景気が拡張から後退もしくはその逆方向に動いたと判断するためには、CIが一定の大きさで変動することが求められます。
このように、基調の判断を行うには一定の基準が定められており、三重県では内閣府の作成している判断基準に準じて判断を行っています。(詳細は、毎月の「三重県内経済情勢及び景気動向指数」の「CIを用いた景気の基調判断の基準」の頁を参照してください)
また、一致指数の月々の動きについては外れ値の刈り込みにより極端な外れ値の影響は除かれているものの、不規則な動きも含まれていることから、移動平均値(moving average ※時点を移動しながら平均値をとることでデータの平坦化を図る)を取ることで月々の動きをならして見ることが望ましいとされています。
具体的には、足下の基調変化をあらわす「3か月後方移動平均」と、基調変化が定着しつつあることをあらわす「7か月後方移動平均」を加味し、総合的に判断します。
3か月後方移動平均
当月値を含んで過去3か月分の平均値のことで、足下の基調変化を表すとされます。
7か月後方移動平均
当月値を含んで過去7か月分の平均値のことで、基調変化が定着しつつあることを表すとされます。
寄与度
CIの前月からの変化(増減)が、CIを合成するどの個別系列から、どの程度もたらされたのかを示したものです。
DI(Diffusion Index)指数
DI(ディフュージョン・インデックス)とは、採用系列の各月の値を3か月前の値と比較して、採用系列数のうち上昇(拡張)を示している指標の割合(%)を示すもので、景気の波及・浸透度合いや景気局面の変化を判定を目的とします。
【作成方法】
採用系列の各月の値(原則として季節調整済値もしくは前年同月比)を3か月前と比較し、増加した時にはプラス(+)を、保ち合いの時にはゼロ(0)を、減少した時にはマイナス(-)をつけ変化方向を表します。(逆サイクルの系列については、符号が逆になります)
そのうえで、先行、一致、遅行の各系列ごとに、採用系列数に占める拡張系列数(プラスの数)の割合(%)を景気動向指数(DI)としています。 ※保ち合い(0)の場合は、0.5としてカウントします。
DI=(拡張系列数+保ち合い系列数×0.5)/採用系列数×100 (%)
【利用の仕方】
一致指数は、景気の局面判定に用いられます。一致指数が50%を上回れば景気が拡張局面、下回れば景気は後退局面にあると判定します。
しかし、景気がどのような局面にあるかを判断するには、一致指数が一定期間同じ方向に推移している必要があります。景気拡大または後退の期間が極めて短い場合は、景気拡大または後退と考えることは適当でありません。
また、景気動向指数は各部門への波及の度合いを表すものであり、景気変動が多くの部門に波及したときが景気の転換点と考えられます。 景気が良いか悪いかは、一応50%ラインが目安となっていますが、近年、系列間の跛行性(歩調が揃わない)も目立ってきているので、景気局面を判断するにあたっては、大半の部門に景気変動が波及している(DIが100%或いは0%に近い状態)ことを確認することが必要です。
先行指数と遅行指数については、一般的に、先行指数は一致指数に数ヶ月先行することから景気の動きを予知し、遅行指数は景気の転換点や局面の確認に利用されています。
さらに、DIを利用するうえでの注意点として、DIはパーセンテージの表示であることがあげられます。DIのパーセンテージの水準自体は、景気変動の度合いとは無関係であり、あくまで方向性を判断するためのものです。したがって、DIを利用する場合には、景気回復の水準を知ることの出来る他の指標と併せて判断することが必要でしょう。
【CIとDIの違い】
以上のように、CIが景気の山の高さや谷の深さ、拡張や後退の勢いといった景気変動の大きさやテンポという「量感」を示す指数で、量的な分析に活用されるものであるのに対し、DIは景気局面や景気転換点といった景気の「方向性」を示す指数で、質的な分析に活用されるもの、とそれぞれは位置づけられます。
何が分かる? | デメリット | |
---|---|---|
CI |
景気変動の大きさや勢い、テンポといった量的な動き 【具体的には】 …景気の山の高さや谷の深さ、拡張や後退の勢い |
CIは採用指標の前月からの変化量を合成したもので、経済活動を網羅的に把握したものではない。 → CIは数値の変化そのものが景気の量感を表すが、景気の拡張(後退)がどの分野に、どれだけ波及しているかを知ることができない。 |
DI |
景気の局面や景気転換点といった方向性 【具体的には】 …景気の拡張や後退という局面、波及度合い |
数値から景気変動の大きさをみることができない。 → DIは拡張している指標の割合であり、数値が高いことは、それだけ波及度合いが高くなっていることを表す。 |
CIとDIは、それぞれがその性質から捉えきれないデメリットの部分を補い合う特徴を持っており、両者を相互補完的に利用することで、景気の変動をより的確にとらえることが可能となります。
個別系列
三重県では、景気を映し出す経済統計の中から20の指標(国は30)を選び出し、それぞれ(1)景気に先行して動く先行指数、(2)景気と一致して動く一致指数、(3)景気に遅れて動く遅行指数、の3系列に分けて指標を作成しています。
先行指数
先行指数は、一般的に、一致指数に数ヶ月先行するといわれ、景気の動きを予知する目的で利用されます。
【採用指標】
(1)新規求人数、(2)鉱工業生産指数(生産財)、(3)自動車(新車)登録台数、(4)新設住宅着工戸数、(5)銀行貸出末残(地域銀行、東海三県)、(6)東証株価指数、(7)日経商品指数(42種総合)
以上7指標
一致指数
一致指数は、景気の現状把握に利用されます。
【採用指標】
(1)鉱工業生産指数、(2)鉱工業生産指数(鉱工業用生産財)、(3)輸入通関実績(四日市港)、(4)有効求人倍率、(5)人件費比率(製造業)【※】(6)大型小売店販売額(既存店調整値、前年同月比)、(7)所定外労働時間指数(製造業、5人以上)
以上7指標(※印は逆サイクル)
遅行指数
遅行指数は、一般的に、一致指数に数ヶ月から半年程度遅行するといわれ、景気の転換点や局面の確認に利用されます。
【採用指標】
(1)雇用保険受給者実人員【※】、(2)常用雇用指数(製造業、30人以上)、(3)法人事業税調定額、(4)貸出約定平均金利(地元地域銀行、総合、ストック)、(5)家計消費支出(津市、二人以上の世帯、前年同月比)、(6)消費者物価指数(津市、前年同月比)
以上6指標(※印は逆サイクル)
逆サイクル
採用系列が、景気の動きに対し反対の方向に動くことをいいます。
三重県が採用している指標の中では、一致指数の人件費比率と遅行指数の雇用保険受給者実人員の2指標が逆サイクルにあたります。
【例】 雇用保険受給者実人員
雇用保険受給者が増加すればマイナス要因になり、逆に減少するとプラス要因となります。
累積DI
月々公表しているDIの値を累積したものをいいます。累積には、以下の公式を用います。
(累積DI)t=(累積DI)t-1+(DI-50)
累積DIは、そのグラフが描く山・谷が景気の山・谷と概ね対応しているため、景気転換点を容易にとらえることができます。ただし正式な景気循環の検出と転換点の設定については、ヒストリカルDIを用いて総合的に判断します。
出典に関するご注意
CI指数及びDI指数の解説は、内閣府経済社会総合研究所の作成した手引きの一部を抜粋、加工して作成しています。