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平成21年01月27日

研究報告第12号

1.ライスセンターにおける直熱式籾穀熱風発生装置の利用に関する調査研究

田中正美

  1. 直熱式籾穀熱風発生装置(WHB-300D型)と竪型流下式連続乾燥機(SDR1404型)について、籾殻の供給量が籾殻燃焼性能に及ぼす影響、熱風温度が籾・小麦の乾燥性能に及ばす影響、籾殻熱風発生装置の熱効率・温度調筋性能及び装置の経済性について検討した。
  2. 直熱式籾穀熱風発生装置の籾穀燃焼量(120~300kg/h)が増すにしたがってダスト濃度(0・002~0.112g/m3N)は増加したが、いずれも規制値以内であり、燃焼ガスは無色・無臭であった。また、硫黄酸化物濃度は1~25ppm、窒素酸化物濃度は57~76ppmであった。
  3. 直熱式籾殻熱風発生装置利用の竪型流下式連続乾燥機(乾燥機通過時間20分)における原料籾の水分(22~15.3%)・熱風温度(52~45.5℃)と乾燥性能は、乾燥機1回通過の乾減水分が2.4~1.0%で胴割れの増加は0.07~0.33%であった。また、籾・玄米には着色・臭がなく品質の低下は認められなかった。
  4. 直熱式籾殻熱風発生装置利用の竪型流下式連続乾燥機について、熱風温度(70・65・55℃)と小麦の乾燥性能については、仕上げ乾燥における乾燥機1回通過の乾減水分は1.3%・0.9%・0.6%で熱風温度の低下に従って減少した。各熱風温度における乾燥小麦は臭・着色・しわが認められなかった。また、仕上げ乾燥時は、熱風温度65~70℃にしても製粉特性の低下は殆どなかった。
  5. 直熱式籾穀熱風発生装置の熱利用率は、籾殻の発熱量を3,400kcal/kgのとき85.32%を示し、その熱効率はこの値以上であると推定される。また、この籾殻熱風発生装置の消費電力は、21.9~23.0kwhであった。
  6. 籾殻熱風発生装置の温度調節性能については、1日の室温差が8.5℃の条件下の設定温度と実際の熱風温度との差は、0.5℃以内であった。
  7. 燃渣の発生率は籾殻量の12.2%で、容積量は、153.3kg/m3、PHは9.6~10.5であった。全加里は0.8%余、可溶性珪酸は0.84~1.09%であり籾穀供給量が増加するに従って増加した。また全窒素は0.05%、全燐酸は0.12~0.17%であった。
  8. 籾殻庫からの籾穀排出時の流量係数は78.9~89.8%であり、また籾殻定量供給機の籾穀繰出し効率は94~97%であった。
  9. 施設の利用実績は、精玄米については昭和56年が530,667kg・57年が650,375kg、精麦量は57年が304,245kgであり、直熱式籾殻熱風が製品に及ぼす悪影響は全く認められなかった。乾燥に利用した製品60kg当りの籾穀量は、原料水分及び乾燥時の温湿度により異なり、昭和56年の籾が4.63kg・57年の籾が2.97kg・麦が5.68kgであった。
  10. 施設の経済性、製品60kcal当たり荷受け乾燥調製の消費電力量は、米が6.55kwh・小麦が5・66kwh、同消費電力費は米が231円・小麦が213.5円であった。また、製品60kg当たり荷受け・乾燥調製・包装入庫までの延労働時間は、籾が0.45時間・小麦が0.33時間であった。
    原料の水分が籾24%、小麦が平年並の32%であれば、前記の処理量における直熱式籾殻熱風発生装置の利用経費は、灯油バーナー利用経費より158.8千円~621.7千円の減少となった。

