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平成21年01月27日

研究報告第3-4号

1.果菜類の水耕栽培に関する研究 第1報キュウリの品種および接木栽培に関する試験

豊富康弘・西口郁夫・今泉寛・中村正明

  1. 水耕栽培におけるキュウリの品種と水耕栽培に発生の多い疫病対策としての接木栽培について検討した。
  2. 半促成栽培においては、生育よく、収量高く、品質の優れた自イポ系品種中で、夏埼落5号、近成山東がよかった。
  3. 抑制栽培では、生育旺盛で、収量が高い黒イポ系品種中で、長日落合2号がよく、は種期は早播きほど収量が高かった。
  4. 接木栽培は疫病(P.melonis)の発生がまったくみられず、生育、収量も高かった。台木としては鉄かぶとが親和性高く、生育、収量が安定していてよい。
    なお、高温性の自イポ系品種は接木栽培により、低温伸長性が高まり、抑制栽培における生育、収量が安定した。

2.トマトのモミガラクンタン育苗に関する研究 とくにトマト果実の乱形果防止について

今泉寛

床土育苗とモミガラクンタン育苗において、育苗中の夜温と、クンタン育苗における養液の肥料濃度が、苗の生育、収量、とくに乱形果の発生におよばす影響をみるため、1970年と1972年に試験を行ない次の結果を得た。

  1. 苗の生育は、クンタン苗は床土苗こ比べて生育速度が早まり、生育量は地上部では2~3倍、地下部では1~2倍であった。
  2. 床土、クンタン苗とも全収量は同じといえるが、クンタン苗は低段花房ほど床土苗に比べて開花期が早まるため、早期収量は多く、販売上からは有利な育苗といえる。
  3. 両苗とも育苗中の夜温が低いほど乱形果の発生率は高く、乱形果の発生防止のうえからは、米寿、東光では12℃、ファーストは15℃以上の夜温を必要とする。
  4. クンタン育苗における養液の肥料濃度が、乱形果発生におよばす影響は少ないが、低温育苗になるはど濃度を下げることが、乱形果の発生防止のうえからは安全といえる。

3.サツキの肥培する研究 とくにけいふんの施用量と施肥基準の設定について

中野直・片岡虎夫・山口省吾

  1. けいふんおよびIB化成の施用がサツキの生育に及ぼす影響について検討した。
  2. けいふんは1年生苗では10a当り1回量500kg、2年生苗では1,000~1,500kg(年間N成分55kg及び65~95kg)が適当であるが、連用すると生育阻害がおこりやすい。
  3. IB化成S1号は、1年生苗では10a当り1回量50kg、2年生では180kg(年間N成分15kg及び55kg)が適当で、連用による生育阻害は少ない。
  4. けいふん、IB化成とも土壌ECは1.0(水:土の比5:1)程度が最も生育良好であった。
  5. けいふんの多用及び連用による生育阻害の大きな原因は、土壌中にCaが畜積し、土壌pHを著しく高めるためと考えられる。
  6. 以上のことから、サツキは比較的多肥の必要な作物であるが、樹命、栽培期間によって適正施肥量は異なり、また、けいふん等のアルカリ性肥料の連用は、連作障害の原因になることが認められた。

4.ミカンの幼木肥培における未耕・熟畑土壊の土壌肥料的考察(続報)ミカン苗木の植栽が肥料の溶脱・跡地土壌の化学性におよぼす影響について

吉川操次・松田兼三・吉川重彦

ミカン苗木の不植栽土壌でえられる従来の多くの試験結果を、現地のミカン植栽後の土壌に適応できるか否かを知るため、花こう質岩の末耕土壌と熱畑土壌を小型ライシメーターに詰め、苗木を植栽した場合と植栽しない場合について、肥料成分の溶脱、跡地土壌の化学性を検討した。その結果、

  1. 窒素の溶脱はミカンの植栽によって抑制された。土壌の無機態窒素は植栽によって減少した。
  2. 燐酸の溶脱はミカン植栽の有無に関係なく痕跡であった。また土壌中の有効態燐酸は植栽の有無による差がみられなかった。
  3. 加里の溶脱はミカンの植栽によって増加した。また、土壌中の加里(置換性)は植栽によって増加し、とくに未耕土では著しかった。
  4. 石灰の溶脱は植栽によって末耕土では増加し、熟畑土では減少し土壌の新旧で相反した結果を示した。土壌中の石灰(置換性)は植栽の有無によって明らかな結果を示さなかった。
  5. 苦土の溶脱は植栽によって未耕土では増加し、熟畑土では減少した。土壌中の苦土(置換性)は植栽によって減少した。

