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平成21年01月27日

研究報告第6号

1.水稲乾田直播栽培における有機物施用に関する研究 窒素の利用について

東上剛・松田兼三・奥出重幸・森俊和・吉川重彦

1973~1975年の5年間、乾田水稲直播において有機物施用の効果をみるための試験を行なった。
その結果

  1. 無機態窒素:牛ふん施用は、土壌中無機態窒素の顕著な発現増加を伴なった。
  2. 生育:牛ふん施用は草丈を伸ばし茎数増加に働いた。しかし、2t、4t施用は徒長、過繁茂の生育を示しており、安全限界施用量としては1tまでを適量と考えられる。また、バーク堆肥施用ではやや生育が劣る傾向がみられた。
  3. 収量:牛ふん施用は登熟歩合を減じたが、穂教増加、総頴花数を増して著しい増収となった。また、生わら加用効果はみられず、バーク堆肥施用によりやや減収傾向がみられた。
  4. 植物体養分含量:牛ふん施用により窒素、燐酸、加里の吸収がかなり高かった。
  5. 跡地土壌:牛ふん施用によりT-N、T-C、CEC、K20、P203、有効珪酸、温度上昇効果、乾土効果が著しく増加した。また、バーク堆肥施用によりT-N、T-C、CECが増加し、生わら施用によりT-N、T-C、CEC、有効珪酸、温度上昇効果、乾土効果の増加がみられた。

2.大規模生産単位における乾燥施設のあり方について

小河内一司

現状においては、ライスセンターと大規模生産単位との機械的な連係をはかることは困難と思われる。この問題は帰するところ機械施設の共同利用と個別利用の対抗関係にかゝわっており、大規模生産単位が、その経営的優位性をどこまで内部化しているか、他方ライスセンター自体の運営方式によって、両者の連係のあり方は異ならざるを得ない。こうした両者のかかわりについて、いろいろな事例を通じてそれぞれの展開方式と段階に即しつゝ一定の方向を見出すことが、今後の大きな課題である。

3.果菜の水耕栽培に関する研究(第3報)半促成トマトの品種に関する試験

豊富康弘・今泉寛

  1. 半促成トマトの品種と液温、苗令について検討した。
  2. 米寿、東光K、マスター3号について、液温は自然湿度(15℃以上)で生育、収量がよく、ファーストは液温を加温(20℃以上)した方が品種特性を十分発揮させ、生育、収量がよいことがわかった。
  3. 米寿、東光K、ファーストは45日苗程度の若苗が生育、収量によいが、マスター5号は苗令にこだわらなくてよいが、高い収量をあげるためには60日苗の老化苗が適当であろう。
  4. 液温、苗令に関係なく、米寿、東光Kは尻腐果やその他、障害果の発生が多いが、ファーストは条腐果の発生少なく、マスター3号は尻腐果の発生が少なかった。
  5. 半促成トマトの品種では、東光Kが生育よく、正常果の収量が高いので有望であろう。ファーストは養液を加湿することによって、その特性を発挿し、生育、収量も高く、品質も優れているので有望であろう。
  6. 品種と養液濃度、通気度の最適組合せを検索することが今後の問題点としてあげられる。

4.ミカンの生育に及ぼす根圏pHの影響(第1報)養液pHと生育について

橋本敏幸・東上剛

キコク台温州ミカン苗木を用いてpH4.5、5.5、7.0別に養液栽培を行なったところ、次の結果が得られた。

  1. 温州ミカンの生育は低・中・高pH別に顕著な差が見られなかったが、着花量は低pH区に多く、高pH区は少なかった。高pH区にはMn、Znの欠乏症が見られた。
  2. 葉または枝中のN、K、Ca濃度はpHが高くなる程多くなり、逆にMn、Zn、Feは低くなった。
  3. 以上の結果、養液栽培条件での温州ミカンの根圏環境は微酸性が好ましいと思われる。

5.夏橙の土壌管理法に関する研究(第2報)