2.カキ“次郎"における汚れ果の実態と防止について

渋谷久治・堀江宏嘉

次郎の主産地である多気町において、汚れ果の実態調査と薬剤による防止対策試験を実施し、汚れ果発生の実態を明らかにするとともに、薬剤による防止対策について検討した。

  1. 園地条件と汚れ果の発生を成川と矢田の両地区において調査した結果、黒点状汚損果とスリップス類による被害果が大半をしめ、黒点状汚損果は平地の密植成木園や谷間の水田転換圃に多く、東南に面した傾斜園や、樹間距離の広い中木園での発生が少なかった。またスリッブス類の被害果は、茶樹の植栽と関係が高く、茶樹の間作園や近接園に発生が多かった。
  2. 選果場の実態は、等級による差が大きく品等が下がるに従って汚れ果は増加し、発生度で秀品16.8、優品36.1、良品65.7であり、汚れ果が品等に及ぼす影響は極めて大きかった。
  3. 汚れ果を類型別に見ると、圃場調査ではスリップス類の被害果と黒点状汚損果が大半をしめていたが、それ以外にスス点、破線状、雲形状のものが見られ、中でもスス点状のものが目立った。黒点状汚損果の中では、病原菌によると考えられる隆起型黒点が最も多く66%をしめた。
    選果場の調査では、各種の汚れ果がほぼ同程度に発生し、特に雲形状とズス点が目立った。
  4. 薬剤による防止効果については、スリップス類に対しては、オルトラン水和剤、パダン水溶剤の効果がすぐれていた。
    総合防除効果は、慣行区に対していずれの区も顕著な効果が認められ、スリップス類に対するパダン水溶剤、病原菌によると考えられる黒点に対する殺菌剤、破線状汚れに対するクレフノン剤等、それぞれの効果が総合的に発揮されたものと考えられた。しかし、スス点に対しては効果が明らかでなく、今後の問題点として残った。
  5. 以上の結果から、次郎の汚れ果は、黒点型汚損果とスリップス被害果が大半をしめており、破線状、雲形伏のものは少ない傾向であった。このことは富有と若干異なる点であり、次郎の果実の形態的特性と花弁の脱落性とに関係があると考えられた。したがって薬剤による防止試験においても、スリップス類の防除と黒点型汚損果の防止に重点をおいた。
    なお、汚れ果の防止を効果的に行なうためには、園地の環境整備を前提とした栽培技術の改善を行なうことが重要と考えられる。

3.ナシ黒星病菌(Venturia nashicola)のチオファネートメチル耐性に関する研究 第1報 三重県におけるチオファネートメチル耐性ナシ黒星病菌の分布と耐性菌占有率の経年推移

富川章・長江春季

  1. 1975年、ナシ黒星病が多発生し、その原因の一つとして、県内の一部ナシ産地からTM剤耐性菌の存在が確認された。そこで、1975~76年、1979~82年に、県内主要ナシ栽培地城で同剤耐性菌の分布を調べたところ、ほとんどの園地で強度耐性菌が高率に存在していた。
  2. TM剤強度耐性菌占有率の高い圃場における耐性菌占有率の経年推移を調査するにあたり、同一病斑上に形成された分生胞子間における薬剤耐性程度の検討をしたところ、耐性程度に変異は認められず、1病斑上から1個の分生胞子を検定することにより、その病斑のすべてを代表できると考えられた。
  3. 調査対象園でサンプリング方法を検討したところ、このような強度耐性菌占有率が高い園では、各任意の1樹から51葉、5樹から各10葉、10樹から各5葉を採取し検定するいずれの方法でも概略同様の結果であった。しかし、一般的には、10樹から各5葉を採取し得た菌株について検定することが実態に即していると思われた。
  4. TM剤強度耐性菌占有率が高い園で、当該薬剤の使用を休止し7~8年間経過したが、同剤耐性灰色かび病菌、カスガマイシン耐性イネいもち病菌の例とは異なり、耐性菌占有率は低下せず、耐性程度に変化はみられなかった。TM剤の効果が回復するか否か、その時期については、さらに時間的経過を追って検討する必要があると考えられる。

4.ミシマサイコ(薬用植物)の発芽に関する研究

豊冨康弘・田中一久

  1. ミシマサイコの種子の発芽を高め、発芽日数を早める発芽促進について、種子の充実度、ジベレリン処理、温度(低湿、高温)処理および種子の貯蔵性を検討した。
  2. ジベレリン処理は、充実の悪い種子で、発芽勢を高め、発芽日数を10~15日早める効果のあることがわかった。しかし、充実した種子は、種子自身の発芽力が強く、ジベレリンの効果は認められなかった。
  3. 催芽処理は、低温(5℃)で、3~4週間処理が発芽率を高め、著しく発芽日数を短縮し、発芽促進に効果高く、実用性は高いと思われる。
  4. 種子の充実度は、千粒重が2.0g以上あると発芽率を高め、1℃冷蔵貯蔵で、1年間はあまり発芽率が低下しないことがわかった。

