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平成20年11月13日

保環研年報 第10号(2008)

2008年報表紙

三重県保健環境研究所年報 第10号(通巻第53号)(2008)を発行しましたので その概要をご紹介します。

各研究報告(原著、ノートおよび資料)の全文(PDF形式)をご希望の方は、こちらから ダウンロードできます。
 



研究報告

 ノート

2008rep1  加工食品中残留有機リン系農薬の一斉分析法の検討
  大垣有紀,川合啓之,林 克弘,林﨑由美子,山中葉子,志村恭子
   キーワード:加工食品,冷凍ギョウザ,有機リン系農薬,メタミドホス

 2008年1月,千葉県および兵庫県において中国産冷凍ギョウザから有機リン系農薬メタミドホスが検出されたという報道があった.これに伴い県内での苦情品検査対応のため加工食品中残留農薬の分析法が必要となり,加工食品からの有機リン系農薬20種の一斉分析法を検討した.その結果,抽出液のクリーンアップ法として,ゲル浸透クロマトグラフ法1)が有効であった.検体10gに20種農薬混合標準溶液1μg/mLを1mL加え(試料濃度0.1ppm)回収実験を行ったところ,いずれの農薬も回収率80%以上の良好な結果であった.この分析法を用いて各保健所から搬入された苦情品19検体を分析した結果,いずれも農薬は検出されなかった.
 
2008rep2  飲料水中のビニルクロライドを含むハロゲン系揮発性有機化合物の一斉分析法
  森 康則,小川正彦1),橋爪 清2),吉村英基,前田 明,長谷川圭司3),志村恭子
        1) 三重県環境森林部   2) 財団法人 三重県環境保全事業団   3) 三重県農水商工部
   キーワード:環境放射能,核種分析,全ベータ放射能,空間放射線量率

 飲料水中のビニルクロライドを含むハロゲン系揮発性有機化合物の一斉分析法を検討した.ビニルクロライドは,主な地下水汚染物質であるテトラクロロエチレンやトリクロロエチレンの分解生成物であり,水道法の要検討項目に分類されている.ヘッドスペース-GC/MS法を用いて検討した結果,水質基準項目,水質管理目標設定項目に規定されるハロゲン系揮発性有機化合物13物質とビニルクロライドを一斉分析できる測定条件を決定した.また,試料保存のpH条件および温度条件の違いによるビニルクロライドの保存性を比較した結果,これらの条件の違いによる差は認められなかった.
 
2008rep3  大気中のホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの状況
      小山善丸,佐来栄治,西山 亨,塚田 進,白井宣一郎,棚瀬敦史
   キーワード:大気,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド

 これまでホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの環境中濃度実態調査については,大気汚染防止法に基づく有害大気汚染物質モニタリング調査において実施してきた.2005年度から2007年度に県内の4地点で実施したモニタリング調査の結果について解析・検討を行った.アルデヒド類の年度ごとの平均値はホルムアルデヒドで2.5 ~ 4.3 μg/m3,アセトアルデヒドで2.4~7.4μg/m3であった.環境中のアルデヒド類濃度は初夏から初秋にかけて上昇する傾向がみられた.4地点のうち桑名では,秋季でも比較的高い濃度で検出された.調査を行った3年間における環境中のホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド濃度は横ばいまたは漸増傾向がみられた.

2008rep4  浮遊粒子状物質の大気汚染について(3)―発生源(ディーゼル自動車)寄与について―
  塚田 進, 西山 亨, 小山 善丸
   キーワード:発生源寄与,ケミカルマスバランス法,幹線道路近傍,微小粒子(PM2.5)

 粒子状物質の発生源寄与率を推定するため,ケミカルマスバランス法(Chemical Mass Balance Method)という解析手法を用いてディーゼル自動車による寄与率を2つの異なる発生源データを使用して推定した結果,浮遊粒子状物質(SPM)では,それぞれ幹線道路近傍で平均17.5%と29.0%,一般住宅地で平均12.6%と22.3%,バックグラウンドで平均7.5%と11.9%であった.また、微小粒子(PM2.5)では,それぞれ幹線道路近傍で平均36.4%と36.1%,一般住宅地で平均22.6%と27.4%,バックグラウンドで平均12.7%と16.9%であった.
  使用する発生源データによって推定結果が大きく変動することから,今後はデータの精度向上がいっそう望まれる.

