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平成29年12月06日

2017(平成29)年度 人権学習指導資料等活用のための講座 報告

 三重県教育委員会では、人権学習教材及び人権学習指導資料の活用のための講座を実施しています。
 今年度は、人権学習指導資料「気づく つながる つくりだす」、人権学習教材「わたし かがやく」、人権学習指導資料(中学校)「性的マイノリティの人権」、人権学習指導資料(小学校高学年)「みんなのひろば」、いじめ問題を解決するための指導資料「ともに つくる あした」に加え、2017(平成29)年3月に発行した人権学習指導資料(小学校低中学年)「みんなのひろば」の活用のための講座を実施しました。
 ここでは、その概要をお知らせします。

1 人権学習指導資料「気づく つながる つくりだす」活用のための講座

右寄せ

 本講座では、「性的マイノリティの人権」をテーマに、埼玉大学基盤教育研究センターの渡辺大輔さんに、「いろいろな性、いろいろな生き方~学習において大切にしたい観点とは~」と題して、ご講演いただきました。
 その後、グループで、性的マイノリティが安心できる学校をつくるために自校で行っている取組、やりたいと思っている取組を交流していただきました。


【参加者アンケートより】
  • 「性的マイノリティのこと」を考えるのではなく、「自分たちみんなのこと」として、性の多様性について子どもたちとともに考えていく授業を進めていきたいと思いました。
  • 性別違和のある男子のいじめや暴力を受けた割合の高さに、ショックを受けました。苦しんでいる生徒がいるかもしれないということを頭に置いて指導していきたいです。
  • 他校の実践的な取組を知ることができてよかったです。実際に性的マイノリティの生徒に出会ったことのある先生方も何人かおられて、具体的なかかわり方について改めて知ることができました。

2 人権学習教材「わたし かがやく」活用のための講座

右寄せ

 本講座では、外国人の人権に係わる内容を取り上げました。まず、三重県内の外国人住民数や市町別の外国人住民数のデータを用いて、三重県内の住民数に占める外国人の割合の高さを確認しました。
 次に、日本各地でヘイトスピーチやデモが行われている状況を受けて2016(平成28)年に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」、いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」が施行されたことに触れ、ヘイトスピーチを解消するための取組の必要性について説明し、その取組に活用できる教材として、「朝鮮半島と日本~歴史と文化との出会い~」を紹介しました。
 また、2016(平成28)年に、法務省の委託事業として実施された「外国人住民調査報告書」をもとに、「外国人であることを理由に入居を断られた」等の外国人を取り巻く厳しい状況について説明しました。
 次に、公益社団法人三重県人権教育研究協議会の谷崎洋平さんに、これまで担任した外国につながる子どもたちの厳しい生活状況や、そのような子どもたちとまわりとの関係をつくるための取組について報告をしていただきました。その後、谷崎さんのお話を受けて、感想や今後学校で取り組んでみたいことについてグループで意見交換をしました。
 また、人権学習指導資料(小学校高学年)「みんなのひろば」より、言葉を乗り越えるための学習として、学習展開例「つくってみよう! 『やさしい日本語』」を紹介しました。

【参加者アンケートより】
  • 今、外国につながる子どもがクラスにいて、その子の暮らしにくさを感じています。その子がいることでまわりの子も元気になれるような取組をしたいといつも考えています。今日教えていただいた教材を学校の実態に合わせてアレンジし、子どもたちをつなげるために活用していきたいと思いました。
  • 谷崎さんのお話を聞いて、どの子にかかわるときも、子どもとしっかりかかわる、家庭訪問を大事にする、表面的でなく深いつながりをクラスでつくる等、根本は同じだと再確認できました。
  • 高校でも活用できそうな内容でした。特に、「みんなのひろば」の「やさしい日本語」は、ソーシャルスキルトレーニングでも使えると思いました。

3 人権学習指導資料(中学校)「性的マイノリティの人権」活用のための講座

右寄せ

 指導資料の概要と、性的マイノリティに係わる基本的な事柄やいじめ等の被害状況について説明した後、学習展開例「性的マイノリティ(少数者)って?」を使って、性的マイノリティについての基礎知識を学んだり、性的マイノリティ当事者に「自分の性のあり方を隠さなければ」と思わせてしまう社会状況があることに気づいたりする学習展開を体験していただきました。 

