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平成20年12月04日

列状間伐指針

(平成11年度林業技術現地適応化事業)
平成12年3月三重県林業振興課 


本県のスギ、ヒノキ人工林の齢級構成は中径木が多い。

間伐が育林上避けては通れない問題であれば、今日の木材価格状況から以下にコストを低く間伐を実施し、林業経営に役立てていくかが課題である。

そこで列状間伐に関して調査を行ない普及用資料を作成した。

林地は地形、地利、地位など複雑で、また、樹種、樹齢など多くの要素が関わり、一概にいえないので現地にあった方法をみいだす参考とされたい。

I間伐(利用間伐)について

1
間伐は、立木密度の管理を目的とするので、どれだけの木を伐るか?どの木を伐るか?ということが重要なことである。さらにどれだけのコストで伐採、搬出するか?の視点で間伐計画を立てることが必要になる。

(1)育林の側面から

樹木の直径成長は、葉の炭酸同化作用によって作られた炭水化物によって行われるので、一般に着葉量と樹木の直径は相関関係にある。また一定面積にある葉量は、樹種によってほぼ一定である。

現在行われている一般的な育林技術では、植栽密度を高くして、早く樹冠を閉鎖させ、植栽木と競合する雑草木の生育を抑制し、孤立木状態の期間を短くし、完満通直な材を作ることを目的としている。

一方、樹冠の閉鎖により、植栽木の間で競争が起こり、樹高に比べ直径の細いモヤシ状の木になったり、被圧木の枯損が起こる。

それを防止するため、間伐することによって、競争を緩和し、残存木の葉量を増やして、直径成長の低下を抑制する。

(2)林業経営の側面から

一定面積から収穫される間伐材積と主伐材積を加えた総材積は、間伐の強弱、繰り返し回数によって差があるとはいえないことから、主伐収入までの間に比較的短い期間毎に収入を得るため、

  1. 間伐しなければ被圧され枯損する木を利用する。
  2. 販売に有利な優勢木を中心に形質の悪い木、あばれ木を間伐する。
  3. 残存木の成長を促し形質を向上させ、価格の高い材を生産する。

2
間伐の推進にはそのコストの低減が不可欠であり、機械化に適合した間伐法として列状間伐が提言されている。列状間伐とは、定量間伐の一種で、伐採、搬出の効率化を目的に搬出路作設(線下)と兼ね直線に機械的に選木し間伐する。

その利点として

  1. 間伐する列を機械的に決めるので、選木が容易になる。
  2. 列に伐採するため、伐倒時に「かかり木」が少なく、早く、安全に作業ができる。
  3. 集材時に見通しが良く、安全確認が行いやすい。

ことが上げられる。

(1)列状間伐の方法

1.生産目標

形質の良い木を多く残す優良材生産より、一般材生産の施業に適する。

2.気象災害

本県では、冠雪害はまれにしか発生しないが、形状比(樹高/胸高直径)によって被災率が異なる。形状比90以上では下層間伐を実施し、形状比を低くしてから列状間伐を行うのが望ましい。

3.林分

列状間伐は、伐採搬出コストの削減が大きな目標であるので、下層間伐により、不良木の割合を低くした後の利用間伐対象林分で実施する。

4.伐採列の設定

列の方向は林地の傾斜方向に設ける。傾斜方向と異なると搬出時に材が斜めに滑り、残存木の損傷を起こすことがある。

5.列の幅

搬出列の伐採幅は、広いほど作業効率は上がるが、育林的には大きな空間を設けることは避けたい。
列の間隔の設定は、距離毎に設定する「一定間隔法」と植栽列毎に設定する「残伐法」があるが、育林的意味では過密、過疎にならないように適当な間隔が必要である。

通常のタイプとして、利用間伐林齢での1回の間伐で動かす収量比数は0.15以下とすると、3残1伐か2残1伐(本数間伐率33%)程度となる。

  • 左:3残1伐
  • 右:2残1伐(網掛け部分が伐採対象)#
6.伐倒

作業の効率、安全性から上げ荷集材が適し、元口を搬出機械の方向(斜面下方向)にに倒すのが通常で伐倒も容易であるが、懸木になった時の処理は困難である。

II調査結果

1間伐木選木(ヒノキ32年生)(列状、点状とも間伐率をほぼ25%とした。)