5.温州みかんに施す有機質および無機質肥料に関する研究

森本拓也・田端市郎

  1. 1958~70年まで15年間、尾張系温州35年生を用いて有機質と無機質肥料の比較試験を行なった。
  2. 樹勢および収量とも無機質区で増大する傾向が認められた。
  3. 無機質肥料では、浮皮異になりやすいことを収穫時の調査でも、又果実の形質においても示した。
  4. 果汁中の糖度は、両処理間に大差ないが、クエン酸含量は無機質区で高くなることが多く、したがって、甘味比を低下させた。
  5. 葉中成分は、有機質区に比較して無機質区のチッ素およびカリウム濃度が高く、リンでは低い数値が認められた。
  6. 根群量は有機質区でやや多いが、細根が中層以上で少ない。無機質区では深層まで分布した。いずれも、樹冠の北側に根が多く、そして、深層まで根が伸びていることが認められた。
  7. 土壌中の成分含量は、表層土において両者の差が明らかに現われ、チッ素、リン酸、カリ、石灰および苦土含量、また、塩基置換容量、塩基および石灰飽和度も有機質区で高い値を示した。
  8. 無機質肥料を施用する場合のミカン園土壌は、有効土層が深く、腐植含量の高い、そして、微量要素対策など土壌管理を十分行なうことが大切なことである。また、有機質肥料も含めた各種形態の肥料を相互に組み入れ、施肥量など考慮すれば、無機質肥料を重点にしたミカン園の肥培管理が確立できるものと思われる。

6.クワゴマダラヒトリの生態と防除に関する研究

上野武夫・長江春季

  1. 1967年から1972年にかけて、山間地のカンキツ園にクワゴマダラヒトリの異常加害が認められたので、この生態調査と、防除試験を実施した。
  2. この虫は志摩郡磯部町で1968年に発生し、みかん園に加害したのが初めで、1970年には南勢・志摩全域に広がった。1971年には県北部の多度町、県南部の尾鷲市にも認められたが、1972年以降は、全県どこにも発生は認められなくなった。
  3. 本虫は年1回の発生で、8月下旬に成虫がう化し、9月上旬に産卵する。9月中旬にふ化した幼虫は、5~6令で越冬するが、この越冬前に集団でカンキツを加害する。越冬後の幼虫は、2月下旬から活動し始め個々に移動し、新葉を加害するが、この時期にもカンキツの新梢、蕾等を食害する。8令になった幼虫は、5月中旬より蛹化し土中で越夏する。
  4. 防除試験の結果、春季の幼虫に対して、ランネート水和剤、S-2539乳剤、ダーズバン乳剤、カルホス乳剤、ビニフェート乳剤、DDVP乳剤の効果が高かった。薬剤は老令幼虫よりも若令幼虫に対する効果が高く、その他ホスピット乳剤、デープチレックス粉剤、シアサイド乳剤、SIー7104乳剤、スミチオン乳剤等も効果がみられた。

7.カンザワハダニの茶園における生息分布に関する研究(第1報)平坦地の南北茶畦におけるカンザワハダニの部位別の生息状況の季節的変化

谷浦啓一・横山俊祐

平坦地の南北畦茶園について、茶畦の頂部、東西両肩部および東西両裾部におけるカンザワハダニの生息状況の季節的変化を、とくに早春の増殖期を中心として調査し、つぎの結果を得た。

  1. 調査茶畦におけるカンザワハダニの発生消長は、秋季の発生期が若干遅れてはいたが、ほぼ平年並であった。
  2. カンザワハダニの茶畦における部位別生息状況の年間の概況は、早春(2日4日~3日6日)には茶畦の東側肩部で生息密度が高かったが、春季の発生ピーク時(6月中旬)には茶畦の上下部および東西部で差異は少なく、秋期の発生ピーク時(10月下旬)には頂部と東西両肩部で高かった。
  3. 早春では、東側肩部でカンザワハダニの産卵開始が早く、産卵成ダニ率も高く、また、雌成虫1頭当たり産卵数も多かった。

8.省力2段育装置の試作と性能

岡山裕・上野洋一・舘克之・服部保

省力2段育装置の試作とその性能について調査した。結果、試作装置は、初期の目的である施設の有効利用と省力化をほぼ充足することが判明した。

  1. 飼育成績は、春蚕期と晩秋蚕期は、飼育所内温湿度の影響を受けて上、下段の蚕座間に差が認められたものの、ほほ良好であった。
  2. 作業能率は、上、下段とも無除沙自然上蔟が可能であり、作業労働時間は年間条桑育技術体系より約20%少なかった。
  3. 労働強度は、上段蚕座が下段蚕座よりやや高かった。
  4. 試作装置と壮蚕1日1回給桑育とを組み合わせることにより、労力節減の相乗的効果をあげえた。

