平成18年度景観シンポジウム
「美しいみえの風景を みんなで守ろう みんなで育てよう」の概要

- 主催 三重県
- 共催 伊賀市
- 日時 平成18年12月9日(土曜) 13時00分~16時30分
- 場所 ウェルサンピア伊賀 白鳳の間
(三重県伊賀市西明寺2756-104) - プログラム
挨拶 | 三重県県土整備部理事 | |
県の景観施策の紹介 | 三重県県土整備部担当者 | |
景観づくり活動発表 | 三重県内の景観まちづくり活動の発表 | |
・宿場の賑わい復活一座(亀山市) | ||
・まっさか参の会(松阪市) | ||
・二見浦わいわい元気塾(伊勢市) | ||
基調講演 | 西村 幸夫 東京大学教授 | |
演題「魅力的な風景づくりに向けて」 | ||
パネルディスカッション | テーマ「地域の魅力を磨くまちづくりを進めるために」 |
コーディネーター | 西村 幸夫 | 東京大学教授 | |
パネリスト | 浅野 聡 | 三重大学大学院工学研究科助教授 | |
菅原 直 | NHK津放送局放送部副部長 | ||
滝井 利彰 | 伊賀上野まちづくり市民会議議長 | ||
今岡 睦之 | 伊賀市長 |
- パネル展示 県内でまちづくり活動を行っている団体の取り組みをパネル紹介
(宿場の賑わい復活一座、まっさか参の会、二見浦わいわい元気塾、伊賀上野まちづくり市民会議) - 景観シンポジウム参加者数
総参加者数156名(出演者、スタッフ含む) - 景観シンポジウム開催趣旨
私たちが住む三重県は、伊勢平野から眺望する美しい山並み、川がつくり出す美しい渓谷、伊勢湾から熊野灘にかけての変化に富んだ海岸線などの豊かな自然や、伊勢神宮・熊野古道や伊賀上野城などを中心とした城下町に残される情緒あるまちなみなど数多くの歴史・文化的資産に恵まれています。
しかし、普段、当たり前のように見ているこの景観も社会経済の変化によって、徐々に美しさが失われつつあります。
私たちは、この美しいみえの景観を守り、育てていくために何ができるか、何をするべきか。みんなが気づき行動するきっかけとなるよう、このシンポジウムで各地域の取組みを紹介しながら、景観まちづくりの必要性や今後の取組みについて、一緒に考えます。
シンポジウムの内容
三重県内の景観づくりの発表
宿場の賑わい復活一座(亀山市本町・西町周辺)
亀山市で旧東海道亀山宿の賑わいをもう一度復活させようと、まちづくり活動を進めており、「屋号看板」の設置や「お休み処」の展開など市民主体の景観まちづくりについて、メンバーの鈴木壽一さんから紹介していただきました。
まっさか参の会(松阪市本町・魚町・紺屋町)
参宮街道の中心で昔の風情の残っている「本町」、昔魚屋さんが沢山あった「魚町」、松阪木綿の染物をしていた「紺屋町」が一緒になって、朝顔を育てたり、七夕まつりを開くなど、歴史と文化を踏まえた景観まちづくりを進めていることを、メンバーの高島信彦さんから紹介していただきました。
二見浦わいわい元気塾(伊勢市二見町)
二見の旅館街を中心に、道路の景観整備などのハードの取組とあわせ、お客様へのおもてなしを考えた「おひなさまめぐりin二見」の開催などソフト的な取組を進めていることを、メンバーの野口利哉さん・大田真寿美さんのお二人に紹介していただきました。
基調講演「魅力的な風景づくりに向けて」
東京大学の西村幸夫教授から、全国の風景まちづくりの事例を紹介していただきました。
- 大阪市の法善寺横町のまちなみ風景を残していく
- 東京都国立市を例にした高層マンションの建設事情
- 田んぼや葦原、農村など田舎の風景の価値
- 田舎の道と風景を活かした町おこし
- 岡山の後楽園や盛岡、金沢など建築物の高さ規制による景観保存
