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平成27年10月05日

同和教育の理念や成果を重要な柱とする人権教育を継承・発展させるために                      ~各校における実践事例より学ぶ~

 

 (2015年10月作成)
 
 2013(平成25)年度に三重県教育委員会が実施した「人権問題に関する教職員意識調査」の結果からは、人権教育の取組が量的に拡大してきているという成果が見られた一方で、課題も明らかになりました。その一つが、「各校で世代交代が進むなか、同和教育の理念や成果を継承し、発展させるために、どのような取組を進めていくか」という課題です。
 2015(平成27)年度の人権教育管理職研修会では、小・中・県立学校からお一人ずつの校長先生にご協力いただき、パネルディスカッションを行いました。同和教育の理念や成果を重要な柱とする人権教育の取組について、具体的な実践をふまえてお話しいただきました。
 その実践事例のなかから、いくつかをご紹介します。

 

教職員調査報告書

パネルディスカッション

 

(1)教職員の資質向上のための研修

 人権教育を進めていくうえで、一人ひとりの教職員が自分と人権問題との出会いや係わりを見つめ直すことはとても重要です。そのための一つの方法として、新転入者研修での実践を紹介します。
 

「部落問題との出会いを語り合う新転入者研修」

 本校では、新転入者に対する人権教育研修に校長も入り、部落問題との出会いを語り合うようにしています。校内だけで行っていたこともありましたが、現在は地域に出向き、人権に係わる活動をしてみえる方にも入っていただいて行っています。
 この研修の留意点としては、「出だしを大事にすること」があります。最初の話がありきたりな内容だと、その後も同様になりがちです。それで、最初に誰がどんな話をするかを大切にしています。人権教育担当と相談し、校長が口火を切らせてもらったこともありました。
 私は、人権教育に対する思いを語るということは、「ともに人権教育を進めていきましょう」という、新転入の教職員へのラブコールであると考えています。また、お互いに思いを出し合うことで、つながりを深めることもできると感じています。
 部落問題との出会いが少ない教職員にとっては、この研修で聞いた話が一つの出会いとなり、その後、教育的に不利な環境のもとにある子どもと係わっていくときの「芯」になると考えています。

 

(2)学力保障のための授業研究

 教育的に不利な環境のもとにある子どもの学力を保障する授業を行うためには、「どのような観点をもって授業をするのか」について、教職員が共通認識をもって取り組むことが大切です。ここでは、「課題のある子ども」を中心にすえた授業づくりのための実践を紹介します。

「課題のある子ども」を中心にすえた授業づくり

 本校の授業改善の取組において大切にしていることは、「課題のある子どもを中心にどうやって授業を進めるのか」「子どもと子どもが学び合う関係性をどのようにつくるのか」等を明確にしたうえで授業を行うことです。研究授業の事後検討では、「その子どもが生き生きする場をつくれていたか」などを、外部講師の方にも入っていただき、全教職員で検証していきます。このような授業研究を行うことで、厳しい課題を背負わされている子どもが生き生きしたり、授業のなかで子どもと子どもがつながったりすることの大切さを、全教職員で確認することができます。
 取組を通じて、若い教職員たちが「授業での説明を極力短くして、子どもたちが自主的に考えたり、学び合ったりする環境をつくる」といったことを意識するようになってきました。

 

(3)「子ども理解」を深め、学校全体で係わるための取組

 子どもを理解するためには、その生活背景や地域の実態とともにとらえることが大切です。そのための取組について、教職員が共通理解をもっていることも大切です。ここでは家庭訪問とケース会議に係わる実践を紹介します。
 

家庭訪問に係わる共通理解

 本校では、 「5分以上話すことがある場合は、電話ではなく、家庭訪問に行きましょう」を合言葉にしています。かつては、「家に来てほしくない」と言う保護者に対して電話で済ませてしまう教職員もいました。しかし、子どもの課題をつかむためには、家庭訪問を大事にするべきだと伝え、共通理解を図りました。
 また、「特に問題のないときに行く家庭訪問」も大切にしたいと考えています。何もないときにちょっと立ち寄って保護者や子どもと話をするなかで、保護者と少し打ち解けた話ができるようになったり、学校では見ることができない子どもの姿を知ることができたりします。
 このような家庭訪問を行うことで、保護者とのつながりができたり、子どもといろいろな話ができるようになったりする若い教職員の姿が、少しずつ見られるようになってきています。

 