(1)列状(全林分の1/2/2実施)

3残1伐方式で谷側への搬出とし、先柱と元柱を結んだ直線上の立木を選木

(2)点状(全林分の1/2/2実施)

劣勢木を主に形質の悪い木、あばれ木を樹間距離を考慮しながら選木

(3)直径分布

平均胸高直径12.3cm

#

平均胸高直径11.4cm

#

平均胸高直径9.8.8cm

#

列状平均胸高直径12.6cm
点状平均胸高直径11.6cm

#

平均胸高直径は大幅に上位に移動しないが、残存木の径級分布は、点状間伐がより狭い範囲で分布する。

(4)選木時間

両方法で時間に大きな差は無い。

2時間観測

(1)間伐木伐採

列状間伐(山側へ伐倒)及び点状間伐(元口を搬出方向に向け伐倒)の伐採について、作業要素に区分し時間観測を行った。
なお、時間は1本当たりの秒で、倒には掛かり木処理の時間を含み、列状の列間移動時間は含まない。

要素区分 伐倒 枝払 作業間 移動 立木間移動 合計
列状 6.25 11.31 49.50 6.25 16.81 90.12
点状 5.25 28.34 44.01 5.19 10.20 92.99
列状間伐作業要素
#
点状間伐作業要素

#

列状間伐作業と点状間伐作業の比較
  • 列状は伐採木の平均直径が大きいが1本当たりの作業時間はやや短い。
  • 列状は掛かり木が少ない。
  • 列状は平均直径が大きいことから枝条が多く、また傾斜方向に移動することから枝払い作業時間が長くなる。
  • 列状は作業間移動、立木間移動が傾斜方向になるため時間が長くなる。

列状間伐の効率化を図るためには

  • 全木集材を行う。
  • 伐倒方向を列交互に山側、谷側とし列間の移動時間を短縮する。

ことが必要と考えられる。

(2)間伐木搬出

列状間伐の搬出は、搬出機械の架設、撤去が短時間で行えることがポイントとなるので、搬出材積、地形等から列状の有利性を確保出来るタワーヤーダ、架線、シュート等から適切な機械を選定することが重要となる。

タワーヤーダ

架設、撤去の時間は機械タイプ、主索(スカイライン)方式と主索を持たない(ランニングスカイライン)方式、また先柱にする適当な立木の有無、控索の本数、地形によって大きな差がある。
全幹材搬出を空走行、荷掛け、巻き上げ、実走行、荷外しに区分し時間観測を行った。

条件

  • ヒノキ43年生
  • タワーヤーダー(ジャストタワーKCZ)
  • 作業員:先柱側1名、機械側1名、搬出木処理1名
  • 索長:140.7m
  • 林地傾斜:21.3%
  • 上荷集材

    搬器の走行時間(空、実の合計)は搬出距離と相関関係にある。

    搬出回数 47回 要素別時間(秒)
    搬出材積 29.8m3 空走行 2,387 実走行 3,648
    平均搬出距離 76.5m 荷掛け 508 荷外し 540
    平均巻き上げ長 20.9m 巻き上げ 491 その他 942
    秒/m3 286     8,516

#

#

(3)調査事例の伐出経費

1日時間6時間実働
1日賃金13,700円

実働6時間の作業量は、休憩などを含まない調査時間当たり作業量を換算したものである。 

  • 1日当たり伐木造材材積15.77m3 
  単価(円) m3あたり(円)
賃金   896
1時間当たりチェンソー損料 111 42
350‰当たりソーチェーン損料 4,725

14

1日当たり
燃料3.8Lオイル
オイル1.2L
  67
伐木造材計   992
  • 1日当たり搬出材積75.63m3
  単価(円) m3あたり(円)
賃金   543
機械損料(賃借料) 20,000 264
1日当たり燃料油脂類
軽油21L
オイル0.65L
グリス0.05L
ギヤー油0.05L
 

