現在位置:
  1. トップページ >
  2. 観光・産業・しごと >
  3. 科学技術 >
  4. 保健環境研究所 >
  5. 年報・研究報告リスト >
  6.  保環研年報 第19号(2017)
担当所属:
  1.  県庁の組織一覧  >
  2. 医療保健部  >
  3. 保健環境研究所
  • facebook
  • facebook share
  • twitter
  • google plus
  • line
平成28年01月14日

保環研年報 第19号(2017)

 

 三重県保健環境研究所年報 第19号(通巻第62号)(2017)を発行しましたのでその概要をご紹介します。

 

各研究報告(原著、ノートおよび資料)の全文(PDF形式)をご希望の方は、こちらからダウンロードできます。

 

研究報告

原 著

  ・2017rep1 過去5シーズンにおけるインフルエンザ非流行期と流行期に分離されたAH3亜型インフルエンザウイルスの遺伝子学的相関性-三重県(2012/13~2016/17シーズン)

     矢野拓弥,赤地重宏

     キーワード:AH3亜型インフルエンザウイルス,遺伝子解析,非流行期

 三重県内において過去5シーズン(2012年第36週~2017年第13週)の間に分離されたAH3亜型インフルエンザウイルス(AH3亜型ウイルス)についてHemagglutinin(HA)遺伝子の解析を実施し,非流行期および流行期の同ウイルスに関して遺伝子学的な差異を調査した.
 今回,解析した各シーズンにおける非流行期のAH3亜型ウイルスは,流行期に主流行していたAH3亜型ウイルスと近縁なウイルスであった.このことから,流行期だけでなく非流行期においても積極的な調査を実施し,ウイルスの遺伝子特性を明らかにすることで,流行期に主流となるウイルスの早期把握が可能となることが示唆された.
 

 ・2017rep2 小児の感染性胃腸炎患者から分離された基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌

     永井佑樹,楠原 一,小林章人,赤地重宏

     キーワード:ESBL,小児,感染性胃腸炎,ST131クローン, H30R

 小児の感染性胃腸炎患者を対象に基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌の保菌状況ならびにその遺伝子型についての調査を実施した.その結果,小児の保菌率は12.5%(32/256)であり,分離されたESBL産生菌の遺伝子型はCTX-M-14が14株と最も多く,次いでCTX-M-27が7株,CTX-M-55が4株,CTX-M-15とCTX-M-79が各3株,CTX-M-65が1株であった.また分離されたESBL産生菌32株のうちB2-ST131クローンは10株(31.3%)を占め,そのうち7株(21.9%)がサブクローンH30Rであった.POT法による分子疫学解析では,同一POT型を示す株が2種類確認され,最も多く検出されたPOT型は(49-58-83)の4株であった.プラスミドのレプリコンタイプでは,ESBL産生菌32株のうち22株がIncFプラスミドを保有し,IncIプラスミドを保持する株も8株確認された.本研究の結果から,小児においてもB2-ST131-H30RクローンによるESBL産生菌がすでに市中で広がっていることが明らかとなり,今後はこれら耐性菌がすでに地域で広がっていることを前提にしたうえで感染対策を行っていく必要があると考えられた.

ノート

  ・2017rep3 三重県における呼吸器症状を呈した患者からのヒトコロナウイルスの動向(2014~2016年)  

      矢野拓弥,赤地重宏        

      キーワード:急性呼吸器感染症,ヒトコロナウイルス,三重県感染症発生動向調査事業

 三重県感染症発生動向調査事業において,2014年1月~2016年12月までに三重県内の医療機関を受診した呼吸器症状を呈する患者667名を対象にヒトコロナウイルス(HCoV)の動向を把握するため調査を実施した.調査対象者667名中32名(4.8%)からHCoVが検出され,採取年別のHCoV陽性者数は2014年11名,2015年8名,2016年13名であった.HCoV陽性者の種別内訳はOC43(16名:50%)が最も多く,次いでHKU1(8名:25%),229E(5名:15.6%),NL63(3名:9.4%)の順であった.HCoV陽性者の検出時期は冬~春季あるいは秋季に確認された.これらの臨床診断名は気管支炎12名,咽頭炎8名,細気管支炎6名,喉頭炎5名等であった.さらなる詳細なHCoV感染症の流行疫学の把握のためには,継続的かつ積極的なモニタリングが重要と考えられた.
 

