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平成21年01月27日

研究報告第11号

1.次亜塩素酸力ルシウムが水稲の生育に及ぼす影響

生杉佳弘

現地育苗センターで発生した水稲箱育苗稚苗の苗障害原因を究明するため、次亜塩素酸カルシウム溶液が水稲の生育に及ぼす影響と育苗箱資材の含水量について検討し、苗障害の発生機作を推察した。

  1. 次亜塩素酸カルシウム溶液中における水稲種子の発芽率は、50倍液中で70%、100倍液中では90%であった。しかし、発芽後の生育抑制は顕著で、1500倍液中でも根長と冠根数は50%抑制され、草丈は20%抑制された。
  2. 箱育苗においては、育苗箱底板に含まれる有効塩素量100mg/箱で生育抑制がみられ、300~600mg/箱で草丈が50%抑制された。
  3. 育苗箱の吸水量は、材質の違いにより異なり、松材は杉材の2.4倍量吸水した。
  4. 以上の結果から、現地育苗センターにおいて発生した苗障害は、育苗箱の松材部分に100mg/箱以上の塩素が含まれていたため生じた苗障害であると推察できる。

2.青島温州の果実の均質化に関する研究 第1報園地条件および着果条件が果実品質に及ぼす影響

渋谷久治・中村紀久男・前川哲男・堀江宏嘉

青島温州の優ぐれた特性を最大限に生かし、より均質的な果実を安定して生産するために、本県の中南勢の貯蔵ミカン産地の青島温州園と農技センター圃場の青島温州を用いて、園地条件および着果条件が果実品質に及ぼす影響について検討を行こなった。

  1. 地形条件としては、日照量の多い東面および南面傾斜園と、日照量も多く土壌が乾燥しやすいと考えられる台地のものが、北面傾斜や水田転換園に比らべて糖度が高く品質が良好であった。土壌条件としては、洪積層土壌が最も糖度が高く品質もすぐれていたが、水田転換土壌や黒ボク土壌のものは品質が劣った。花崗岩土壌のものは、これらの中間であり、外観は良好であるが糖分の変動が大きく、淡白な味のものが多かった。
  2. 園地条件と果実の貯蔵性については、地形的には北面傾斜園の果実が、土壌的には花崗岩土壌と洪積層の埴壌土の果実が貯蔵力がやや劣ったが、全体としては大差はなく、青島温州の貯蔵性はすぐれたものであった。また、園地条件によって貯蔵中に減酸の早いものと、遅いものとがあり、早いものでは3月上旬、遅いもので3月下旬に食味上の出荷限界に達した。
  3. 1樹当りの着果量の多少が果実品質に及ぼす影響は極めて大きく、着果量が多いほど糖度が高くクエン酸が減少して糖酸比が高くなり、着色も良好となる。また、果実の大果割合は、着果が多いほど少なくなるが、他の系統に比べると、なお大果割合は極めて高い。
  4. 着果条件と果実品質について、結果側枝の角度との関係では、水平枝に着果した果実が品質が優ぐれ、結果枝の長さとの関係では、水平枝や下向枝では中程度の長さのものがよく、上向枝は長い結果枝に着果したものが良好であった。果梗枝の太さと品質との関係では、細い果梗枝のものがすぐれ、有葉果と直花果とではその品質に大差は認められなかった。

3.気象条件がカンキツの生育および真実に及ぼす影響

田端市郎

  1. 宮川早生温州・普通温州・川野ナツダイダイの開花期と3~4月の気温との関係を1951年から、76年の間について調査した結果、平均気温が11.1℃となる3月下旬から、平均気温が14.4℃となる4月中旬までの気温との関係が高く、上記期間の旬別平均値の累積38.5℃±4.6℃を基準として開花期の予測が可能であった。
  2. 早生温州の露地栽培と加温ハウス栽培における発芽ならびに開花に要する温度を比較したところ、発芽に要する平均気温は露地の12.5℃に対し、ハウスでは16℃以上の温度が必要であった。
    また開花始期までの全期間では、露地では平均温度14.4℃で54日であったが、加温ハウス栽培での平均気温は17℃内外で所要日数は12月中旬の早期に開始したものは66日、1月下旬開始で40日内外であった。
  3. 早生温州ミカンの10月1日現在における果汁成分と7~9月気象要因との関係を調査すると8月の降水量が多い年にクエン酸含量が低く、9月の降水量が少ない年に糖度が高かった。またクエン酸含量は開花期が早い年にクエン酸含量が低い関係にあることが認められた。