 その後、自校で性的マイノリティに係わる取組を推進するうえでの課題とその解決策について、「ワールドカフェ」(※)という手法を用いて考え合っていただきました。

※ワールドカフェ
 ワールドカフェとは話し合いの手法の一つで、カフェのようにリラックスした雰囲気の中で進めていくものです。ワールドカフェによる話し合いは、自分の意見が言いやすく、相手とのつながりを意識できるという効果があります。また、少人数で話しているにもかかわらず、多くの人との意見交換や知識の共有ができるという効果もあります。

〈やり方〉

  1. ある一つのテーマについて、4人程度のグループでアイデアを出し合い模造紙にまとめていきます。
  2. グループのうちの一人が残り、それ以外のメンバーは別のグループへ移動し、新しいグループをつくります。
  3. 残った一人が、まず、模造紙をもとに話し合われた内容を伝え、つづいて、移動してきた人が、前のグループで話し合われた内容を伝えます。それらをもとに議論を深め、出されたアイデアを模造紙に書き加えていきます。
  4. これを数回行った後、最初のグループに戻り、他のグループで得た情報をもとのメンバーと共有します。
【参加者アンケートより】
  • 性的マイノリティについて、自分は知っているつもりになっていたことに気づきました。
  • 最も印象に残ったことは、「先生が、性的マイノリティを認める発言をしてくれたことが嬉しかった」という当事者の子どもの声が多いことでした。そのような教職員の発言で、当事者が声を上げられるような環境ができていくということがよく分かりました。
  • 講座を受講し、日頃の小さな取組が子どもたちとの信頼関係を深めることにつながることがわかりました。職場でも、当事者が安心できる雰囲気をつくっていかなければと感じています。

4 人権学習指導資料(小学校高学年)「みんなのひろば」活用のための講座

右寄せ

 部落問題に係わる学習展開例「だれもが大切にされる世の中に」を、模擬授業形式を取り入れながら実施しました。この学習展開例は、水平社宣言についての学習をふまえ、その理念が現代の社会にも活きていることを理解できるようにすることをねらいとしたものです。
 「だれもが大切にされる世の中」をつくるために自分が大切にしたい権利についてグループで意見交換することを通じて、水平社宣言の内容についての理解を深めた後、その理念を実現するための様々な取組が県内で行われていることを学ぶという学習の流れを体験していただきました。
 また、2016(平成28)年に施行された「部落差別の解消の推進に関する法律」について説明するとともに、この法律に「現在もなお部落差別が存在する」と明記されていることを受け、「差別は、どこに、どのような形で存在しているのか」について、それぞれの経験も振り返りながら出し合っていただきました。
【参加者アンケートより】
  • 実際に体験しながら、学習展開例の内容やねらい、活用方法について聞かせてもらえたので、とても分かりやすかったです。子どもの姿をイメージしながら学ぶことができました。
  • グループワークでは、様々な気づきや学びがありました。様々な差別の実態についても知ることができました。今後の取組に活かしていきたいです。
  • グループ活動は、いろいろな講座で取り入れられていますが、こんなに楽しくて元気になれた活動は久しぶりでした。説明の中にあった「聞いてもらえる安心感」「話すことで考えが整理される」は、その通りだと思いました。学校の研修等でも参考にしたいと思いました。

5 いじめ問題を解決するための指導資料「ともに つくる あした」活用のための講座

右寄せ

 

 いじめの問題に関する三重県の調査データから、いじめに係わる状況は依然として深刻であることを説明した後、学習展開例「あなたにできること」を使い、いじめがある状況でできることを考え合う学習展開を体験していただきました。
 また、2017(平成29)年発行の人権学習指導資料(小学校低中学年)「みんなのひろば」より、学習展開例「いじめストップ! まず、自分から!」を取り上げ、いじめに無関係な人はいないことに気づくための学習展開を説明しました。
 また、いじめ問題を解決するための指導資料「ともに つくる あした」に掲載している教職員研修プラン「いじめに係わる経験を共有する」について説明するとともに、体験していただきました。

