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研究報告第18号

1.土壌情報のシステム化に関する研究(第3報)土壌診断における圃場管理システム

安田典夫

土壌診断における圃場管理システムを開発した。本システムは土壌診断を実施した地点の圃場条件や作物の栽培管理状況をデータファイルとして保存する。圃場図は各圃場の境界が識別できる市町村または集落単位の1万分の1以上の地形図を用い、イメージスキャナによりパソコンに入力して画像ファイルとする。調査地点の位置はパソコン画面の圃場図上でXY座標により決定され、必要に応じて地点や属性データの検索が可能である。圃場図は一筆毎に精密土壌図の作成や栽培管理状況のクラス別表示および面積集計ができる。また、土壌診断システムで作成した土壌断面や土壌の理化学性データファイルから圃場図に表示することが可能である。本システムは現地における土壌調査結果の解析に適用し、各種対策図を用いて迅速に指導できたところから、有効性が確かめられた。以上のことから、本システムの活用により、普及所等指導機関における土壌診断の支援システムとして有効であると思われた。

2.無窓鶏舎におけるブロイラーの間歇照明に関する研究

水野隆夫・西口茂・矢下祐二

ブロイラーは、大屋生産方式であるため1羽当たりの生産性向上、生産費低減を若干でも実現できたならば、経営体にとって年間では大きな収益増をもたらすことができる。そうした意味から、今回の試験で解明したウインドウレス鶏舎におけるブロイラーの光線管理方法、即ち、3週齢時までは5ルクスの連続照明とし、3週齢時から出荷時まで1ルクスの低照度で明期1時間:暗期3時間の間歇照明を施すことは発育性、飼料利用性に悪影響を及ぼすことなく、舎内点灯用の電気使用料金が節減でき、ブロイラー生産費の低減をもたらす有効な一手法である。
また、ブロイラーを間歇照明下で飼育すると、終夜点灯に比較して鶏の無駄な活動が抑制されて飼料要求率が改善されたり、鶏自体の活動量の低下から鶏舎内の塵あいの充填量が少なくなり、呼吸器病の発生を抑制し、環境衛生面からも好ましいといえる。

3.踏み込み式ビニールハウス豚舎の利用に関する研究 第2報:季節別飼養法の検討

伊藤均・和田健一・板倉元・加藤元信・今西禎雄

昭和57年度より急速に増加したビニールハウス豚舎の肉豚飼養管理技術については不明の点が多い。そこで本試験では第一報で指摘した夏期の発育低下防止対策として薄床における敷料の種類を検討し、また細霧噴霧および高TDN、高DCP飼料給与の効果について、また冬期の厚脂防止対策として量的および質的制限給餌の効果について検討した。

  1. オガ屑薄床の方が、堆肥薄床に比べ日増体重および飼料要求率は良くなった。
  2. 細雰噴霧することにより増体重および飼料要求率は改善され、浮遊塵埃もおさえることができた。床面の状態は問題となるような泥ねい化は認められず良好であった。
  3. 量的および質的制限給餌においては特に厚脂防止効果は認めらなかった。

