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保環研年報 第23号(2021)

 


 三重県保健環境研究所年報 第23号(通巻第66号)(2021)を発行しましたのでその概要をご紹介します。

 

各研究報告(原著、ノートおよび資料)の全文(PDF形式)をご希望の方は、こちらからダウンロードできます。

 

研究報告

原 著

2021rep1  汚泥肥料の利用における安全性確認に係る調査・研究
 
       近藤 笑加,奥山 幸俊,坂口 貴啓,立野 雄也,渡邉 卓弥,石田 健太,阪本 晶子,有冨 洋子

     キーワード:汚泥肥料,下水汚泥,肥料等試験法
 
 汚泥肥料の安全性について明らかにするために,土壌カラム試験における重金属類の挙動調査と下水汚泥および汚泥肥料の性状分析を実施した.三重県で定めている「汚泥肥料の農地への利用に係るガイドライン」に基づき汚泥肥料の安全性確認を実施した.
 重金属類の土壌汚染について,ひ素(As),セレン(Se)は土壌溶出量基準に係る土壌汚染リスクが,カドミウム(Cd),鉛(Pb),水銀(Hg)は土壌含有量基準に係る土壌汚染リスクが高い.カラム内土壌に添加した重金属類の量に対する土壌の溶出量と含有量,カラム下部から流れ出る量の各々の割合を計算して,重金属類の土壌中の挙動を把握した.毎年10t相当量の重金属類を施肥しながら20年間分の雨量を通水した場合でも,土壌溶出量基準を超過しなかった.
 下水汚泥,汚泥肥料の性状試験の結果,環境庁告示第46号の土壌溶出量試験(46号試験)ではAsが,環境省告示第19号の含有量試験(19号試験)ではPbが検出され,カラム試験ではAsが流出した.すべての下水汚泥と汚泥肥料は肥料の品質の確保等に関する法律における公定規格を満たしていた.汚泥肥料の46号試験結果を用いて,汚泥肥料中の重金属類の溶出と土壌への浸透を考慮した土壌汚染リスクの推定を試みた.
 安全性確認を実施した結果,1000 m2につき1tを毎年施肥して蓄積割合が概ね50%に達するには,下水汚泥では55年,汚泥発酵肥料は65年,し尿汚泥肥料は27年を要した.

2021rep2 伊勢湾の水質と植物プランクトンの年代推移の解析
 
   渡邉 卓弥,石田 健太,国分 秀樹,岩出 将英,辻 将治,大八木 真希,千葉 賢
 
   キーワード:伊勢湾,水質,植物プランクトン
 
 伊勢湾の水質と植物プランクトンの年代推移について,広域総合水質調査の表層水の分析データを用いて解析を行った.
 CODは湾奥では増加傾向にあるが,湾央及び湾口では横ばいであった.TOCは湾奥で2000年代をピークに2010年代にかけて減少しており,湾央及び湾口では1990年をピークにその後減少していた.また,いずれの区域でも2010年代のCOD/TOCが最も高いことから,CODとして評価される分解性の有機物の割合が2010年代は1980年代以降で最も多い状態であると考えられた.全窒素(TN),溶存態窒素(DIN),全リン(TP)及び溶存態リン(DIP)は1980年代以降減少傾向にあり,特に2000年代から2010年代で減少していた.
 クロロフィルaは湾奥で1980年代から1990年代にかけて増加し,2000年代まで横ばいであったが,2010年代に入り減少した.また,湾央及び湾口では1980年代から2010年代まで単調減少していた.植物プランクトンの総細胞数は全湾的に1980年代から2010年代まで単調増加していた.植物プランクトンの優占種の上位6種は上位から順にSkeletonema sp.,Chaetoceros sp.,Thalassiosira sp.,Cerataulina sp.,Prorocentrum sp.,Nitzschia sp.であった.このなかでSkeletonema sp.及びChaetoceros sp.は1980年代から2010年代まで全湾的に単調増加しており,伊勢湾における植物プランクトンの総細胞数の増加に大きく関わっていることが推測された. 
 