【参加者アンケートより】
  • 授業の実践例やグループの討議等をとおして、いじめについて改めて考えることができました。今日学んだことを2学期以降に活かしていきたいと思います。
  • 中学校や高校の先生とグループになり、違った世代の子どもたちの実態を知ることができ有意義な時間となりました。「いじめを見たら注意する」と理解していても実際どうしていけばよいのか分からないものです。紹介いただいた学習展開例は、そこに切り込み、子どもたちに「これならできそう」と思わせる事柄をいろいろ考えさせることができるよい教材だと思いました。実践していきたいです。
  • いじめにはすべての人間が関係していることを、子どもたちに伝えていかなければと思いました。

6 人権学習指導資料(小学校低中学年)「みんなのひろば」活用のための講座

右寄せ

 指導資料の概要を説明した後、学習展開例「わたしの大切な人」を、模擬授業形式を取り入れながら実施しました。この学習展開例は、具体的な事実や生活の一場面を見つめ直すことをとおして、自分には大切な人がいることや自分が大切にされていることに気づくことをねらいとしています。

 家族をはじめとする自分と関わりの深い人が自分のためにしてくれたことや、その人たちに対する自分の思いを、すごろくを使った活動をとおして振り返り、自分にとっての「大切な人」についての理解を深めた後、母親とのくらしの一場面を描いた子どもの作文をとおして、日常生活の中に人を大切にしたり大切にしてもらったりしている事実がたくさんあることに気づくという学習の流れを体験していただきました。
 また、それぞれに「わたしの大切な人」を書く活動に係わっては、日常生活の中で見落としがちな事実に気づくためには、「具体的な一場面について、会話文を中心に、順序立てて」書くことが有効であることを説明しました。
 その後、指導資料監修者の佐久間敦史さん(大阪教育大学)に執筆いただいた「発刊に寄せて」の一節を取り上げ、「正答」を子どもたちに押しつけない人権学習を展開することの大切さについてグループで話し合いながら確認し合いました。

【参加者アンケートより】
  • 気になる子がいても、その子の生活背景をつかみきれていなかったように思います。今日、「みんなのひろば」の活用方法を教えていただき、「こんな授業をしたい」と強く思いました。
  • 事実を綴ることの大切さを学ぶことができました。と同時に、自分自身が書くとなると、「したとおり」「見たとおり」に書くことはなかなか難しいと感じました。また、教師が自分自身のことを語ることが大切なことだと改めて感じました。
  • 「人権教育で、価値観や正答を子どもたちに押しつけていたのではないか」という問いかけに考えさせられました。「教えたいことを直接教えず、子どもたちが学び気づくことを大切にした授業を考えたいと思いました。

 

7 人権学習指導資料等 活用実践報告

 本講座では、津東高等学校の芝野真由美さんと、松阪市立中川小学校の中井千晶さんより、人権学習指導資料を活用した取組について報告をしていただきました。ここではその一部を紹介します。
 

 
 

右寄せ

報告1

 芝野さんは1年生担任をしています。入学したばかりの子どもとの1・2学期の関わりについて、人権学習を中心に報告していただきました。1年生の1学期は、「新入生アンケート」の結

果を活用して人権学習を行いました。この年度は、いじめに関わる経験やいじめに対する考え方に着目しました。具体的には「身のまわりでいじめを見たとき、見て見ぬふりをした」「被害者にも問題がある」という回答を課題として取り上げ、「ともに つくる あした」の「『理由』? 『責任』?」(P.27)、「あなたにできること」(P.56)という二つの学習展開例を活用し、授業を行いました。芝野さんは授業の最後に、「いじめられたとき一人で抱え込んでいた」という回答に触れ、「いじめだけでなく、しんどいことがあったときに、誰かに頼る大切さ」について、自身の経験もふまえ、訴えました。この授業の後しばらくして、何人かの子どもが、芝野さんに部活動の悩みなどを話すようになったといいます。
 2学期は人権講演会を中心に取組を進めました。講演会後、いじめに係わる自分の経験を講演内容に重ねて感想を書いた子どもがおり、芝野さんはその子どもと話をしました。次の授業で、その子どもを含めた何人かの感想を教材として、子どもたちが意見を出し合う活動を行いました。いじめに係わる経験を書いた子どもは、活発に話し合いに参加していたそうです。
 実践報告を受けて、参加者にもそれぞれの経験や考えをグループで出し合っていただきました。芝野さんもグループでの話し合いに参加し、3学期以降、これまで以上に子どもたちをよく見ていきたいと話してみえました。
 