森本拓也・田端市郎・大畑繁

  1. 1956~76年まで16年間、普通夏橙25年生を用いて土壌管理法の比較試験を行なった。
  2. 樹勢および収量とも敷草による処理が他の処理に比べて増大することが認められた。
  3. 敷草では果実が浮皮果になりやすく、裸地は果実比重および果肉歩合とも高い形質を示した。
  4. 果汁中の糖度は裸地では高く、また、クエン酸含量の低い傾向がみられ、敷草は逆に糖度が低く、クエン酸の高いことが認められた。
  5. 葉中チッ素およびカリウム、カルシウム含量は敷草が多く、裸地は最も少ないが、リン含量では多い傾向を示した。
  6. 果皮、果肉中のチッ素、リン、カリウム含量は葉中と同様な処理間の傾向であったが、カルシウムは逆に裸地において増加している。
  7. 根群の状態についで総根量では明らかな傾向はみられないが、草生の中層土の根群割合は他に比べて高い値であろ。
  8. 根の分布の特徴は草生では樹冠外に少なく、敷草では樹冠下に多くの分布割合を示し、草生においては上中層土の細根割合が最も高いことである。
  9. 土壌の三相分布では中、下層土の団相率およぶ下層土の液相率では処理間に差は認められないが、裸地の固相率が高く、敷草で低い。草生においては液相率が低く、敷草では高い値を示した。
  10. 土壌の化学性は上層土において、PHは裸地が低く、敷草で高い。腐植含量でも同様な傾向がみられた。裸地では樹冠下の腐植含量が低く、草生は樹冠内が高く、敷草では樹冠下および樹冠外で高い含量を示した。
    土壌の成分含量は全体に裸地が低く、敷草において高い。また、塩基置換容量についても同様な傾向が認められた。

6.みかん園における自動散布施設に関する研究

上野武夫・長江春季・渋谷久治・森本拓也

1970年よりスプリンクラーを利用して、病害虫防除を主体とした多目的利用と、現地の自動散布施設での実証試験と施設の機能について一部調査を行なった。

  1. 多目的利用については、そうか病、黒点病、ミカンハダニ、ミカンハムグリガ、ハマキムシ、アブラムシに対する病害虫防除、除草剤散布、液肥利用、塩害防止について試験を行なった結果塩害防止について、防塩効果は見られたが落葉防止効果が劣ったのを除き、その他はいづれも効果が見られた。
  2. 実証試験は、そうか病、かいよう病、ミカンハダニの防除と、除草剤の散布を行った結果、そうか病は効果が高く、ペンレート、デラン水和剤で実用が出来、かいよう病は、動力噴霧機にやや劣る年もみられたが、実用可能で、ミカンハダニ除草剤の効果も高かった。
  3. 本県で設置されている自動散布施設の機能については、末端混入方式において、散布液が水和剤の場合、一部で30%程度の濃度差が見られた。また、配管内の流量は下り勾配の配管に多く、上り勾配の管は少なかった。薬液を散布の場合に特に問題となる散布ブロック内のライザ一位置による吐出開始時間差は、単純な配管ブロックではあまり問題とならなかったが、配管延長の長い複雑なブロックにおいては、電磁弁に近いライザーと遠いライザーとの間には1分間以上の差を生じた。
  4. 自動散布施設の実態調査を行ったが、スプリンクラーの利用は、病害虫防除で年間4~5回、その他の利用は1~2回であった。スプリンクラー以外の散布は動力噴霧機を利用しているが、この比較は早生温州で少く、甘夏では多かった。
    また、労力費の削減と薬剤費の増加分を比較すると7~9年生の園では、自動散布がやゝ高くなっていることと、運営費が1ha当り87,000円を要している。
  5. 三重県下における自動散布施設の設置状況では、かんきつは、中低圧の施設が多く、なし、ぶどうは高圧の施設が主体であった。また、利用状況では、かんきつが年間防除回数8.2回のうち5.4回、なしは17回のうち13.3回、ぶどうは12.5回のうち10回で、20~30%は自動散布以外の補助散布を行っており、病害虫防除以外の利用は、液肥施用、除草剤散布、灌水等に極めて少ない利用事例があるのみであった。

7.伊勢いもにおける農薬の残留1ケルセンおよびクロルベンジレート

吉川重彦・石川裕一

伊勢いもに対してケルセンおよびクロルベンジレートを散布し、作物中の残留、消長を調査分析した。

  1. ケルセンの残留量は0.003~0.010ppmで非常に少なかった。検出限界は0.001ppmであった。
  2. 採取時期を早めると残留量は多くなる傾向がみられた。散布回数による残留量への影響はあまりみられなかった。
  3. クロルベンジレートはHFB化することにより検出限界は0.003ppmとなった。残留量は0・009~0・028ppmと少なかった。
  4. 2回散布区は日数の経過とともに残留量は顕著な減少がみられたが、5回散布区はほとんど減少がみられなかった。