  2017rep4 工場および事業場排水におけるBODの簡便な推定法の開発 

       坂口貴啓,柘植 亮,佐来栄治

     キーワード:工場排水,事業場排水,BOD,COD,糖,タンパク質

 BOD測定に際し,5日間の溶存酸素の消費率が40~70%の規定範囲内に収まるように,試料の希釈倍率を簡便に決定できる方法を検討した.排水中の糖濃度,タンパク質濃度,糖濃度+タンパク質濃度,CODそれぞれとBODとの相関を調べた.食品製造業系排水および生活系排水については,排水中の糖濃度+タンパク質濃度とCODの2つの指標を用いることで,簡便で精度よくBODを推定でき,希釈率を決定できることがわかった.工業製品製造業系排水については従来のCODからの推定が適していた.
 

   2017rep5 伊勢湾の水質の変化とその傾向についての考察   

      谷村譲紀,奥山幸俊,国分秀樹,佐藤弘之,小林利行,千葉 賢,大八木 麻希

    キーワード:伊勢湾,総量削減,全窒素,全リン,COD,クロロフィルa

 伊勢湾は漁業活動や親水の場として,人々に様々な恩恵を与えている.しかし,その水質は人間活動によって,近年大きく変化してきた.そこで,伊勢湾の水質の変化を捉え経年的な傾向を知るために,COD,全窒素,全リンについて,過去の広域総合水質調査データを取りまとめ,考察をおこなった.その結果,2015年の伊勢湾内の全窒素および全リンの濃度は,調査の始まった1979年に比べると低下しているものと考えられる.特に2000年以降全窒素の濃度は全湾的に減少傾向に変化し,伊勢湾総量削減による全窒素の流入抑制により,湾内の窒素成分が減少してきていることが示唆された.また,CODとクロロフィルa濃度との相関から,湾奥では,CODへの植物プランクトン量の寄与が小さい可能性がある一方,2000年以降鈴鹿沖から伊勢沖および湾央,湾口,三河湾湾口では,CODへの植物プランクトン量の寄与が大きくなっていると考えられる.
 

 ・2017rep6 三重県における微小粒子状物質(PM2.5)中のジカルボン酸類の調査について   

      西山 亨,岩﨑誠二,寺本佳宏,佐藤邦彦,阪本晶子,川合行洋

    キーワード:有機マーカー,ジカルボン酸類,シュウ酸,後方流跡線解析,微小粒子状物質(PM2.5),二次生成

 近年,PM2.5の二次生成の指標として注目されている大気中有機化合物であるジカルボン酸類をイオン成分と同時分析する方法を開発した.その方法を用いて,三重県内のPM2.5中のジカルボン酸類を測定したところ,定量できることがわかった.また,2015-2016年度に採取したPM2.5常時監視のサンプル中のシュウ酸を測定したところ,一時的には1μg/m3付近の高濃度になることがあるものの,概ね0.2μg/m3以下で推移していることが分かった.シュウ酸と水溶性有機炭素は夏季と秋冬季に強い相関があり,季節ごとの傾向は,春季,夏季,秋冬季の順にシュウ酸の割合が高い傾向があった.シュウ酸とオキシダントは夏季に強い相関があり,このことは両物質が二次生成起源であることを裏付けた.また,後方流跡線解析を実施したところ,シュウ酸またはその原因物質(VOC等)が移流の影響を受けている可能性があった.

 ・2017rep7 アクティブ法およびパッシブ法による大気中オゾンの測定   

      阪本晶子,佐来栄治,寺本佳宏,岩崎誠二,佐藤邦彦,西山 亨,川合行洋

    キーワード:オゾン,アクティブ法,パッシブ法,BPE-DNPH,DSD-OZONE

 光化学オキシダントの主成分であるオゾンの測定方法について検討し,パッシブ法にHPLC分析が適応できることを確認した.アクティブ法とパッシブ法の並行サンプリングによるオゾン濃度を比較したところ,両者間で良好な相関が得られた.
 三重県北部の市街地,沿道,山間部の3地点で,アクティブ法とパッシブ法による2年間の大気中オゾンの実態調査を行ったところ,オゾン濃度は両測定法で類似の挙動を示し,濃度は山間部に位置する桜(四日市市)が最も高く,沿道に位置する鈴鹿で低い傾向があった.また,オゾン濃度が高くなった日は湿度が低い傾向にあり,オゾン濃度と湿度に負の相関が認められた.