ノート

2021rep3   三重県における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム分子疫学調査(2020年1月~2021年10月)
 
   矢野 拓弥,北浦 伸浩,中井 康博
 
   キーワード:新型コロナウイルス,SARS-CoV-2,ゲノム解析,NGS
 
 国内のSARS-CoV-2の流行は,複数回の感染者数のピーク(2020年春先の第1波から2021年夏季の第5波)があり,国内の各自治体はSARS-CoV-2によるクラスターの発生源の特定と濃厚接触者の追跡によって感染拡大を封じ込める対策を実施してきた.第1波は,中国(武漢)で発生したSARS-CoV-2を起点に,本県においては2020年1月以降,武漢由来のA系統に近縁であるB.1系統が検出されたが,2020年3~4月には欧州由来ウイルスのB.1.1系統が主に流行していた.
 2020年の夏季(7~9月)の第2波は,B.1.1系統から派生したB.1.1.284系統によるものであった.
 第3波は2020年12月以降の冬季に,もう1つの欧州由来ウイルスであるB.1.1.214系統と第2波で主流となったB.1.1.284系統が混在して流行していた.また,2020年11月を中心とした南アジアからの流入ウイルス(B.1.36系統)による地域コミュニティでの感染拡大がみられたが,保健所等のクラスター対策により,封じ込められ,その後の拡散は確認されていない.
 第1から第3波の流行の主流となった,欧州由来のD614G変異を有するウイルスは,その後も,現在まで続いているが,第4波はB.1.1.7系統(N501Y変異)とR.1系統,第5波はB.1.617.2系統(L452R変異)による流行であった.
 
2021rep4 三重県におけるアミノ酸変異(N501Y,L452R)を有する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の経時的検出状況とその他のアミノ酸変異(E484K,F490S,L452Q)の動向
 
   矢野 拓弥,永井 佑樹,楠原 一,小林 章人,北浦 伸浩,中井 康博
 
   キーワード:新型コロナウイルス,SARS-CoV-2,Spike蛋白質,アミノ酸変異,N501Y,L452R
 
 2021年1月~2021年10月に本県で検出されたSARS-Cov-2陽性者のSpike蛋白質におけるN501Y,L452R,E484K,L452Q,F490S変異の有無について調査した.2021年1~5月までの間に E484Kの変異を有するR.1系統の特徴を有するウイルスが少数ながら確認された.N501Y変異を有するSARS-Cov-2は,全国の流行状況と同様に,本県の各地域においても2021年3月中旬から4月を境に,流行状態へとシフトしていた.さらには2021年7月中旬を境に県内全域でN501Y変異ウイルスからL452R変異ウイルスへと流行ウイルスに変遷がみられた.次期流行ウイルスの候補と懸念されているラムダ株の動向把握では,2021年6~10月末までF490SおよびL452Q変異を有するウイルスは確認されなかった.

2021rep5 三重県におけるA型肝炎の発生状況とA型肝炎ウイルスの分子疫学的解析(2015~2020年)
 
   楠原  一,北浦 伸浩
 
   キーワード:A型肝炎,男性間性交渉者,積極的疫学調査

 三重県におけるA型肝炎の流行状況を明らかにするため,2015~2020年に県内で報告されたA型肝炎患者情報の集計と検出されたA型肝炎ウイルス(Hepatitis A virus: HAV)の分子疫学的解析を実施した.患者報告数は年間0~6例で,大きな流行は見られなかった.分子疫学的解析の結果,国内の流行株がその流行の翌年に県内で検出されており,A型肝炎が全国的に感染を拡大していることが示唆された.A型肝炎は潜伏期間が長く,感染源の特定が困難であるため,積極的疫学調査において患者検体の確保に努め,遺伝子検査と陽性例に対する分子疫学的解析を実施することが重要である.
 

