伊勢市停車場線修景整備事業
~三重県伊勢市本町~ 地図(Mie Click Maps)
事業の経緯
伊勢市駅前から外宮に至る県道伊勢市停車場線は、通称「神宮参道」と呼ばれ、地域の人々に親しまれ、昭和57~58年度に電線類の地中化を行うとともに、植樹帯を配置したコミニュティ道路として整備されました。しかし、時代の急速な変遷の中で植樹帯や駐車車両による通行の支障、伊勢市の玄関口や外宮への参拝道としての景観上の違和感、バリアフリー化されていないなどの問題点がありました。
また、当地域は外宮などにまつわる神話や伝説などが豊富に残され、歴史や文化的な面での魅力にあふれた地域資源がたくさんありますが、十分に活用できておらず、伊勢神宮が有する神聖な雰囲気を感じることができない状態となっていました。
このため、県道伊勢市停車場線の修景整備を進めるため、平成15年度に地域住民のまちづくり団体である神宮参道懇話会、地域の自治会、県と市の行政で構成する「神宮参道のみちづくりを考える会」を組織し、道路の基本計画案を策定しました。また、平成16年度には、学識経験者や公共交通機関の関係者も交えた「神宮参道・伊勢市駅前まちづくり委員会」を組織し、道路整備のみならずまち並みも含めた景観形成についてとりまとめた「まちなみまちづくり提言書」が伊勢市、三重県へ提出されました。三重県は、この提言をもとに道路詳細設計を実施し、伊勢の玄関口にふさわしい周辺の景観にも配慮した道路整備を実施しました。
住民参画のまちづくり
当該事業を実施するにあたって、従来のように道路や河川を単に土木工学的な視点だけから検討するのではなく、地域住民のまちへの愛着や親しみ、誇りを掘り起こしつつ、地域住民と行政との協働による総合的な「景観まちづくり」のなかで考え、実践するという新しいプロセスで景観に配慮した公共事業を進め、地域の活性化や観光振興につなげていくことを目指してきました。
景観に配慮した公共事業をデザインするにあたって、まず、地域の空間デザイン、景観まちづくりを考えるところから始めました。最初に、「鳥の目」で歴史・文化も含めた街並みを俯瞰、探索したうえで、「虫の目」で公共施設をデザインすることが大切であり、地域住民、行政とともに検討することにより、地域住民と共感をもった公共事業の実践を目指してきました。具体的には、地域の景観特性や課題をまとめ、景観のあるべき姿を描き、まち並みづくりに向けたルールや取組案を作成し、さらに、こうした地域全体の景観デザインを基に調和という観点から、道路の景観デザインを検討し、修景整備を実施しました。
平成15年度
まちづくり団体「神宮参道懇話会」を中心として、住民、行政で構成される「神宮参道のみちづくりを考える会」を組織し、道路修景イメージの共有を図りました。
平成16~18年度
市民、事業者、学識経験者が協働で神宮参道を軸とした景観まちづくりを考えるため、「神宮参道・伊勢市まちづくり委員会」を設置し、まず、まちなみまちづくりのコンセプト、基本方針、景観デザインを議論し、まちづくりのソフト・ハード対策を検討しました。これら景観まちづくりの取組の中で、みちづくりの修景を位置づけ、デザイン検討を行いました。
これら住民参画のプロセスを経て、景観上工夫した事業を実施した結果、地元住民自らが、みちを花で飾ったり、高張り提灯を使った神宮参道らしさの演出を行ったり、イベントなどで残った石張りの汚れを綺麗にするなど、みちへの愛着や親しみが生まれつつあります。また、地域住民主体で新たな各種イベントが開催されるなど、「道という舞台」を使ったソフト事業の展開により、徐々にではありますが、まちの賑わいなど中心市街地活性化に向けた動きが生まれつつあります。
地域によるまちづくり取り組み状況
第62回式年遷宮(平成25年)に向けた遷宮神事
お木曳き、木やりといった遷宮行事で、全面フラットに整備された神宮参道を舞台として活用した取組の一つです。
「灯りイベント」、「ゆかたで千人参り」
神宮参道~外宮にかけて、灯りの設置、浴衣を着ての参拝などを実施します。
「ちびっ子博士グランプリ」
次世代を担う小学生に神宮参道や外宮の歴史・文化などを継承するため、語り部とともにまち歩きを行い、その後にクイズ形式でグランプリを決定するイベントです。
「楽市(らくいち)」
道路整備前から実施されている露天市場の取組で年に2回開催されています。
実施設計
検討会議、ワークショップで出された意見をとりまとめた提言内容です。
施工~完成~維持管理
平成16年度に工事着工しました。 いろんな場面で地域住民が関わっています!
工事の着手の段階で、実際に工事に使用する材料の再確認と一部の材料において、参加者に色などを決定していただきました。 |
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工事が一部完成したところで、予め設計時に配慮した段差等のバリアフリー状況について、関連NPO団体や住民が合同でチェックしました。 |
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外宮参拝者へのもてなしの一環として、灯りのイベントを実践している様子。外宮にささげる「献燈」とした提灯を地元住民が設置。予め設計段階で照明灯への添架、電源確保を工夫しました。 |
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工事完成後、地元女性まちづくり団体が中心となって自主的に道路清掃や歩行者に潤いを与える植栽を設置している様子。このようにソフト施策を実験的に取り組んだり、来訪者にアンケートを実施するなど、後日、まちづくりの会合でそれら効果等を検証し、継続的なまちづくりに取り組んでいます。 |
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完成
平成18年4月に完成し、4月20日に盛大な竣工式が行われました。 | ![]() |
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地域の方々に清掃等を行っていただいており、行政と協働して快適な施設の維持をしています。
みんなで一緒につくりあげたみちだから、みんなで大切に使いたいですね。
平成19年度都市景観大賞「美しいまちなみ優秀賞」受賞!!
地域と行政が協働したこれら一連の動きが認められ、美しいまちなみ優秀賞を受賞しました。 ※都市景観大賞「美しいまちなみ賞」 都市景観大賞「美しいまちなみ賞」は、美しいまちなみを創り、育てるために、公民が協力し、ハードとソフトを含めた総合的な取組が行われている地区を全国から募集し、その中も特に優れた地区について表彰を行い、広く国民に紹介していくことにより、より良い都市空間の形成を目指すものです。
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![]() 神宮参道の状況 |