「一人で抱え込まない」ためのケース会議の取組

 十分な食事がとれない等、何らかの家庭的な課題をもっている子どもたちがいます。そのような子どもたちへの対応を、担任や学年団だけで抱え込んでしまわないように、昨年度より、ケース会議を行っています。
 ケース会議には、校長・教頭の他にその子どもと接点のある教職員が参加します。まず、担任から子どもの様子や生活背景を伝えた後、他の教職員も、それぞれの立場からとらえている子どもの様子を出し合います。
 それを通じて子どもの課題を明確にし、「学校としてどのようにその子ども・保護者と係わっていくのか」といったことを検討していきます。必要に応じて、市の家庭児童課や臨床心理士、民生委員等、行政機関や地域の人々にも広くご協力いただき、みんなで子どもを見ていこうとしています。
 この取組によって、担任だけでなくいろいろな教職員が、以前よりも広く深くその子どもと係われるようになりました。その結果、今まで登校しづらかった子どもが学校へ来られるようになってきたり、今まで連絡が取りにくかった保護者から学校へ連絡がもらえるようになったり、少しずつ良い変化が見られるようになっています。

 

(4)よりよい人権教育推進体制をつくる取組

  教職員の世代交代が進むなか、ベテラン世代と若手世代の間をつなぐミドルリーダーをいかに育成するかが大きなカギとなります。ここではミドルリーダー育成の取組について紹介します。
 

ミドルリーダーが育つための条件整備

 学校におけるミドルリーダーが育つよう、どのように条件整備をするかは、管理職の重要な役割だと思っています。
 昨年、人権教育担当者に「全国人権・同和教育研究大会」に参加するように勧めました。参加した担当者は、そこで優れた実践と出会い、「その学校の授業を見たい」という思いを私に伝えてきました。そこで、私はその学校に依頼し、担当者を研究授業と事後検討会に参加させてもらいました。担当者は、このように外部で学んできたことを校内研修でフィードバックをすることで、学校全体に広めています。
 最近、うれしいことがありました。その人権教育担当者が学校の給湯室の壁に、人権教育に係わる資料を自主的に掲示するようになったのです。しかも、自分の感動したところに線を入れたり、コメントを書き込んだりして、読みやすくする一工夫もしてあります。私もお茶を飲みに行ったときに、よく読んでいます。このようなミドルリーダーを中心に、これまで大切にしてきたことを継承していけたらいいなと思っています。

(5)学校・家庭・地域の連携をつくる取組 

 学力保障・進路保障等、学校における様々な取組を進めるためには、家庭・地域との連携が不可欠です。ここでは人権教育推進協議会や小中高の連絡会の実践を紹介します。
 

人権教育推進協議会・PTAでの取組

 本校の地域には、地域・行政・学校が一体となって、人権を尊重するまちづくりや差別をなくす取組を進めている協議会があります。本校の教職員は、その協議会が実施する地区懇談会に参加しています。そこは、地域の人や保護者の思いを直接聞き、子どもたちの生活背景を知ることができる、大切な場です。そこでの学びやつながりを、今後の実践にも活かしてほしいと思っています。
 また、本校のPTAが中心となって、『同和問題を考える会』を年3回行っています。この会には、保護者や地域の人、教職員が参加しています。この会は、教職員にとって、自分と部落問題との出会いや向き合い方を振り返ったり、自分の人権感覚を問い直したりする場となっています。


 

小中高の連絡会の取組

  私たちの地域では、人権教育推進における小中高の連絡会を、昨年度立ち上げました。 連絡会に参加するのは、小中高の人権教育担当者と社会教育関係者です。この連絡会では、各校の実態や課題を交流し、地域における人権課題を明らかにするとともに、課題解決に向けた各主体の連携協力を図っています。具体的には、公開授業や人権フォーラム等を参観し、子どもの姿を通して課題や成果を共有し、実効性のある課題解決の手法等の確立をめざしています。
 このような地域としての体制は、人材を育成していくという点からも大切なことだと考えます。私自身、人権教育担当者だったときには、小中高の連絡会で鍛えていただいたと思っていますし、そういう環境が人間をつくっていくと思います。
 


 ここにご紹介した様々な実践は、地域性・学校規模・校種等により、そのまま応用できるものばかりではないと思いますが、その核となる考え方や姿勢については、参考になるのではないかと思います。それぞれの学校の実態に合わせて、取組に活かしていただければと思います。

 

本ページに関する問い合わせ先

三重県 教育委員会事務局 人権教育課 調査研修班 〒514-0113 
津市一身田大古曽693-1(人権センター内)
電話番号:059-233-5520 
ファクス番号:059-233-5523 
メールアドレス:jinkyoui@pref.mie.lg.jp

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