資料

2021rep6 2020年度感染症流行予測調査結果(日本脳炎,インフルエンザ,風疹,麻疹)の概要
 
   矢野 拓弥,楠原  一,小林 章人,北浦 伸浩,中井 康博

   キーワード:感染症流行予測調査,日本脳炎,インフルエンザ,風疹,麻疹
 
 本事業は1962年から「伝染病流行予測調査事業」として開始している.その目的は集団免疫の現状把握および病原体の検索等を行い,各種疫学資料と併せて検討することによって,予防接種事業の効果的な運用を図り,さらに長期的視野に立ち総合的に疾病の流行を予測することである.その後,1999年4月「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の施行に伴い,現在の「感染症流行予測調査事業」へと名称変更された.ワクチンによる予防可能疾患の免疫保有調査を行う「感受性調査」およびヒトへの感染源となる動物の病原体保有を調査する「感染源調査」を国立感染症研究所および県内関係機関との密接な連携のもとに実施している.これまでの本県の調査で,晩秋から初冬に日本脳炎ウイルス(JEV)に対する直近の感染を知る指標である2-メルカプトエタノール(2-ME)感受性抗体が出現したことなど興味深い現象が確認されてきた.また,以前は伝染病流行予測調査事業内で実施されていたインフルエンザウイルス調査において,1993/94シーズンに分離されたインフルエンザウイルスB型(B/三重/1/93株)が,ワクチン株に採用された等の実績がある.ヒトの感染症における免疫状態は,各個人,地域等,さまざまな要因で年毎に異なるので,本年度採取できた血清は同一人であっても毎年の免疫状態とは必ずしも同じではないことが推察される.これらのことはヒト血清だけでなく動物血清についても同様であり,毎年の感染症流行予測調査事業における血清収集は重要である.集団免疫の現状把握と予防接種事業の促進等,長期的な流行予測調査が感染症対策には不可欠であるので,本調査のような主要疾患についての免疫状態の継続調査は,感染症の蔓延を防ぐための予防対策として必要性は高い.以下に,2020年度の感染症流行予測調査(日本脳炎,インフルエンザ,風疹,麻疹)の結果について報告する.
 
2021rep7 2020年感染症発生動向調査結果
 
   楠原 一,小林 章人,矢野 拓弥,永井 佑樹,北浦 伸浩
   
   キーワード:感染症発生動向調査事業,病原体検査定点医療機関,日本紅斑熱,感染性胃腸炎,
                         インフルエンザ,新型コロナウイルス
 
 感染症発生動向調査事業の目的は,医療機関の協力を得て,感染症の患者発生状況を把握し,病原体検索により当該感染症を微生物学的に決定することで流行の早期発見や患者の早期治療に資することにある.また,感染症に関する様々な情報を収集・提供するとともに,積極的疫学調査を実施することにより,感染症のまん延を未然に防止することにもある.
 三重県では,1979年から40年以上にわたって本事業を続けてきた.その間,検査技術の進歩に伴い,病原体の検出に必要なウイルス分離や同定を主としたウイルス学的検査,さらに血清学的検査に加えてPCR法等の遺伝子検査やDNAシークエンス解析を導入し,検査精度の向上を図ってきた.また,検査患者数の増加により多くのデータが蓄積されてきた結果,様々な疾患で新たなウイルスや多様性に富んだ血清型,遺伝子型を持つウイルスの存在が明らかになってきた.
 以下に2020年の感染症発生動向調査対象疾患の検査定点医療機関等で採取された検体について,病原体検査状況を報告する.
  
2021rep8  三重県における2020年度環境放射能調査結果
 
   佐藤 大輝,西 智広,森 康則,吉村 英基
   
   キーワード:環境放射能,核種分析,全ベータ放射能,空間放射線量率
 
 日本における環境放射能調査は,1954年のビキニ環礁での核実験を契機に開始され,1961年から再開された米ソ大気圏内核実験,1979年スリーマイル島原発事故,1986年チェルノブイリ原発事故を経て,原子力関係施設等からの影響の有無などの正確な評価を可能とするため,現在では全都道府県で環境放射能水準調査が実施されている.
 三重県は1988年度から同事業を受託し,降水の全ベータ放射能測定,環境試料および食品試料のガンマ線核種分析ならびにモニタリングポスト等による空間放射線量率測定を行って県内の環境放射能のレベルの把握に努めている.
 さらに福島第一原子力発電所事故後は,国のモニタリング調整会議が策定した「総合モニタリング計画」 に基づき原子力規制庁が実施する調査の一部もあわせて行っている.
 本報では,2020年度に実施した調査の結果について報告する.

本ページに関する問い合わせ先

三重県 保健環境研究所 〒512-1211 
四日市市桜町3684-11
電話番号:059-329-3800 
ファクス番号:059-329-3004 
メールアドレス:hokan@pref.mie.lg.jp

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