資料

   ・2017rep8 三重県独自の調査様式による性感染症サーベイランス結果(2016年)

        畑中秀康,岩出義人,山内昭則、山本昌宏

      キーワード:性感染症,サーベイランス,無症状病原体保有者,パートナー検診,咽頭感染

 「性感染症に関する特定感染症予防指針」では,性感染症は感染しても無症状や軽症にとどまる場合が多く,自覚症状がある場合でも医療機関を受診しないことがあるため,感染の実態を把握することが困難となっている.また,感染症法に基づく発生動向調査で把握される全国の報告数は全体的に減少傾向がみられるものの,依然として十代半ばから二十代にかけての若年層における発生の割合が高いことに加え,性行動の多様化により咽頭感染などの増加が懸念され,対策の必要性が指摘されている.しかし,現行の発生動向調査による性感染症サーベイランスでは,無症状病原体保有者,咽頭感染,混合感染などを把握することはできない.このことから,三重県では,独自の調査様式による性感染症サーベイランスを2012年1月から開始した.以下に,2016年の概要を報告する.
                                          

     2017rep9 2016年度の先天性代謝異常等検査の概要                  

        小林章人,中野陽子,内山信樹,楠原 一,永井佑樹,赤地重宏,前田千恵             

    キーワード:先天性代謝異常等検査,先天性副腎過形成症,先天性甲状腺機能低下症,先天性アミノ酸代謝異常症,先天性有機酸代謝異常症,先天性脂肪酸代謝異常症

 先天性代謝異常症とは遺伝子変異の結果,特定の蛋白質が合成されないために発症する疾患,ある種の酵素の異常や到達経路の異常により代謝されるべき物質の貯留によって発症する疾患であると定義されている.現在では,酵素化学的研究および分子遺伝学的研究の進展に伴い遺伝子異常の本態が明らかになりつつあるが,その病態に関しては不明な部分が多く,病因解明に比し治療法の遅れが指摘されている .
アミノ酸代謝異常症,有機酸代謝異常症,脂肪酸代謝異常症はそれぞれアミノ酸,有機酸,脂肪酸などの中間代謝産物の蓄積に起因する疾患である.一方,内分泌疾患である先天性甲状腺機能低下症(Congenital hypothyroidism)と先天性副腎過形成症 (Congenital adrenal hyperplasia) は特定物質の合成障害に起因する疾患である.先天性代謝異常等症は治療困難なものが多いが,可及的早期に診断,治療を開始すれば,機能障がいなどに陥ることを予防できる疾患もある.
 新生児を対象とした先天性代謝異常症マス・スクリーニング事業は,1977年10月から全国的に開始され,三重県においても1977年11月から県内で出生した新生児を対象に5疾患(フェニルケトン尿症,メープルシロップ尿症,ホモシスチン尿症,ヒスチジン血症およびガラクトース血症)について検査が開始された.次いで1979年から先天性甲状腺機能低下症,1989年から先天性副腎過形成症が追加され,1994年にはヒスチジン血症が中止となっている.2013年3月にアミノ酸代謝異常症2疾患(シトルリン血症Ⅰ型,アルギニノコハク酸尿症),有機酸代謝異常症7疾患(メチルマロン酸血症,プロピオン酸血症,イソ吉草酸血症,メチルクロトニルグリシン尿症,ヒドロキシメチルグルタル酸血症,複合カルボキシラーゼ欠損症,グルタル酸血症Ⅰ型),脂肪酸代謝異常症4疾患(MCAD欠損症,VLCAD欠損症,三頭酵素欠損症,CPTⅠ欠損症)の計16疾患を対象疾患に追加し,現在は上記19疾患についてマス・スクリーニングを行い早期発見に努めている.
 