8.洋らん(シンビジューム)の開花調節に関する試験(第3報)チッ素の施肥量および施肥方法が生育・開花に及ぼす影響

中野直・片岡虎夫・山口省吾

  1. シンビジュームの生育、開花に及ぼす、チッ素肥料の施用量およびチッ素肥料の打切り操作の影響について検討を行なった。
  2. 栄養生長は、チッ素施用量が多くなるにしたがって旺盛で濃度150ppmで最高となり、260ppmの高濃度ではやゝ抑制された。
  3. バルブの肥大は、低チッ素区で大きく、高チッ素区で劣った。
  4. 開花率は、チッ素65ppm以下の低チッ素区で高く、130ppm以上の高チッ素区で劣り、また花蕾の発生時期も遅れる傾向が認められた。
  5. 生育中のチッ素肥料の打切りによって、栄養生長の抑制が認められ、その傾向は早期打切りで著しかった。
  6. バルブの肥大は、チッ素の打切りによって肥大が早まる傾向が認められた。
  7. 植物体のチッ素含有率は、チッ素の打切りで減少し、特に早期打切り区では低く、継続区で高かった。
  8. 開花率は、チッ素の打切りによって高くなり、とくに打切り時期早いほど高く、早期の花蕾発生率も高まった。
  9. 以上のことから、シンビジュームの生育、開花に対するチッ素の影響は大きい。すなわら、栄養生長を促進し、開花率を向上させるための肥培管理として、栄養生長期は、130ppmの高チッ素濃度の施用を行い、生育の停止する花芽形成期前からチッ素肥料の断絶操作を行うことが有効な施肥技術と思われる。

9.洋らん(シンビジューム)の開花調節に関する試験(第4報)日照条件が生育・開花に及ぼす影響

山口省吾・片岡虎夫・中野直

  1. シンビジュームの生育、開花に及ぼす日照条件の影響を知り、実用的な日照管理の方法を見出すため、1974年に日照量について、1975年には遮光方法について検討を行なった。
  2. 夏期における戸外の晴天時の照度は100,000~120,000Luxであり、シンビジュームの生育および開花には、遮光率30~50%、照度50,000~70,000Luxが適当であった。
  3. 日照量が不足すると軟弱徒長気味に生育し、花芽形成が行なわれにくくなり開花率は著しく減少する。とくに70%遮光、照度30,000~35,000Lux以下の場合に、その影響が著しく現われた。
  4. 遮光の方法は全体の光線をやわらげる方法でよく、必ずしもガラス張りの方法をとる必要はないものと認められた。
  5. 以上のことから、シンビジュームの花芽分化には、光の強さが大きく影響し、開花率を高めるためには50,000~70,000Luxの照度が必要で、実用的には黒寒冷沙(#600)の一重被覆による遮光栽培をすることが適当であることが認められた。

10.TTCおよびα-ナフチルアミンによる茶樹根の活力測定法ならびにその応用

橘尚・中山仰

従来から茶樹根の生長を取り扱った研究は多いが、根の生理的活力程度を直接測定した例は、ほとんど見あたらない。そこでTTCおよぴα-ナフチルアミンによる組織の還元力および酸化力を知る酵素活性測定法を用いて、茶樹根での測定法の検討ならびに過湿障害判定のための応用を試みた。
茶樹細根(白根部)におけるTTC還元力とα-ナフチルアミン酸化力の関係は、r=+0.899のきわめて高い相関が認められた。しかし、TTC還元力の反応は、α-ナフチルアミン酸化力のそれに比べきわめて強く、両者は、ややその活力の程度を異にした。なお、茶樹根への適用は、TTC還元法がより有効と思われた。
チャのような木本植物では、根系が複雑であり、また個々の根の発達程度も異なっているので、生理的活力を調べるためには、あらかじめ発達程度のそろった根を得ることが必要であると考えられる。しかし、同一品種においては健全な白根のTTC還元力は、樹齢あるいは採取場所による差異は比較的少なかった。
湛水処理条件下の茶樹根の活力程度をTTC還元法を用いて測定した結果、湛水日数の経過とともに明らかな差異が認められ、本法の茶樹根への適用の可能性を確認した。
しかしながら、生理的活力を測定する方法は、厳密にはさまぎまな現制された条件のもとで成り立つものである。そして、このことは主に根の呼吸能を手がかりに組み立てられていることに由来する。しかも呼吸や養分吸収力と一般的な生理活力との間の平行関係は、常に成立するという証明は必ずしもない。そこで、この活力測定法は、いろいろな環境条件下にある根の活力を大まかにとらえようとするときに用いるならば、きわめて有効な手段になると言える。