63

1回の架設撤去賃金
架設1時間58分
撤去58分
  674
伐木造材計   1,544

合計:m3当たり2,536円 

伐採搬出効率は、単木立木材積が大きければ上がる。
今回の調査では1回当たりの搬出材積が平均0.63m3と大きく、通常報告されている3人1班6時間実働の26~30m3に比べ効率が上がっていると思われる。
搬出はタワーヤーダ前までの引き出しで、搬出材移動、造材、積み込み運搬は含まない。
間接経費(機械運搬費、作業員輸送費、作業員福利厚生費等)は含んでいない。
伐採搬出材積は、立木材積であるので素材材積は66%であった。
素材1m3当たり伐採搬出経費は3,842円となる。

(4)横取りの検討

主索を持つか持たないか、架設条件で架設撤去時間は大きく影響され、それによって効率的な架設回数と横取り距離が決められる。

そこで1例としてタワーヤーダ(主索方式)を使った3残1伐の間伐材の全幹集材の場合、搬出列毎に架設するか、横取り列を設けるか、その場合の列数を検討する。

  1. 搬出材積
    伐採列長(X)1m当たり0.15m3
    架線1サイクル0.4m3を搬出
  2. 架設(秒)5,880+8.8X
    撤去(秒)2,280+8.8X
  3. 搬出列毎に架設の場合 
    〔(架設+撤去)/搬出材積+1‰当たり架線列搬出時間〕×列数
    =(架設+撤去)/搬出材積=(8,160+17.6X)/0.15X×列数

    架線列搬出時間
    空走行+実走行=134.8+1.63X
    索下げ+荷掛け+巻き上げ+荷下げ=43.3+59.8+41.3+141
  4. 横取り列を設ける場合
    横取り距離Y 架線列から1列Y=21.78m架線列から2列Y=43.56m
    〔(架設+撤去)/搬出材積+1‰当たり架線列搬出時間+1‰当たり横取り列搬出時間×横取り列数〕 =(架設+撤去)/搬出材積=(8,160+17.6 X)/0.15X×列数

    架線列搬出時間
    空走行+実走行=134.8+1.63X
    索下げ+荷掛け+巻き上げ+荷下げ=43.3+59.8+41.3+141

    横取り列搬出時間
    空走行+実走行=134.8+1.63X
    索下げ+歩行+荷掛け+巻き上げ+荷下げ=43.3+(-27.3+4.15Y)+59.8+(21.1+4.15Y)+141 

列状間伐と横取り列数

横取り列を2列とし、架設、撤去3回の繰り返しと比較すると、搬出距離が概ね90mが分岐点である。
横取りされた材の方向転換に必要な方向転換幅は

B=2/3/3×L×a/90

で示される。
(B:方向転換幅(m)L:材長(m)a:横取り角度(度) )

ha当たり立木本数により伐採列幅が決まり、横取り角度によって実際の横取り距離が決まる。列幅を広くとらないと横取り角度を大きくできないので、実際の斜横取り距離は長くなる。

既存の調査で報告されている様に、主索式の中型タワーヤーダは通常の搬出距離では、架線直角水平横取り距離25m程の横取りが効率的に優れており、また巻き上げ索の延長からも制限される。

調査事例

列幅4m、材長18~20m

架線直角水平横取り距離と実横取り索延長の関係

# 
横取りを行う場合、立木密度、地形傾斜によっては列間の残存木に損傷を起こす可能性があるので、当て木等で保護することが、望ましい。

ショルダーウインチ

集材距離が短距離の場合は、集材機械の設置時間が問題になることから、極めて短時間で設置できる簡易搬出用機械のショルダーウインチで搬出した。
全幹材搬出をワイヤー引き出し、荷掛け、歩行、木寄せ、荷外しに区分し時間観測を行った。 

条件

  • スギ21年生
  • 作業員:1名
  • 林地傾斜:12%
  • 直引き上荷集材木寄せキャップ使用
  • 機械:手動式エンジン43cc最大出力1.8ps直引力345kg
  • 伐倒方向:山側
  • 伐採列長:50m
搬出回数 6回 要素別時間(秒)
搬出材積 1.6m3 ワイヤー引出 198 木寄せ 792
平均搬出距離 22m 荷掛け 362 荷外し 265
    歩行 198 その他 570
秒/m3 1,491     2,385

#

架設時間460秒
撤去時間390秒
(ガイドブロック1個取り付け、撤去を含む)