2008rep5  黄砂飛来時の多環芳香族炭化水素類について(大気中粒子状物質の総合的研究-黄砂の広域的分布について-)
  西山 亨,佐来栄治
   キーワード:黄砂,多環芳香族炭化水素(PAH),後方流跡線解析

 福井・岐阜・三重・滋賀の四県が連携して,日本に飛来する黄砂の物理的,化学的な性状やその広域的分布を明らかにするために,2005年度に黄砂飛来時と対照時期に各1回調査を実施した.その中で,三重県は特に黄砂時に飛来する大気中粒子状物質に含まれる多環芳香族炭化水素類(PAH)の測定を行った.
その結果,黄砂時においては四県のうち北~西側に位置する福井県,滋賀県で,対照時の4県及び黄砂時の岐阜県,三重県の約2倍の高濃度であった.また,成分については,測定したPAHの8成分中ではベンゾ[e]ピレンとベンゾ[b]フルオランテンが黄砂飛来時に主要な成分であった.各測定地点間の成分割合は類似し,特に黄砂時の粒径2μm以上の粒子中のPAH成分は類似しており,PAHの由来が4県以外である可能性が考えられため,黄砂飛来時に後方流跡線解析を行ったところ,飛来した空気塊は北京付近の上空を通過してきたことが明らかとなった.

2008rep6  四日市地域における酸性雨の状況について(2003-2005年度調査結果全国比較)
  西山 亨,佐来栄治,塚田 進
   キーワード:酸性雨,全国環境研協議会,初期酸度,全無機態窒素,潜在水素イオン,Zスコア

 2003年度から2005年度に四日市市内の2地点(新正,桜町)で実施した降水の調査結果を,2007年に公表された全国環境研協議会の第4次酸性雨全国調査結果(2003年度~2005年度)と比較した.その結果,水素イオン濃度は,2地点とも全国平均より毎年度高く,3年間の平均では全国で4番目の高濃度であった.初期酸度については全国平均より酸性側にあるものの水素イオン濃度に比べてその差は小さく,中和成分が少ないと考えられた.また,全国環境研協議会が新しく設定した地域区分(表3)において,両地点とも「中央部」の中では最も酸性度の高い付近に位置しており,むしろ日本海側や東部の分布の中に位置する傾向を示した.

2008rep7  浮遊粒子状物質に含まれる多環芳香族炭化水素類について(1)-フィルタからの抽出について-
  佐来栄治,塚田 進,西山 亨,小山善丸
   キーワード:浮遊粒子状物質,多環芳香族炭化水素類,パーソナルカスケードインパクト(PCI)サンプラー

 浮遊粒子状物質に含まれる多環芳香族炭化水素類(PAH)について,パーソナルカスケードインパクト(PCI)サンプラーを用いて三重県北勢地域の3地点(納屋,桑名,桜)で3段階に分級サンプリングし,液体クロマトグラフ-分光蛍光検出器で定量を行う際の捕集フィルタからの抽出条件等について検討した.その結果,3地点のうち桑名,桜の2地点では良好な添加回収率を得ることができた.納屋で採取される2.5μm以下の微小粒子(PC-3,PM2.5)からのPAHの抽出について添加回収率に不十分な場合があったが,今回の検討では解決することができなかった.2008年1月~6月のPAH実態調査の結果,納屋のPC-3の添加回収率に不十分な月はあるものの,粒子中のPAH濃度は各地点とも1月に比較的高く6月にかけて減少する傾向を示した.

2008rep8  コンソーシアム系のバクテリアを用いたBDF洗浄排水中の油分連続分解法について
  加藤 進,巽 正史, 塚田 進
   キーワード:BDF, 連続分解, 排水処理, 微生物コンソーシアム

 コンソーシアム系のバクテリアを固定した担体を用いて,高濃度BDFを含有する排水の連続処理について検討した.その結果,連続処理でも,物質収支を計算すると排水中に含まれるBDFの50~60%が微生物によって分解されていることがわかった.連続処理装置の溶液中,担体あるいは排水に残存するBDF分解の程度は,①コントロール,②pH制御および③pH制御+N源添加の実験系により異なった.特に,油分,CODおよびSSの観点からは,pH制御にN源を添加した③が優れていた.連続分解後の処理水に含まれるBDF濃度を見かけの処理率と考えると,いずれの場合もBDFの分解率は90%以上であった.

 資料

2008rep9  三重県における2007年度環境放射能調査結果
  吉村英基,小川正彦1),森 康則,橋爪 清2),志村恭子
   1)三重県環境森林部 2) (財)三重県環境保全事業団
   キーワード:環境放射能,核種分析,全ベータ放射能,空間放射線量率

 文部科学省からの委託により2007年度に実施した三重県における,降水中の全ベータ放射能測定,降下物,大気浮遊じん,淡水,土壌,蛇口水,各種食品試料および日常食のガンマ線放出核種(Cs-137,I-131,K-40)分析,ならびに空間放射線量率測定の結果について報告する.
   2007年度の環境および食品中の放射能レベルは,すべて平常値であった.
   核種分析においては,人工放射性核種であるCs-137,天然放射性核種であるK-40が,一部試料から検出されているが,過去の検出状況および全国の調査結果と比較して特に問題は認められなかった.
   降水中の全ベータ放射能,モニタリングポストでの連続したおよびサーベイメータを用いた月1回の空間放射線量率の測定結果でも,異常は認められなかった.