- 新潟県村上市での町家のよいところを活かしたまちづくり
「ヒューマンスケールで手づくりで歴史の温かみがあり自然が感じられる、そんなまちまちが良いと思われるようになってきました。それはどこにでもあり、そんなに難しくないことです。ものの見方を変えて、当たり前であったものに光をあて、磨いていくことから出発できます。三重県にもそんなところがたくさんあると思います。自分達の周りにどんな資産があるのか、もう一度振り返り、前を向いていけば、すばらしいまちが各所にできてくると期待しています。」
パネルディスカッション「地域の魅力を磨くまちづくりを進めるために」
菅原 直さん(NHK津放送局副部長)のお話
- テレビ番組を制作している側は、風景が美しく見えるように画面に切り取っている。
- 地域の景観とあわせて、そこに住んでいる人たちとの出会いや空気感を伝えたい。
- 三重県の歴史街道をレポートして、一箇所だけでなく、歴史の感じられるまちが線でつながっているということに感動を覚える。
- 三重県の良い風景を県内はもとより、全国に発信していくという、地域に密着したメディアとしての役割がある。
浅野 聡さん(三重大学大学院助教授)のお話
- 三重県の県土の構造を活かした景観のキーワードは、「歴史街道」と「自然公園」である。
- 関町「百六里庭」、上野城下町「ウォーキングトレイル」、大山田村「景観づくりプロジェクト」、伊勢市「河崎のまちづくり」、三雲町「市場庄のまちづくり」を地域の皆さんと一緒にやってきた。
- 三重県でも伊賀市や松阪市などで高層マンションによる景観紛争が生じてきた。それには、まちづくりのルールづくりが大切であり、みんなで協議しながら風景づくりをしていこうという風土をつくっていく必要がある。
滝井 利彰さん(伊賀上野まちづくり市民会議議長)のお話
- まちづくり市民会議は、顕彰制度によるまちの再発見から始った。
- 自分のまちを見つめ直そう、良いところを発見しようとの思いで新聞記事を連載している。
- 町家を再利用するには、様々な障害があるが、これから、町家の再利用を増やしていきたい。
- 城下町を行燈で盛り上げていきたい。みんなに協力してもらうのではなく、みんなと一緒になって続けていくことが大切である。
今岡 睦之さん(伊賀市長)のお話
- 平成5年から、伊賀市の景観行政が始まった。建物などの調査、まちづくり計画の策定、条例の制定などを行った。これからの景観行政団体として、景観計画の策定や条例の改正をしていく。
- 銀座通りの整備(背骨)、駅前の再開発(顔)、お城周辺の風景づくり(頭)、旧市街地全体でしっかりとした形にしていきたい。
- 市民と一緒になってまちの活気を取り戻したい。
- 田園地帯も含めて、「里山田園都市づくり」に市民の皆様と一緒に取り組んでいきたい。
コーディネーターまとめ
規制がないということは、今あるものを壊す圧力として働くということ。規制が緩いということはいろいろ選択肢があるから厳しいより良いかもしれないと思うかもしれませんが、今あるものを否定する圧力につながりかねない。もう少し冷静に今の環境を守るべきものだと考えると、いろいろな手を打っていかなければいけないかもしれません。
景観法は、その有効な手段になりそうだし、そのためにも県内各所でこのような議論が沸きあがって、景観行政団体が次々と生まれ、コントロールをきちんと効かせた、スパイスの効いた景観計画を立てていただき、それをもとに自分達の環境は自分達で守るということができれば良いと思います。
- 景観シンポジウムの内容をもっと詳しくお知りになりたい方は、景観まちづくり室にご連絡ください。シンポジウムの記録をまとめた冊子を送付させていただきます。(送料は、ご負担願います。)