調査事例の伐出経費

1日作業時間6時間実働
1日賃金13,700円

  • 1日当たり伐木造材材積15.82m3
  単価(円) m3あたり(円)
賃金   866
1時間当たりチェンソー損料 111 42
350‰当たりソーチェーン損料 4,725

14

1日当たり
燃料3.8Lオイル
オイル1.2L
(4時間)
  67
伐木造材計   989
  • 1日当たり搬出材積14月49日m3
  単価(円) m3あたり(円)
賃金   945
1時間当たりウインチ損料 148 61
1時間当たり燃料0.48L  

33

1回の架設撤去賃金 539  337
伐木造材計   1,376

 合計:m3当たり2,365円

経費の計算条件は、タワーヤーダと同じ
搬出1回当たり0.27m3でウインチ前までの搬出で、造材、積み込み運搬は含まない。
素材材積は伐採搬出材積の70%で、素材1‰当たり伐採搬出経費は3,379円となる。
小規模な間伐地では、機械運搬、架設撤去作業の比率が高い搬出用大型機械が不要で1人作業が可能となり、間伐材を道端まで引き出し森林組合等が集荷するのに有効な方法である。

IV列状間伐の育林的な特質

  1. 選木が簡単で、間伐木は林分の直径分布に比例することから、形状比は無間伐林分に比較して低くなり、林分の健全性が高くなる。
    林内に形質の不良な木が混ざり残るので、将来生産材の品質の低下が生じることがある。
  2. 樹冠の閉鎖が大きく破られると、林分成長に損失を招き、伐採列に隣接する形状比の大きな木(特にスギ)は、樹冠の重みで曲がったり、雪害の危険がある。
  3. 伐採列の空間を早く回復する若齢級の林分での実施が望ましいが、間伐林齢によっては、伐採列に隣接する残存列立木が片枝木となる可能性があり、通直性が損なわれることが考えられる。
    (鹿児島県の調査報告では、35年生のスギ、ヒノキで8~10年前に列状間伐した木で樹高の1/4/4までの成長偏いは、開放方向と逆方向に偏るが極めて小さいく林業的利用に報告されている)
  4. 残存木の直径成長は林分平均では、隣接木との間隔を適度に調整する点状間伐が優れている。残存木への間伐効果が現れにくく、列側の空間部に偏ることが原因と考えられる。
ヒノキ43年生
区分 列状A 点状B 列状C 点状D 無間伐E
間伐前(本/ha) 1,275 1,450 1,575 1,275 1,675
間伐後(本/ha) 900 1,025 1,125 925 1,675
本数間伐率(%) 29.4 29.3 30.2 29.4 0

#

#

ヒノキ43年生の1年間の胸高周囲長成長量÷前年の胸高周囲長
無間伐プロットを1とした比率
間伐後年数が経過していないので、間伐の効果か否か判然としない。

V列状間伐の林地環境に及ぼす影響

(1)土壌水分

地表面下10~20cmの間の土壌では、点状間伐と列状間伐で、無間伐を基準としたとき、2年間では伐採前と間伐方法によって変化することはなかった。

(2)搬出による林地攪乱

搬出による林地攪乱程度は、土質、搬出1回の材積、搬出回数、先柱の高さによる空き高により異なる。主に搬出1回の材積が大きい程表土除去の深さは深くなるが、搬出回数5~10回以降の深さの増加は少ないとの報告がある。

調査事例

表土除去程度により、深さ5cm以下(軽度)、5~10cm(中度1)、10~20cm(中度2)、20cm以上(重度)に区分して調査した。

列状間伐区域では、搬出回数は105回、最大材積1.25m3で(軽度)80平方メートル(区域面積の17%)、(中度1)74平方メートル(区域面積の16%)、(中度2)80平方メートル(区域面積の17%)で、表土のA0~A 層が攪乱され、降雨により流亡し礫が露出しが、その後の2年間によるガリー浸食に発展することはなかった。

点状間伐区域では、搬出回数26回、最大材積0.87‰で(軽度)103平方メートル(区域面積の13%、(中度1)26平方メートル(区域面積の3%)で、表土の攪乱浸食は列状間伐区と同じであった。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 林業研究所 普及・森林教育課 〒515-2602 
津市白山町二本木3769-1
電話番号:059-262-5352 
ファクス番号:059-262-0960 
メールアドレス:ringi@pref.mie.lg.jp

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