5.暗渠排水におlナる地下水位低下と排水時間に関する研究 第2報暗渠が透水層の中間に設けられる場合

磯島義一

  1. 透水層の中間に暗渠を設けた場合、降雨後上昇した地下水が、目標の高さまで低下するに要する時間を推定する関係式を作成した。その一例として透水層が60cmの場合と120cmの場合、低下日数を比較した。

6.三重県の農耕地土壌に関する研究(第3報)土壌の物理性、特に水分特性について

米野泰滋・安田典夫・石川裕一・戸田鉱一・大森螢一

三重県の農耕地土壌の物理性、特に水分特性について検討を行った。

  1. 土壌の種類別の物理性について、三相分布は黒ボク土は固相、仮比重が小さく、液相が大きい。赤黄色土は固相、特に次層土の固相が大きく、気相は最も小さい。水田土壌は畑土壌にくらべ、液相が大きく、次層土の固相が概しく大で、気相は極めて小さい。
    透水係数は、砂丘未熟土が最も大きく、次いで、黒ボク土、褐色低地土、赤黄色土の順である。また、水田は畑より、次層土は作土より小さい傾向を示した。
    保水力は、黒ボク土が最も大きく、次いで褐色低地土で、砂丘未熟土、赤黄色土はいずれも保水力は小さい。
  2. 土壌の物理性の相互関係について、有効水分は、気相、孔隙率、腐植と正の相関、硬度、仮比重、固相と負の相関が認められた。飽和透水係数は、作土では相関はないが、次層土は有効水分と同様の傾向が認められた。また液層は、作土はシルトと正の相関、気相、粗砂有効水分と負の相関があり、次層土は腐植、シルトと正の相関、仮比重、気相、粗砂と負の相関が認められた。
  3. 土壌の物理性について主成分分析を行い、土壌の種類別に主成分値をプロットすると、水田土壌は概して固相、仮比重、粗砂の高い方へ分布し、畑土壌は、孔瞭率、腐植、有効水分の高い方に分布し、水田と畑が明らかに区分された。
  4. 土壌の水分特性、なかでも保水性、透水性については、粒径組成、腐植含量およびこれらと関連する孔隙量、仮比重、ひいては土壌構造等、当然のことながら土壌の物理性の諸要因相互の間に、密接な関連が認められた。ただ、保水性、透水性等の測定は、土壌全体を考慮したものではなく、今後は圃場全体を対象とした総合的な調査方法の検討が必要である。

7.グレインソルガムのホールクロツフサイレージに関する研究 原料部位別のサイレージ調製と品質

西川哲

  1. グレインソルガムのホールクロップサイレージの利用を目的として、1973年から4カ年間サイレージ供試用グレインソルガムを栽培したが、従来のホールクロップサイレージの収穫適期とされている、乳熟期、糊熟期より生育ステージを進め、糊・黄熟期、黄熟期で収穫した材料とした。
  2. フレイル型フォーレハーベスタによる収穫の他に、バインダ等で刈取り、脱穀機で生脱穀後に、穀実部、茎葉部細断、脱穀機2番口等の原料部位別のサイレージ調製を加えて試験を行った。
  3. サイレージの発酵品質ではフレイル型フォーレージハーベスタによる収穫材料は、穀実脱粒飛散ロスがあって問題があるが、サイレージ発酵は常に高位の品質で優れた。カッタ細断ホールクロップ、カッタ細断茎葉、穀実部位等原料部位別サイレージの場合、乳酸発酵がやゝ劣ったが、品質は全般に安定して良かった。
  4. 当試験に供した3カ年間延6品種の平均、10a当たりTDN収量は、試算により979kgで、うち穀実部分が412kgと42%に当たり、今後穀実のロスを少なくする収穫機械が必要であると考えられた。
  5. 原材料部位別サイレージで比較すると、穀実が茎葉に対してNFEが4.25倍、粗蛋白質が3.12倍、粗脂肪が3.3倍と多く、黄熟期収穫では特に穀実にTDN栄養分が移行していることがうかがえる。ただ黄熟期では穀実が未消化排出する率が高く、現段階では糊熟期収穫のホールクロップサイレージが適正と考えられる。
  6. ホールクロップサイレージの嗜好性は、乳牛で良かったが、グレインサイレージの粉砕したものは、嗜好性は悪かった。

