尾鷲林業のあらまし
尾鷲林業地域は三重県南部の熊野灘に面した尾鷲市、紀北町にまたがる森林面積40,699haで、そのうち民有林面積33,001haのヒノキを主体とした林業地である。
人工林率は64%で内ヒノキは、面積・蓄積ともにほぼ90%を占めている。
この地域は土壌の表土が浅く、乾性で劣っているが石礫に富む植壌土が多く、加えて温暖多雨の気候条件に恵まれているため、ヒノキの生育に適している。
寛永元年(1624年)に人工造林が行われてから約380年余の歴史を持ち、海上交通の利便性により、古くから関東方面との取引が行われてきた。特に尾鷲ヒノキの評価を高めたのは、関東大震災において強靱性が実証されたためと言われている。
伝統的な密植施業によって生産される「尾鷲ヒノキ」は、各消費地において高い評価を受け、産地銘柄材として流通している。
施業の特徴はヒノキ芯持柱角生産を目標に、密植を行い、間伐を繰り返しながら、通直、完満、無節、かつ年輪が緻密で光沢の良い高品質材を生産してきた。
近年「尾鷲ヒノキ」としてより付加価値を高めるため、長伐期施業を行う林家も多くなっている。