【参加者アンケートより】
・一度の授業で完結するものではなく、1学期、2学期にわたっての学習であったからこそ生徒の
 人権意識が育っていったのだと思う。特に1学期に芝野先生が自分の体験を語ったことは、クラ
 スづくりを進めるうえで大きな意味があったと感じた。
・高校の実践を知ることができるよい機会となった。「自分のことを語る」ということの価値につ
 いてグループでも話し合った。子どもたちとつながるために、教師が自分のことを話すことはと
 ても大切。自分もそのことを大切に3学期を過ごしていきたい。
・ワークシートの内容から学ぶことも多かったが、芝野先生の前向きな取組姿勢や、グループの先
 生方の感想から自分自身がクラス運営に今後活かしていきたいと思える情報がたくさん得られ
 た。

 
 

右寄せ

 

報告2

 中井さんは、教職経験3年目で小学校4年生を担任しています。
 クラスの中には、周囲の人の顔色をうかがったり、自分の本音を隠したりしながら生活している子どもたちがいました。中井さんは、そういった子どもたちの背景にある生活を把握することに努めながら取組を進め、その中で「みんなのひろば(小

     
学校低中学年)」にある「聞こう! 考えよう! わたしたちの問題 / 2 不安になるとき、どんなとき?」(P.51)を活用し、授業を行いました。

 活用にあたっては、子どもが自分の課題に向き合いやすくなるように、学習展開例をアレンジしました。一つは、中井さんが子どもの頃、自分の課題に向き合えずに苦しんだことやそれを乗り越えた体験を話す活動を取り入れたことです。もう一つは、不安になるときの場面(P.53)を、子どもの実態に合わせて設定したことです。
 授業では、子どもたちは真剣に中井さんの体験を聞き、「まさか、先生にそんな気持ちがあったなんて」と驚いていたそうです。自分の「不安になるとき」を書くときも意欲的に取り組み、それまで書いたり話したりしたことのないような「家族のことや不安・悩み」を書く子どもが出てきたそうです。
   中井さんは、この取組の中で子どもや保護者と話をしたり、子どもと一緒に作文を書いたりすることにより、それまで見えていなかった子どもの不安や優しさ、我慢している姿などを知ることができたそうです。3学期には、こういった子どもたちの思いをもとに、子どもや保護者と話したり、お互いのことを出し合う授業を行ったりしたいと話していました。
   報告を受けて、参加者にも「生活背景が子どもに与える影響」などをテーマに、自分たちの経験や考えをグループで出し合っていただきました。
 
 【参加者アンケートより】
  •  教師が自分の思いや体験を語っていくことが、子どもの自己開示の助けになると思った。教職という仕事は、子どもと関わり合いながら自分自身も成長していくことのできる仕事であり、長く続けていきたいと思うこともできた。
  •  「保護者や子どもとどのように関わると良いのか」について、改めて考えさられた。グループ協議の中で「保護者と話すからこそ信頼関係ができる」ということを教えてもらった。保護者との関わりを一歩踏み込むことで、子どものためにできることが増えることもわかった。
  • 「みんなのひろば」を今まであまり読んだことがなかったが、今日の講座が冊子に目を通すきっかけになった。「みんなのひろば」は、教室の状況に応じていろいろな使い方ができそうだと思った。すごく使いやすそうだったので「使ってみたい!」と思った。








 

本ページに関する問い合わせ先

三重県 教育委員会事務局 人権教育課 調査研修班 〒514-0113 
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ファクス番号:059-233-5523 
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