     2017rep10 2016年感染症流行予測調査結果(日本脳炎,インフルエンザ,風疹,麻疹)の概要

    矢野拓弥,楠原 一,中野陽子,小林章人,赤地重宏

    キーワード:感染症流行予測調査,日本脳炎,インフルエンザ,風疹,麻疹   

  本事業は1962年から「伝染病流行予測調査事業」として開始している.その目的は集団免疫の現状把握および病原体の検索等を行い,各種疫学資料と併せて検討することによって,予防接種事業の効果的な運用を図り,さらに長期的視野に立ち総合的に疾病の流行を予測することである.その後,1999年4月「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の施行に伴い,現在の「感染症流行予測調査事業」へと名称変更された.ワクチンによる予防可能疾患の免疫保有調査を行う「感受性調査」およびヒトへの感染源となる動物の病原体保有を調査する「感染源調査」を国立感染症研究所および県内関係機関との密接な連携のもとに実施している.これまでの本県の調査で,晩秋から初冬に日本脳炎ウイルス(JEV)に対する直近の感染を知る指標である2-メルカプトエタノール(2-ME)感受性抗体が出現1)したことなど興味深い現象が確認されてきた.また,以前は伝染病流行予測調査事業内で実施されていたインフルエンザウイルス調査において,1993/94シーズンに分離されたインフルエンザウイルスB型(B/三重/1/93株)が,ワクチン株に採用された等の実績がある.ヒトの感染症における免疫状態は,各個人,地域等,さまざまな要因で年毎に異なる.本年度採取できた血清は,同一人であっても毎年の免疫状態とは必ずしも同じではないことが推察される.これらのことはヒト血清だけでなく動物血清についても同様であり,毎年の感染症流行予測調査事業における血清収集は重要である.集団免疫の現状把握と予防接種事業の促進等,長期的な流行予測調査が感染症対策には不可欠であるので,本調査のような主要疾患についての免疫状態の継続調査は,感染症の蔓延を防ぐための予防対策として必要性は高い.以下に,2016年度の感染症流行予測調査(日本脳炎,インフルエンザ,風疹,麻疹)の結果について報告する.
 

     2017rep11 2016年感染症発生動向調査結果                   

       楠原 一,矢野拓弥,前田千恵,永井佑樹,小林章人,中野陽子,赤地重宏

   キーワード:感染症発生動向調査事業,病原体検査定点医療機関,感染性胃腸炎,日本紅斑熱,インフルエンザ

 感染症発生動向調査事業の目的は,医療機関の協力を得て,感染症の患者発生状況を把握し,病原体検索により当該感染症を微生物学的に決定することで流行の早期発見や患者の早期治療に資することにある.また,感染症に関する様々な情報を収集・提供するとともに,積極的疫学調査を実施することにより,感染症のまん延を未然に防止することでもある.
 三重県では,1979年から37年以上にわたって本事業を続けてきた.また,検査技術の進歩に伴い,病原体の検出に必要なウイルス分離や同定を主としたウイルス学的検査や血清学的検査に加え,PCR法やReal time PCR法等の遺伝子検査も導入し,検査精度の向上を図ってきた.その結果,麻疹や風疹等,季節消長の明らかであった疾患が,発生数の減少や流行規模の縮小により最近は季節性が薄れている一方で,多くの疾患で新たなウイルスや多様性に富んだ血清型や遺伝子型を持つウイルスの存在が明らかになってきた.
 以下,2016年の感染症発生動向調査対象疾患の検査定点医療機関等で採取された検体について,病原体検査状況を報告する.
  

     2017rep12 三重県における2016年環境放射能調査結果                

        吉村英基,森外由美,森 康則,前田 明,一色 博,山本昌宏

   キーワード:環境放射能,核種分析,全ベータ放射能,空間放射線量率

 日本における環境放射能調査は,1954年のビキニ環礁での核実験を契機に開始され,1961年から再開された米ソ大気圏内核実験,1979年スリーマイル島原発事故,1986年チェルノブイリ原発事故を経て,原子力関係施設等からの影響の有無などの正確な評価を可能とするため,現在では全都道府県で環境放射能水準調査が実施されている1). 
 三重県は1988年度から同事業を受託し,降水の全ベータ放射能測定,環境試料及び食品試料のガンマ線核種分析ならびにモニタリングポスト等による空間放射線量率測定を行って県内の環境放射能のレベルの把握に努めている.
 さらに福島第一原子力発電所事故後は,国のモニタリング調整会議が策定した「総合モニタリング計画」2) に基づき原子力規制庁が実施する調査の一部もあわせて行っている.
 また,2016年度は2016年9月9日の北朝鮮の核実験実施発表への対応のため,原子力規制庁からの協力依頼を受けてモニタリング強化を実施した.
 本報では,2016年度に実施した調査の結果について報告する.
 

データ集

     2017rep13 2016年度酸性雨調査結果                

       調査担当課名  環境研究課

 当研究所は1991年度から全国環境研協議会酸性雨広域大気汚染調査研究部会の全国酸性雨調査に参加している.2016年度からの第6次調査全国酸性雨調査において,湿性沈着調査を実施した.また,全国環境研協議会東海・近畿・北陸支部共同調査研究(越境/広域大気汚染)において降水中の無機元素を測定した.
 

本ページに関する問い合わせ先

三重県 保健環境研究所 〒512-1211 
四日市市桜町3684-11
電話番号:059-329-3800 
ファクス番号:059-329-3004 
メールアドレス:hokan@pref.mie.lg.jp

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

ページID:000209686