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平成21年01月27日

研究報告第17号

1.麦跡水稲栽培の中苗育苗における緩効性窒素肥料の利用

北野順一・生杉佳弘

麦跡水稲の中苗育苗における追肥作業の省略と健苗の育成技術を確立するため、数種の綬効性窒素肥料を供試し、その肥効と苗形質への影響を検討した。また、移植時の苗形質と発根力および本田初期生育との関係および中苗の目標苗形質について若干の考察を加えた。

  1. 折衷苗代による中苗育苗では、被覆尿素が最も緩やかな肥効を示し、次いで被覆燐硝安加里、ウレアホルム、IB、硫安の順であった。また、CDUは極端に初期の肥効が劣った。
  2. 中苗の基肥としては被覆尿素の100日タイプが適し、1箱当り窒素成分量7gを基肥施用することで追肥作業が省略でき、窒素含有率が高く発根力の優れた健苗を育成することができた。
  3. 中苗の発根力および本田初期茎数は、草丈20cm以下では窒素含百率および窒素含有量と高い正の相関が認められた。充実度と発根力および本田初期茎数の関係は窒素含有率のレベルによって異なり、窒素含有率が2.1~4.1%の範囲では正の相関が、1.2~1.9%の範囲では負の相関が認められた。
  4. 折衷苗代育苗による中苗の移植時適窒素含有率は2.5~3.0%と考えられた。

2.ニホンナシの生育予測法の策定と着果管理および収穫適期判定法の確立

前川哲男・服部吉男・小林昇

ニホンナシの簡易被覆栽培樹と露地栽培樹を用いて、気象条件や被覆栽培の管理条件と摘果時期および着荷量を加味してナシの開花期、果実肥大、果実成熟期の予測法を策定して、その予測に基づいた露地および簡易被覆栽培の技術体系の組み立てを検討したものである。

  1. 開花前の気象条件と生物季節を用いた幸水と豊水の開花予測式(重回帰式)が作成できた。開花始日は、両品種とも幸水は2~3月の平均気温を、満開日も同様であるが、豊水は前年の10月上旬の平均気温を用いたほうが精度が高まった。予測日との誤差は、豊水のほうが幸水より大きかった。
  2. アレニウスの法則理論に基づいたDTS曲線利用による開花日の予測は、予測日以降の気象条件を加味できてより精度の高い予測となった。
  3. ニホンナシの自発休眠の時期は、品種と年により異なり幸水と長十郎は、9月下旬頃から1月上旬頃まで、豊水は10月上旬頃から12月下旬頃までであり、豊水の自発休眠期間が短かった。
  4. 自発休眠完了のための低温要求時間は、7.5℃以下の時間総計が500時間であった。
  5. 簡易被覆栽培の被覆除去時期を早めて満開後10日にすると、果実肥大および熟期促進効果は少なくて不安定であった。
  6. 簡易被覆栽培の摘果時期は、果実良否の判断が可能な限り早いはうが大果になり収量増になった。
  7. 満開後の気象条件等を用いて幸水と豊水の果実肥大(収穫果重)予測式(重回帰式)が作成できた。
  8. 豊水のみつ症の発生は、満開後110日間の少日照条件やジベレリンペースト処理で多発した。この関係を用いて、みつ症発生の予測式が作成できた。
  9. 満開後の気象条件等を用いて幸水と豊水の果実成熟予測式(重回帰式)が作成できた。
  10. これらの予測式の策定により、開花日の予測からは、受粉・摘蕾作業や雇用労力の準備が計画的にでき、果実肥大と収穫始め日の予測から、出荷計画と収穫準備がより正確にできるようになった。

3.土壌条件がサツキの生育に及ぼす影響(第2報)土壌の理化学性および生物性の実態

安田典夫・山本敏夫・中野直・山部十三生

サツキ栽培圃場における土壌管理および土壌の実態と生育との関係について調査し、次の結果を得た。

  1. 土壌は厚層多腐植質黒ボク土、表層多腐植質黒ボク土、表層腐植質黒ボク土に分類された。
  2. 耕種状祝のうち、サツキの作付年数は1~30年(平均6.4年)と長い圃場が多くみられた。有機物は鶏ふん施用が多く、ついで牛ふん、稲ワラ等の施用が多かった。肥料はとくに窒素の施用割合が高かった。
  3. 土壌の化学性のうち、pHは全体に低く強酸性の圃場が多かった。サツキの生育との関係についてはpHが4.5~5.5の範囲の圃場が良好であった。
  4. 土壌の物理性のうち、有効水分の多い圃場はサツキの生育が良好であった。また、転換畑では下層の固相率やち密度の高い圃場は生育不良であった。
  5. 土壌の生物性のうち、微生物数については生育の良否との関係は明らかではなかった。一方、サツキの根を加害するイシュクセンチュウは連作圃場でかなり多く検出きれた。

4.土壌情報のシステム化に関する研究(第2報)土壌断面および物理性データのパソコン処理

安田典夫

土壌情報のシステム化の一環として、パソコン利用による土壌断面表と柱状図の作成および三相分布、PF一水分曲線作成のプログラムの開発を行った。
土壌断面表の作成はこれまで現地で記載した調査票の整理に多大の時間を費やしてきたが、このシステムを用いることにより、極めて迅速に処理でき、報告書等の作成に有効であった。また、この断面表をもとに土壌の構造を柱状図で図示できる。
土壌の三相分布pF一水分曲線作成については、パソコンを用いることにより、各種計算が迅速になり、三相分布図やpF一水分曲線図も描くことができる。
以上のプログラムの開発により、現地調査から測定および処理時間が大幅に短縮され診断と適確な土壌管理対策が指示できるものと期待される。また、これらのデータはすべてランダムファイルで作成されており、膨大なデータの中から極めて迅速に検索が可能である。今後、より精度の高い土壌診断システムを確立するため、圃場管理システムの開発が必要である。

5.無臭化微生物による家畜排泄物の処理に関する研究(第1報)無臭化微生物の脱臭能力の検討

原正之・広瀬和久・太田欽幸

  1. 豚糞に無臭化種コンポストを10%〔W/W)添加し、もみ殻で水分を60%に調整し、空隙度を2.5にして堆積すると、従来の方法にくらべ短時間で品温が上昇し、悪臭がなくなった。
  2. 無臭化の過程で豚糞のpHは6.3から9.0に、品温は30℃から72℃に上昇し、水分は12%の減少が見られ、堆肥のアンモニア量とアンモニアガス発生量が増加した。
  3. 無臭化微生物により腐熟化が早く進むことが2種類のクロマト法により確認され、堆肥温度の上昇時間の差以上に腐熟度の差の方が大きいことが推察された。
  4. コマツナ植害試験では、堆積直後区において見られた強い生育阻害および発芽阻害は、無臭化区ではかなり回復し、特に生体重指数は化成肥料区を上回ったが、対照区は堆積直後区とほぼ同等であり、回復ほ見られなかった。

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