11.梱包サイレージの密度に関する研究(第1報)梱包密度と品質および二次発酵の関係

坂本登・辻久郎

梱包サイレージの密度と材料水分と品質、さらに夏季取出しにおける二次発酵の関係について検討した。穂揃期と開花期のイタリアンライグラスを用い、いろいろな水分含量のものを、へイベーラで密度を変化させて梱包し、ビニールバッグサイロに貯蔵した。この梱包サイレージ53梱包について、諸形質を調査した結果、次のような結果を得た。

  1. 材料水分30~80%のものをへイベーラで梱包する場合、その乾物密度は40~200kg/m3であった。
  2. 材料水分が低くなると、乾物密度が高まり、品質が向上するが、開封後の二次発酵が早くなる。また、同じ材料水分のもので密度を高くすると、わずかながら二次発酵がおくれることが認められた。
  3. 梱包サイレージの品質に対する寄与率は、材料水分50%、サイレージ有機酸比率25%、梱包密度10%であった。

12.豚の間けつ給餌法に関する研究

杉沢義民・久松敬和・坂本登

肉豚の飼養規模が急速に拡大され、これに対応する省力管理技術が、豚舎構造、管理機械、器具を中心に検討開発されているが、給餌作業の省力化と、週休2日制にも応じ得られる管理技術の確立のため、肉豚の間けつ給餌法について、1973年から1975年の3か年間検討した。

  1. 間けつ給餌は、肉豚の発育に大きい影響を与えることを示した。すなわち、発育速度は、5区>1区>3区>2区>4区の順となった。
  2. 飼料の消費量は、4区を除きほとんど変らなかった。すなわち、飼料要求率は、3.44~3.56の範囲であり、一定体重の増加には、飼育日数の多少の長、短にかゝわらず飼料消費量ははとんど変らない。
  3. 間けつ給餌は、枝肉の諸形質にははとんど影響がなかった。
  4. 断餌日には、他の管理作業を一切行なわなくとも、その影響は認められなかったことから、5日または1週間に1回の断餌は発育に多少影響はあるにしても、計画的に休日を設ける管理方法は可能である。

13.カンザワハダニの交尾時間と次世代の出現性比との関係および交尾に関するニ、三の知見

谷浦啓一

カンザワハダニについて、交尾に関する実験と調査、観察を行い、次の結果を得た。

  1. 脱皮後15時間を経過していない処女雌成虫に活動力豊かな雄成虫を放すと、両者は出会い後30分間以内に1~数回交尾した。第1回目の交尾時間は約150秒で、第2回目以後の交尾時間は第1回目より短かった。両成虫の出会い後30分以内における延平均交尾時間は185.8秒であった。
  2. 交尾時間の長短は、次世代の出現性別に大きく影響し、交尾時間の短い程、次世代の雄の出現度合が高くなった。また、交尾後の産卵時期が遅くなるに従って次世代の雄の出現度合が高くなり、一度、雄卵ばかり産下された。翌日からは、決して雌卵は産下されなかった。
  3. 雌成虫が生涯にわたり雌卵を産下するのに必要な最低交尾時間は約120秒であった。しかし、十分交尾した雌成虫でも総産下卵の約1/3は雄卵を産下した。
  4. 交尾時間の長短は、産卵数、産卵日数、母虫の寿命および仔虫の発育所要日数へ影響を及ばさなかった。
  5. 雌雄成虫の交尾行動に関しては、雌成虫は受動的、雄成虫は能動的であった。産卵開始後の雌成虫の外観は、経時的に老化現象を呈した。

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