8.サイレージ多給による乳用種去勢肥育に対するサリノマイシンの添加効果

鈴木波太夫・山田陽稔・脇田正彰・小林泰男・星野貞夫

生後350日齢、体重410kgの・菶p種去勢牛8頭を用い、イタリアンライグラスサイレージを多給する条件下(濃厚飼料とサイレージの比はおおむね40:60)でポリエーテル系抗生物質であるサリノマイシンを1日1頭当たり100mg濃厚飼料に混合給与し、増体、飼料摂取量、飼料効率、第一胃内容物について調査した。
その結果、サリノマイシンは、増体に対する効果は認められなかったが、サイレージの摂取量はサリノマイシン添加により約20%減少し、飼料要求率も改善の傾向がみられた。第一胃における総VFA濃度は有意に低くなったが、これは酢酸の減少によるものであった。A/P比は無添加に比べ常に低く推移し、その効果が認められた。
又、プロトゾア数についても、サリノマイシン添加により明らかに減少した。しかし、PH、NH3-Nについては明らかな差は認められなかった。

9.無去勢豚の肥育及び屠体形質に関する研究

和田健一・久松敬和

無去勢豚の発育と、屠体形質、脂肪質について検討した。その結果は次のとおりとなった。

  1. 無去勢豚は、去勢豚に比べ発育が良く、飼料の利用性に優れた。
  2. 無去勢豚を肥育する場合、栄養水準の高い飼料は必要なく、TDN70%程度が適当であると考えられた。
  3. 枝肉歩留りはやゝ低くなるが、屠体重当りの飼料要求率でも、去勢と比べ6%改善された。
  4. 背腰長II、カタ割合が無去勢で大となり、背脂肪の厚さについては薄くなるため、赤肉量が多くなった。
  5. 枝肉得点では、無去勢豚が2点高く、当部における格付けは、1ランク上となった。
  6. 肉質における保水力、伸展率に差はなかった。
  7. 脂肪質は、無去勢豚でやや、斬らかくなるものの軟脂とみなされるような個体は見られなかった。
  8. 生体重110kg程度では、雄臭の識別はできなかった。

10.三重県における集団的土地利用の形成過程と土地利用組織

小河内一司・伊達一郎

土地利用の集団化は、水利秩序に規制された水田利用の慣行を打破し、田畑輪換利用を実現するための基本的な要件である。当然水田利用を調整する組織体制を必要とすることになる。したがって合理的な調整組織の成立条件をあきらかにすることは重要な課題となる。調整の範囲は集落或いは旧村など都市化、土地改良状況、水利条件によりことなるが、水系または属地性によって土地利用単位の一定規模が設定されるべきであり、調整組織が適切に活動しうる範囲を設定することになろう。また飼料作物、畑作物の作付けと水稲作とのローテーションあるいは田畑輪換利用など調整方法の条件が課題となる。さらに、選択作物が野菜など集約作物である場合、水稲作農家との間に互に生産力をおかさない共通的な耕地条件を設定する必要が生じる。
生産については、生産者がそれぞれ土地利用の調整組織によって決められた条件にそって生産を行うことになる。しかし一方、利用条件に規制されて生産の不可能な農家については、生産を担当する担い手組織の形成(育成)が必須の要件となってくる。この担い手農家群の組織化にあたっての組織形態の選択は、共同利用・部分・全面受委託、賃作業、賃貸借など、生産集落の農家条件生産性の程度によって選択されなければならない。その活動範囲についても、集落内外にわたる選択は、地域の農家条件によって異なることになる。なお、生産技術の問題は、麦・大豆の安定多収技術の平準化が急がれること、加えて、集団条件として地力維持保全対策と、水稲~畑作の作付方式の合理的なあり方が課題としてあげられる。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 農業研究所 〒515-2316 
松阪市嬉野川北町530
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