4.ブドウ園におけるスリップス類の発生消長とその調査方法に関する研究

西澤勇男

  1. 1977~1981年にわたり、ブドウ(巨峰)園でのスリップス類の種類、発生状況およびその調査法につき、調査研究をおこなった。
  2. ブドウ園におけるスリップス類は、チャノキイロアザミウマ、ビワハナアザミウマ、キイロハナアザミウマほか4種であった。
  3. 年間捕虫数の種類別割合からみると、チャノキイロアザミウマが、約90%であり、本種が優占種と考えられる。
  4. 時期別捕虫数は、開花期~幼果期に第1ピーク、果粒肥大期~収穫期に最大のピークとなり、9月中旬に第3のピークを形成した。
  5. 吸引法での捕虫状況が、ブドウの穂軸での被害様相と一致し、付着法がこれに次いだ。たたき法では、調査坂上でのバラツキがやや多かった。
  6. 吸引法、たたき法ともに、調査板の1/2~1/4の部分調査による調査作業の簡易化が可能と思われる。

5.暗渠排水における地下水位低下と排水時間に関する研究

磯島義一

  1. 転換畑現地に暗渠を埋設して、地下水位及び排水される流量Qを観測すれば
    Y=√(2QX/KZ0)(4)
    Z0:暗渠の長さcm
    K:滲透係数cm/S
    Y:位置Xにおける、暗渠より地下水面までの高さcm
    (4)式より滲透係数Kを求めることができる。滲透係数Kを求めることにより、以下に述べる重力水のポケットの大きき及び、暗渠排水時間と暗渠の間隔の問題を解く助けとなる。
  2. 1における観測を継続して行えば、地下水位の変化及び暗渠排水量を知ることができる。その結果重力水が土壌の中にどの程度入ることができるか、重力水のポケットを知ることができる。
  3. 地下水がH0からHiまで低下するとき、低下に要する時間Tは次のように表わすことができる。
    T=(2√2)/3×αK-1/2Z1月2日L3月2日(√(1/Qi)-√(1/Q0))(9)
    α:重力水の入るポケットの割合%
    K:参透係数cm/S
    Z0:暗渠の長きcm
    L:暗渠の間隔の半分の長さcm
    Q0:暗渠から地下水面までの深さがH0cmのとき、暗渠から排水される流量cm3/S
    Qi:暗渠から地下水面までの深さがHiに下ったとき暗渠から排水される流量cm3/S
    降雨後地下水は上昇するのが常である。地下水が降雨後1週間で50cm以下に低下すれば、作物に害がないならば、暗渠の間隔(2L)はどうしたらよいか(9)式が答えてくれる。
  4. 同じ土度で、暗渠の間隔を7.5mから10mに広げると(1.3倍)排水日数は1.5倍にのびる。間隔を10mから・15mに広げると(1.5倍)排水日数は1.7倍にのびるであろう。
  5. 滲透係数が10-5cm/Sのように小さくなると、暗渠排水時間は非常に長くなる。従ってこのような土壌は本暗渠の他に、営農管理として耕転時に弾丸暗渠を施工して、弾丸の前にある刃で土壌をカットして、雨水の鉛直滲透及び土壌構造の発達を促進させると共に、稲わらや麦わら等の副産物を細断して、それを土壌に還元して、土壌微生物の力を借りて土壌の団粒化をはかり、通気性及び透水性のよい土づくりをすることが大切である。

6.三重県の農耕地土壌に関する研究(第2報)土壌の生産力特性と主成分分析法の適用について

米野泰滋・安田典夫・石川裕一・戸田鉱一・大森螢一

三重県の農耕地土壌の生産力特性を明らかにするため、生産力可能性分級を行うとともに、主成分分析法を用いて、理化学性との関連を検討した。

  1. 農耕地土壌を、生産力可能性分級基準によって分類すると、全農耕地のうち、生産力可能性等級がI等級のものはなく、II等級が68%、残り32%が不良土壌とされるIII、IV等級である。
    地目別には、水田はII等級が76%と高く、普通畑は47%、樹園地は23%で、畑地土壌は水田に比較して、不良土壌の占める割合がはるかに高い。
  2. 土壌の生産力阻害要因としては、水田は酸化還元牲、感水透水性など、普通畑、樹園地は自然肥沃度、耕転の難易、土地の乾、傾斜、浸食などがあげられ、水田にくらべ化学性不良で、物理性も重粘、過干と劣る土壌が多い。
  3. 土壌の理化学性を、主成分分析法によって解析すると、水田、畑土壌とも、主成分は、塩基置換容量、燐酸吸収係数、T-C、シルト、粘土、粗砂、塩基状態、三相分布などが大きく寄与している。自然肥沃度、養分の豊否、さらに畑土壌では、物理性に関与する三つの因子に要約される。土壌の生産力は、主とレてこの因子によって規定されるが、これらを特徴づける要因として、特に腐植(T-C)が大きく関与している。
    土壌の種類別に、主成分値を座標軸上にプロットすると、土壌統ではもちろん、土壌群の場合であっても、多数の分析項目が集約されて、それぞれの土壌の特徴が表示された。
  4. 生産力可能性分級では、分級項目相互間の関連性が明らかでないが、主成分分析によって、その特徴を明らかにさせ、土壌の特徴をより一層明確にとらえることが出来た。
    土壌調査結果のとりまとめにあたって、主成分分析法の適用は、適切な手法といえる。