4.牛の受精卵移植技術に関する研究 第1報過剰排卵処理および凍結方法

余谷行義・南口勇・伊藤雄一・山間陽稔

牛の受精卵移植における過剰排卵処理と、受精卵の簡易な凍結方法として、超低温冷凍庫内でのアルコールによる凍結を検討し、次の結果を得た。

  1. 供卵牛として、ホルスタイン種8頭、黒毛和牛7頭に延べ21回の過剰排卵処理を行なった。初回処理の結果は、平均推定黄体数9.9個、平均回収卵数7.1個 平均正常卵数6.1個であり、回収率71.1%正常卵率85.8%であった。ホルモン剤別では、推定黄体数、回収卵数、正常卵数、回収率ともFSH処理がPMSG処理を上回ったが、正常卵率に差はなかった。
    また、初回処理と反復処理では、推定黄体数や正常卵率に大きな差がないものの、反復処理での回収率が低く、回収卵数、正常卵数が初回処理とくらべ少なかった。
  2. 新鮮卵移植はAランク胚3個とBランク胚4個を各々1卵移植したところ、Aランク胚を移植した3頭が受胎・分娩し・受胎率は42.9%(3/7頭)であった。
  3. 受精卵を超低温冷凍庫内でアルコールにより凍結し、融解後のグリセロール除去を6段階で行なった場合の受胎率は、2卵移植で20.0%(1/5頭)、1卵移植で11.1%(1/9頭)、全体で14.3%(2/14頭)となり、2分娩で双子を含む3頭の産子が得られた。
  4. 0.3Mと0.6M濃度の蔗糖溶液を1本のストロー内に装填した1段階ストロー法による直接移植により、10頭中6頭が受胎・分娩し、60.0%の受胎率が得られた。このうち、プログラム・フリーザーで凍結した胚の移植では7頭中3頭が受胎し、受胎率42.9%、超低温冷凍庫内でアルコールにより凍結した胚では、移植した3頭すべてが受胎し、受胎率100.0%であった。
    このことから、超低温冷凍庫内でのアルコールによる凍結方法は、1段階ストロー法においても利用できることがわかった。

5.卵用鶏の経済的強制換羽に関する研究

西口茂・水野隆夫・出口裕二

日齢の異なる鶏群に対して、夏季の6月に一斉に絶食絶水処理による強制換羽を実施し、休産後の産卵性、飼料利用性、経済性等について検討した。

  1. 日齢の経過した鶏群ほど絶食絶水処理による体重減少率は大きくなり、強制換羽処理後の産卵回復に要する日数が長くなる傾向がみられた。
  2. 産卵期(20~92週)の成績は、10月ヒナを35週齢時で強制換羽処理したところ、全期間での産卵率は対照区よりも優れる結果となり、12月ヒナ、4月ヒナをそれぞれ24週齢、60週齢時に強制換羽処理したところ産卵率は対照区と比べて大差ない成績であった。又、12月ヒナを76適齢時で処理したところ、処理による代償性の産卵回復が認められたが、処理後の飼養期間が短かかったために、全期間の産卵率は対照区を上回ることはできなかった。7月ヒナを48週齢時に処理したところ、休産後の産卵回復があまりみられず、対照区の産卵率とほば同様に推移したため、全期間の産卵率は対照区のほうが優れる結果となった。各鶏群とも絶食絶水処理による産卵制御により一時的に産卵は休止するが、産卵再開後は、7月ヒナを除いて無処理区より終始産卵率が高く推移し、産卵制御による産卵率の改善が認められた。
  3. 生存率は、ほとんどの鶏群において強制換羽処理を実施することにより、改善効果がみられ、とくに35適齢、48適齢時に強制換羽処理を実施した鶏群では対照区に比べて優れる結果がえられた。
  4. 卵質(卵殻強度、卵殻厚、ハウユニット)は、いずれの鶏群とも強制換羽による改善効果がみられた。
  5. 経済性は、10月ヒナは35週齢時で強制換羽処理を実施し、92週齢時まで飼養したところ、無処理で76週齢時にオールアウトさせた場合に比べ、1日1羽当たりの粗収益を0.5円程高くすることができた。

6.消毒液の高濃度少量散布による鶏舎の消毒効果 第2報ジクロルイソシアヌル酸ナトリウムの消毒効果

今西禎雄・板倉元・水野隆夫

ゾクロルイソシアヌル酸ナトリウム(SDIC)の高濃度少量散布による消毒について実験し、次の結果を得た。

  1. 自然汚染検体にSDICの25倍液〔散布量19ml/m3)、50倍液(散布量38ml/m3)100倍液(散布量75ml/m3)及び2000倍液(1500ml/m3)を散布し消毒したところ、50倍液と100倍液では散布前のl/103に減少し高い消毒効果が得られた。
  2. 機械力によって舎外から無窓鶏舎に50倍液のSDICを40ml/m3散布し消毒したところ、壁面と天井では散布後に生き残った菌数101/cm3以下であり、対照としたホルマリン燻蒸消毒と同等の消毒効果が得られた。床面においても高い消毒効果が得られたが、ホルマリン燻蒸消毒よりもやや効果が低かった。
  3. ホルマリン燻蒸消毒では消毒1日後でもガスマスクの着用なしでは飼育室内に立入ることができなかったが、SDICの高密度・少量敢布ではガスマスクの着用なしに飼育室内に立入ることができた。3)