2008rep10 2007年感染症発生動向調査結果
  赤地重宏,矢野拓弥,前田千恵,中野陽子1),岩出義人,永田克行2)
        1)津保健福祉事務所総合検査室 2) 三重県健康福祉部薬務食品室
   キーワード:感染症発生動向調査,インフルエンザウイルス,サポウイルス

 2007年1月~12月までに県内の病原体検査定点医療機関から検査依頼のあった患者数は,426人であった.疾患別の内訳は,感染性胃腸炎の95人が最も多く,次いでインフルエンザ様疾患64人,ヘルパンギーナ27人,日本紅斑熱23人,無菌性髄膜炎19人,不明発疹が19人の順であった.これらのうち189 人(44.4%)から病原体が分離・検出された.主な分離・検出病原体はサポウイルス(SV),A群ロタウイルス(RoA),ノロウイルス(NV)GⅡ,インフルエンザウイルスAH1型(InfAH1)およびAH3型(Inf AH3)であった.

2008rep11  2007年度感染症流行予測調査結果(日本脳炎,インフルエンザ,風しん,麻しん)の概要
  矢野拓弥,前田千恵,中野陽子1),赤地重宏,岩出義人,永田克行2)
   1)津保健福祉事務所総合検査室 2) 三重県健康福祉部薬務食品室
   キーワード:感染症流行予測調査,日本脳炎,インフルエンザ(動物・ヒト),風しん,麻しん,2007年度

 感染症流行予測調査では,人の抗体調査による免疫保有状態の程度について年齢等の別により分布を知る感受性調査と,病原体の潜伏状況及び潜在流行を知る感染源調査を実施している.その結果確認された主な事実は次のとおりである.   
(1)日本脳炎感染源調査については三重県中部地域で飼育された豚の日本脳炎ウイルス(JEV)に対する赤血球凝集抑制(Hemagglutination inhibition:HI)抗体保有の有無を調査した.2007年7月9日にHI抗体陽性率が30%となり,IgM抗体の指標となる2-Mercaptoethanol(2-ME)感受性抗体は2頭で認められた. 
(2)ヒトの日本脳炎感受性調査での中和抗体価保有率は267人中170人(63.7%)であった.
(3)動物のインフルエンザウイルスの侵入を監視する体制強化の一環として,豚100頭からのインフルエンザの分離を実施したが,ウイルスは分離されなかった.
(4)ヒトのインフルエンザウイルスの流行動態及び規模に最も影響を及ぼす乳児から学童期の年齢層の流行期前のHI抗体保有率(40倍以上)は,A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)は0-4歳7.9%,5-9歳46.2%,A/Hiroshima/52/2005(H3N2)は0-4歳32.9%,5-9歳50%であった.B型インフルエンザに対しては,B/Malaysia/2506/2004(ビクトリア系統) は0-4歳0%,5-9歳30.8%,B/Florida /7/2004(山形系統)は0-4歳5.3%,5-9歳38.5 %であった.
(5)風しん感受性調査での全年齢層におけるHI抗体保有率は83.5%(男性:78.0%,女性:90.6%)であった.
(6)麻しん感受性調査での全年齢層におけるPA(Particle Agglutination Test)抗体保有率は95.5%であり,免疫獲得状況は良好であった.
 
2008rep12  三重県における市町等地域保健担当職員を対象とした情報専門職養成研修について
  高橋裕明,山内昭則,福田美和,松村義晴,大熊和行
   キーワード:地域保健,情報専門職養成,研修

 2005年度より,科学的根拠に基づいた地域保健行政への貢献を目的として,市町や保健所等の職員が担当する種々の地域保健に係る情報処理課題について具体的な技術支援を行う中から,課題解決,データ解析と取りまとめに必要な技術の習得を支援する研修を開始した.2005年度は10機関(15人),2006年度は12機関(17人),2007年度は5機関(15人)を対象として実施し,毎年度,受講者からは高い満足度が得られており,この方式による研修の継続要望が出されている.

2008rep13  2007年度の先天性代謝異常等検査の概要
  永井佑樹,前田千恵,永田克行1)
   1) 三重県健康福祉部薬務食品室
   キーワード:先天性代謝異常等検査,先天性副腎過形成症,先天性甲状腺機能低下症

 

 先天性代謝異常等検査は県を実施主体としており,2007年度は県内の新生児のうち保護者が希望した17,649件について検査を行った.疑陽性と判定し再検査を行った検体は490件であり,精密検査依頼数は先天性副腎過形成症51件,先天性甲状腺機能低下症22件,フェニルケトン尿症1件、ガラクトース血症1件の計75件であった.確定患者数は、先天性甲状腺機能低下症が6人、先天性副腎過形成症1人、フェニルケトン尿症1人であった.

本ページに関する問い合わせ先

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