1 日時 令和4年7月5日(火)19時00分から21時00分まで
2 場所 伊勢庁舎401会議室
3 概要
伊勢市内の県立高等学校長2名をゲストスピーカーとして招き、各校の特色、取組や現状等について意
見交換するとともに、伊勢志摩地域の県立高等学校の総学級数が18~21学級となる令和19年度のあり方に
ついて、以下の2点について協議しました。
①15年先に実現したい、子どもたちの多様なニーズに対応した学びや、伊勢志摩地域の担い手を育む教育
② ①の学びを実現するための具体的な県立高等学校の学科、学校の規模や配置に関する考え方
4 主な意見
(地域の県立高校学校長との意見交換)
〇 この地域の高校生の約6割が伊勢市内にある県立2校と私立2校の普通科高校に在籍している。私立高
校は定員を減らしながらも、定員を越える生徒数が入学している現状について、どう感じているのか。
⇒私立高校へ多くの中学生が入学していくことについては、学校現場としても危機感を持っている。県立
高校としては高校の魅力を高めるとともに、中学生やその保護者へのPR活動に力を入れて入学者の確
保に努めている。
〇 地域の進学校において、入試倍率が1.0を少し越える程度である状況の中、入学した生徒に学力差があ
るのではないか、また生徒の多くは授業についていけるのか。
⇒入試倍率が低い状況では、確かに学力差も広がる傾向にあるが、これまでと同様にそれぞれの生徒に
応じた指導を継続している。
〇 他地域における専門学科高校の統廃合の実例も参考にしながら、この地域の高校のあり方についての協
議を深めていきたい。
⇒他地域の統廃合を参考とする場合、立地環境や統廃合の検証をふまえる必要があり、安易に他地域
の実例を当地域にあてはめることは難しいと思う。
〇 商業高校と工業高校の統合には課題が多いという教育現場の意見があったが、過去には商工で一つの学
校の時代もあった。どのような課題が考えられるのだろうか。
⇒生徒の進路ニーズが似ており、実習が多い職業系高校同士のほうが、より近い教育目標となり、学科
を越えた連携も比較的行いやすい。
(この地域で大切にしていきたい県立高校での学びについて)
○ 新しい学習指導要領でも示されているように、これからの子どもたちにとって必要な力とは、Well-
being(ウェルビーイング)をどのように追求していくかを考えるなどの課題解決能力ではないか。
○ 小中学校だけでなく、高校においても地域のことを学んでいくことが大事である。自分が住んでいる地
域のこれからの課題や解決策等を高校時代に真剣に考えることで、たとえ県外へ進学や就職をしても、将
来地元に戻ってくる者も増えるのではないか。これまで小規模校で培ってきた地域学をもう少し広くとら
えた「伊勢志摩学」をすべての高校で学ぶ必要があると思う。
○ 15年先のことを考えるにあたって一番大切にすべきなのは子どもたちのことである。統廃合を考える
にあたっては、地理的な課題などいろいろなハードルがあるものの、教員側や行政側の都合よりも、子
どもたちの視点に立ってどういう学びを提供していくかを考えていく必要がある。
(15年後を見据えた県立高校の学科、学校の規模や配置に関する考え方)
○ 中学校卒業者が大幅に減少する15年先まで高校再編をしないのではなく、例えば普通科どうし2校の
統合、普通科2校と普通科に近い商業高校の3校の統合や、専門学科に様々なコースを設定するなど、
いろいろなアイデアは考えられる。
○ 伊勢市以外の1学年3学級以下の高校だけをどうするかという議論に終わらず、伊勢市内の高校も含
めた15年後のあり方を議論する必要がある。
○ 地域全体の高校規模をスケールダウンしていく必要がある中、子どもたちのニーズに応じた選択肢を確
保することは大変重要なことである。その選択肢の確保を1つの高校でできるのか、複数の高校で協力す
ることでできるのかを考えていく必要がある。
○ 生徒数、学級数が確実に減っていく中、すべての学科を単独で残すことが難しいのであれば、学科をな
くすのではなく、統合しながら選択肢を残していくという発想で進めていく必要がある。
○ 自分の高校時代に一番有益だったことは、様々な人との出会いがあったことであり、その頃の人とのつ