7.ビニール簡易乾燥ハウスを利用した乾草調製

坂本登・辻久郎・田中正美

ビニール簡易乾燥ハウスを用いて、イタリアンライグラス、ローズグラス、ヒエ、スーダングラスを種々の条件のもとで乾草調製を実施し、次のような結果を得た。

  1. 良質乾草を調製するための材料草は、冬作物ではイタリアンライグラスが、夏作物ではローズグラスが適当である。刈取をフレール型のフォーレージハーベスタで行えば、茎の太いものでも乾き易くなるのでスーダングラスでも乾草調製が可能である。
  2. 晴天の日の日中にはハウス内部は外気温より15~25℃高く、湿度は約25%低くなる。イタリアンライダラスでは高温多照の5月下旬~6月が最も能率が良く12月が最も劣る。ローズグラスやスーダングラスは8月より湿度の低い10月の方が能率が高い。
  3. 積込方法は、奥の方に材料草を多く積込み、入口の方を少なくする傾斜積にすると乾燥能率が高い。
  4. 早春や初冬の低温時には、ハウス内の温度が上昇しにくいので、断続通風すると6~7℃高くなる。また乾燥初期の夜間や雨天日の材料草の発熱防止には1時間に15分だけの通風で効果がある。
  5. 乾草1kgの生産費は、材料草の生産費を含めて約40円であった。

8.性別を基礎とした肉豚の栄養水準に関する研究

久松敬和・和田健一

肉豚の飼養は、去勢、雌豚の混飼のため発育や肉量、肉質にバラツキが生じ易いことから品質および規格のそろった肉豚を出荷すべく、また性別の特性を十分活用した飼養管理技術を確立するため本試験を実施し、それぞれに最も適合する栄養水準の解明について検討した。試験の対象とした栄養水準は、DCP10.5%、13.0%、15.5%およぴTDN66%、70%、74%であって、これらの組合せによる栄養水準が豚の発育、飼料の利用性、消化性、枝肉、肉質に及ばす影響を性別に究明し、更に季節および経済性等について検討した。

  1. 発育はDCP水準により変化せず、TDN水準では去勢豚の場合は、70%、74%、66%の順に遅くなり、雌豚の場合は、66%と70%は同じで、74%はやや遅れた。これは、1日1頭当たり飼料摂取量とほぼ対応していた。
  2. 飼料の利用性をあらわす飼料要求率は、DCP水準においてほとんど差は認められず、DCP要求率については、DCP水準が高くなるにつれて劣った。
    またTDN水準については、TDN水準が高くなるに従って飼料要求率は改善された。
  3. 発育精度は、去勢、雌豚の混飼よりは、別飼の方がすぐれていた。
  4. 飼料の消化率は、DCP水準において、粗繊維のみがDCP水準が高くなるに従って高くなった。またTDN水準については、TDN水準が高くなるに従って飼料の一般成分全般(有機物)の消化率は向上した。性別では雌豚は、去勢に比較し、全般に消化率はすぐれる傾向を示した。
  5. DCP水準の枝肉に及ばす影響は、小さかっだが15.5%区のロース・バラの割合は、10.5%、13%区に比較し少なく、ハムの割合が高くなった。
    TDN水準は、高くなるに従ってロース・バラの割合は増加し、ハムの割合は低下し、背脂肪の厚さ(平均)は0.1cmづつ増加して、枝肉審査得点は減少した。
  6. 肉質に対するDCP水準は、雌豚において、肉色(PCS)は15.5%区が濃く、伸展率、内包(L値)は、10.5%がすぐれた。
    またTDN水準の影響については、肉色(PCS、L値)、保水力(加増:雌豚のみ)、伸展率は、TDN水準の低い場合にすぐれたが、肉色(a値)のみが、74%水準が良く、赤味が濃くなった。
    脂肪の融点は腎臓脂肪、皮下内層脂肪ともTDN70%水準の場合に高くなった。
  7. 夏期と冬期では、冬期が夏期よりも発育は速く、ロース断面積は大きく、ハムの割合は高く、背脂肪の厚さは薄くて、枝肉はすぐれていた。肉色(PCS)、保水力(加塩)、伸展率、肉色(L値、a値)など肉質の諸形質も冬期がすぐれていた。脂肪の融点は、腎臓、皮下脂肪とも冬期に低下した。
  8. 雌豚は、去勢豚に比較して発育は遅いが、背腰長(II)は長く、ロース断面積な大きく、ハムの割合は高く、脂肪の厚さは薄く、枝肉審査得点は高く、良い枝肉となり、肉色についても雌豚の場合L値、a値は良い値を示したが、皮下内層脂肪の融点は低くなった。
  9. 1日1頭当たりの粗利益は、去勢豚ではDCP水準の低い、TDN水準の高い飼料による場合に多く、雌豚ではDCP13%区が多く、TDN70%、74%区とも同じとなった。しかし、2因子交互作用でみると、夏期は、去勢、雌豚ともTDN74%の水準が1日1頭当たりの粗利益は多く、冬期では70%の水準によると粗利益が多くなる結果となった。

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