7.カンキツ開園地の冬季最低気温推定法

田端市郎・浦狩芳行・中馬博・橋本敏幸

三重県南牟婁郡において、中晩生カンキツの植栽を目的として、海岸線から3~5kmの山麓に造成きれた13団地について、植栽品種の選定及び栽培管理の資料とするため、各団地の低部基準点気温(昭和51年~56年)及び標高別最低気温(昭和51年~61年)を用いて各団地の標高別に最低気温を推計し、温度区分を行った。

  1. 各団地基準点の最低気温(T1)は紀南柑橘センター旧用地の最低気温(t1)から一次回帰式T1をa1+b1t1として相関係数0.8~0.9で推計できた。
    各団地の標高別最低気温(T2)は標高(H2)との関係が高く、T2=a2+b2H2として推計できた。各団地基準点の最低気温(T1)の変化に応じる各団地標高別の最低気温(T3)は温度勾配(b2)が団地ごとにほぼ一定で平行移動するものと仮定して、(T1i)式と(T2i)式を合成してT3i=T1i+b2(Hii-Hbi)但しHbiは団地基準点の標高(m)として推計できた。
  2. 当地域における冬期最低気温は、海岸線から、2km以内の洪積平地においては-6.0~5.5℃、同2~3kmの第三紀層山麓では-7.0~6.5℃、同4km内外の奥地の谷間では-8.00~7.5℃で、その発生頻度は10年ないし20年に1回と見られた。
  3. 造成地の標高別最低気温は低地部で低く、高地部で高い関係があり、一次回帰による標高1mごとの気温の昇温係数(b2)は最大0.056で最小は0.025であった。一般に海岸掛こ近い団地は昇温係数が大きく、奥地になる程低地部基準点の最低気温が低いうえに、昇温係数も小さかった。しかし、その程度は海岸からの距離で一定ではなく地形により異なった。
  4. 上記の最低気温特性をもとに、カンキツ類の寒害程を考慮して、再現期間5年で、最低気温-3.9℃以内をⅠ区域-4.9~4.0℃をII区域、一5.9~5.0℃Ⅲ区域、-6.0℃以下をⅢ区域として区分した。
  5. 以上既存資料を用いて造成地の最低気温を推計できたが、各団地の日々の最低気温を正確に推定することは困難で、平均値で近似値が得られる程度と見られた。また、これらの法則性は低温年に顕著で暖冬年には、ゆるむものと見られた。

8.「アメリカフウ」による天蚕飼育と繭質に及ぼす影響

石川誠・掘千秋

天蚕飼育における優良飼料樹の選定と言う観点から、クヌギを対照としてアメリカフウについて伐採部位別萌芽枝試験、天蚕飼育試験、産卵性試験を行い比較検討した。

  1. アメリカフウはクヌギに比較して樹勢が強く、伐採部位は地上50cm~100cmで行った場合に有利であることがわかった。
  2. 天蚕を両樹を用いて飼育した場合、両方とも個体間のバラツキが大きいが、飼育経過がアメリカフウ育で1~2日延長した。桔繭率はクヌギ育が4%優れていた。
  3. 両樹で飼育した天蚕の繭は、アメリカフウ育繭の方が繭重、繭層重、繭屑歩について勝っていたが、個体間のバラツキはクヌギ育繭より大きかった。
  4. 以上のことからアメリカフウは天蚕飼料樹としてクヌギより樹勢、飼料的価値の点で優れており、天蚕の飼料樹として実用化できることがわかったが、個体間格差が大きいということが問題点として残った。

9.三重県北勢地域における茶樹栽培実態調査からの一考察

橘尚明・吉川重彦・松田兼三

三重県北勢地方の「かぶせ茶」栽培地域では、良質茶し好と茶業の好況により、1965年頃から多肥栽培による良質多収の生産気運が高まり波状的に普及した。そこで、本県随一の茶生産である鈴鹿市の茶園実態を把担するため、土壌の物理性、化学性、根系の分布状態ならびに施肥の実態について調査検討した。