ながりは社会人になった今でも自分の財産となっている。このような様々な人との出会いの重要さを考え
ると、高校はある程度の規模があるほうがよい。
○ 小学校のときの教え子が、地元高校卒業後に地元で「若手漁師」として活躍し、その魅力を情報発信し
ている。高校生へのアンケート調査からもわかるように、この地域の子どもたちは高校に人との出会いを
期待しており、彼も高校時代に上手く人とのつながりを構築する術を学んだことで、自分の夢をかなえた
と思う。
○ これからは、高校進学においても現在の大学進学と同様に、自分が求める学びや学科のある学校に進学
したいときは、遠いところであっても行くしかない時代になるのではないか。
○ 教育内容ではなく、単純に40人の学校と400人の学校とを比較したとき、子どもたちはたくさん友人
がいるほうがいいと考える。高校には一定規模が必要と考えるが、小規模な高校を維持していく場合は、
地域の人とのつながりや他校と連携した取組を進めながら維持していく必要がある。
○ 学校の特色や、高校生が輝く教育といった視点も大切であるが、どの地域においても最低限の教育を保
障していくことが一番大事と考える。
○ 15年先に必要なことは、高校が一カ所に集中している状態ではなく、学びたいことが身近なところで
学べるような高校の配置でなければならないと思う。伊勢志摩地域で通える範囲に高校教育が保証され
ることが大事である。
○ 効率性や生産性だけを考えて、ものづくりやサービスの提供を行うと、次第に劣化してしまうことが
多い。教育においては一定の余裕ある仕組みが大切だと考える。高校を卒業してから15~20年先にでも
地域に戻ってくる人材は必要であるため、地域で多様な人材を育てていく学校にしてもらいたい。
(地域の普通科や専門学科の学びについて)
○ 普通科高校については、私立高校に一定の定員があるものの、生徒や保護者の大学進学のニーズが高い
ため、県立高校の普通科にはある程度の規模を持った学校を確保するべきである。そうすることで、生徒
が地域の一定規模の私立高校に集中したり、伊勢志摩地域外の高校へ流出したりすることを防ぐ必要があ
る。
○ 普通科高校については、今後も進学を希望する生徒のニーズに応えていく必要があるとともに、これま
で小規模校で培ってきた丁寧な指導による教育プログラムを継承していくことが大事である。
○ 卒業生の多くが就職する専門学科は、この地域の産業を担う人材の育成だけでなく、多様で魅力的な学
びの選択肢を保障する観点からも地域に維持したい学びである。
○ 専門学科高校については、ある程度選択できる学科があったほうが子どもたちの学びにとってはいいと
いう意見は当然だと思う一方、専門性の維持には一定の規模が必要なため、配置のあり方については、継
続的に議論していく必要がある。
○ 各専門学科として高校を存続したいと考えても、生徒数が減れば維持することが難しくなるため、複数
の専門学科が一つの高校に統合することは選択肢の一つだと考える。
○ 専門学科高校同士の統合は課題が多いと考えている。たとえば農工商3校で各校3~4学級規模が統合
すれば、専門教育の維持とともに、他学科との連携も進むだろうが、各専門学科1学級規模での統合であ
れば、各専門の教員数も少なく専門性の追究も難しくなり、他学科との連携も弱くなってしまう。工業高
校は同じ工業高校同士で統廃合するなど、他地域の同一学科と統合するほうが専門性を活かした教育を維
持できると思う。
(子どもたちや保護者の声を聞くことについて)
○ 地域の子どもたちが、本協議会で議論されている高校の学びについて、どうとらえるのかを把握したう
えで議論を進めたほうが良いのではないか。
○ これからの協議を深めていくため、中学生や保護者を対象としたアンケートなどを行うことには賛成で
あるが、単に希望校などを聞くのではなく、子どもたちや保護者の思いが分かるような工夫と配慮が必要
である。
○ 大学生の保護者から、地元に戻ってきて欲しいが本人には言えないという声を聞くことがある。子ども
たちや保護者の教育に対するニーズに加え、保護者には進学後に地元に戻ってほしいという思いがあるの
かも聞いてみたい。