9.シャロレー(雄)とホルスタイン(雌)の交雑種F1雄子牛の哺育・育成試験

岡本三樹・伊藤雄一

シャロレー×ホルスタインF1雄子牛6頭を供試し、生後16日令から25週令までの159日間、肥育用素牛として哺育・育成試験を行ない、つぎの結果を得た。

  1. 増体量:試験終了時平均体重は253.0kg(C.V6.7%)、同増体重204.0kg、試験期間DG1.28kgであった。
  2. 飼料摂取量:一頭当り平均摂取量は調整粉乳N、18・79kg、人工乳N145.7kg、育成G飼料401.15kg、乾草132.02kgと良好な採食であったが、とくに乾草の採食が良好であった。
  3. 飼料要求率:一頭当り平均要求率は、TDN2.33、DCP0.42と良好であった。
  4. 体型:F1雄子牛の体型は、生時より肉牛タイプで、休格測定値は、ホルスタイン雄子牛にくらべ、とくに後が大きいことを認めた。
  5. シャロレー×ホルスタインF1雄子牛は、その増体量、飼料効率、体型に限って、ホルスタイン雄子牛より肥育素牛としてすぐれていると思われる。

10.リニア・プログラミングによる地域農業計画の設計手法に関する研究

重倉昭一

  1. 農業の地域計画を、計量的手法としての線型計画法(Linear Programming Method)を用いて設計した。従来、線型計画法は個別経営の設計手法として開拓されているが、こゝでは、基礎データのプロセス(方式)として経営類型とり、地域の資源量の中で、その地域の総利益額を最大にする経常類型の組み合わせをこの手法によって求めたものである。
  2. 本計画を机上の空論または政策指向型としないため、地域内に在住する農家の意向を把握し、その意向を最大限に生かすことを主眼とした。このため、計画設計は全農家の意向調査より開始した。調査を集計整理して、65種類、199類型に集約した。
  3. 一方、調査結果から地域内に商品生産される22作目、47栽培(飼養)方式について、単位あたりの標準生産係数を簡策定した。
  4. 199類型について、標準生産係数を適用して、全類型の経営計画を策定した。
  5. 計算は各地区(部落)を単位として行なった。経営類型を実働プロセスとし、総農家数、類型別志向濃家数、田畑別土地面積、水稲受委託バランス、茶、桑葉の原材料需給バランス、労働需給バランスを制限量として制限式を組んだ。目的式は、実働方式として組みこまれた類型の1単位あたりの利益額に稼動水準を乗じたその総和が最高になるよう組んでいる。
  6. 単体表計算は農林省所有のHITAC8000のコンピューターで行なった。生産物の価格変動時の傾向を知るため、高値時、安値時の試算も加えて4~5回の修正計算を行ない、そのうち最も実現性の高い解を最終案とした。
  7. コンピューターの解を、地域計画として有意の解に修正し、地区ごとに専兼別、類型別農家配置計画を樹立した。
  8. 地区ごとのこの基本計画を集計して地域計画とした。地域計画では、土地利用計画、作目別生産計画、専兼別類型別農家配置計画、所得計画とした。
  9. 以上の基本計画の上に立って、生産団地育成計画、生産組織育成計画、生産物流通計画、資金調達計画が樹立せられた(本稿では省略)。
  10. 本地域計画は、それを構成する農家の意向に端を発し、地域に保有する資源量を最大源に生かす、経営類型のあるべき配置数を求めたものであり、地域内各農家の経営目標が瞭然と示される。すなわち、どの農家がどういう経営を目標にすればよいかが求められている。
    このことは、農業振興施策、生産組織育成についても、どの農家、どのグループを核とし、どれ程の広がりをもったグループによって生産団地を形成するかなどの焦点が計画の中で明瞭に示すことが可能である。本計画研究の目的であった計画の中での農家の位置の明確化は成功した。従来の農家不在の構想とは異なり、論理的かつ現実的であると確言できるものである。
  11. 本計画確定時点は昭和48年9月であり、その後の経済混乱によって農業をとりまく情勢に変化を生じているが、混乱が収束した時点で修正は加えなければならない。計算基礎データが判然としているので、客観的に容易に修正され得るものである。
    また、とり入れられた作目間に同じ変動が起っているとすれば、作目配置計画は修正する必要はなく、所得計画、資金調達計画の一部のみの修正によって事足りるものである。
  12. 類型をprocessとしたLinearprogramming による地域計画乍成の所期の研究目的は、充分使用に堪えるものであることが現実の場面で実証された。多くの作業量を消化する労力と、充分な計画費が与えられゝば、いづれの地域においても、本手法による地域計画策定は容易である。

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