  1. 10a当たりの年間施用量は、窒素58~283kg(平均147kg)、燐酸9~107kg(平均57kg)、加里10~81kg(平均57kg)であり、特に窒素量が200kgを越える超多肥茶園は、11%認められた。
  2. 製茶品質と相関関係が高い一番茶開葉初期の成葉窒素含量は、施肥窒素量200kg・xまでは平行して増加したが、200kgを越えるとむしろ減少する傾向か認められた。
  3. 優良茶園は、透水性のよい楚原統に分布し、土壌の物理性が茶の生育と深く関係していることが明らかとなった。
  4. 施肥軍窒素量が10a当たり140kg以上を超えると畦間第1層で根の発達が全く見られない場合が多くなり180kg以上では健全根が全く認められなかった。
  5. 土壌のpH(H20)は2.9~5.9の範囲にあり、第1層が4.5以下の茶園は74%に達した。第2層ではほとんどすべての茶園で4.5以下の強酸性を示し、中には2.9の超強酸性茶園も見られた。
  6. 茶園土塊は、一般畑土壌と異なり樹令の進行に伴って、特に畦間土壌の理化学性が変動し、また同一茶園でも調査位置、深さによって著しい差異が認められた。

10.水稲の露地中苗育苗用播種作業の機械化に関する研究

横山幸徳・中西幸峰

今後、稲麦二毛作による土地利用方式の定着と省力化技術により低コスト化を図ることが重要である。二毛作田での水稲移植時期ま6月中・下旬の晩植となるため、収量が低収になる。水稲収量の安定化を図るため、露地において中苗健育苗技術を確立する必要がある。このため、育苗箱に代わる型枠育苗床による育苗法を確立し、省力化対策として、型枠上を走行する床土人れ機・自走式マグネット播種機、覆土機を開発するとともに、健苗育苗されたロングマット苗を搬送し、田植機での移植体系を検討した。また、開発した播種・育苗技術を中心に実証し、体系化技術を確立しようとした。

  1. 型枠育苗の型枠材としてアルミの角鋼を使用し、短辺30cmX4mを1セットとして2列を短冊にし、上部灌水方式とした。その型枠上を走行レールとして各試作機を作動させる。マットサイズ120cm、90cm用として補強材とスポンジを充填し、マット切断不用の構造にした。
  2. 開発した自走式マグネット播種職の性能は、播種量73g/箱の時、田植機かき取り量(横×縦)15.5×15mmの場合、3.7粒/株、欠株率0.1%であり、作業速度は0.09m/秒であった。播種量81g/箱の場合は、15.5×15mmの場合、4.1粒/株、欠株率0.1~.0%、1粒株率1.2~0.6%となった。なお、催芽籾適水分は28~30%の範囲で高精度安定播種が可能であった。
    床土人れ機・覆土機の性能は、調量規制板開度と床士厚の相関が高く、床土厚の増減は規制板の調整で可能であった。床土量27mm程度で播種機の精度も安定し、床土面の均平も良好であった。播種後の種子移動を少なくするため鎮圧(5mm)し覆土する兼用機とした。鎮圧により種子位置(条播)が決まり、覆土厚3~4mmとなり、28mm前後のマット厚となった。
  3. ロングマットの強度は、マット厚が25>27>30mmの順に強度があり、マット長では、60>90>120mmの順となった。水平引張強度では、0.4~0.5kg/m2の強軌こ対し、垂直引張強度では、0.1kg/m2程度マットの自重により低い債となり、0.3~0.4kg/m2であった。マット剥離抵抗は、19kg程度(一点での垂直引張抵抗値)であり人力での剥離が可能である。苗搬送機の性能は、苗の装てん搬送時にマットの乱れ、崩れもなく、苗供給もスムーズに実施できた。しかし、マット重量は、90cmマットで11kg、120cmマットで14kgあり、搬送機の6kgを加えると苗補給時に重労働となるため、この対策が必要となった。そこで、田植機に苗供給装置を開発し、重労働の軽減を図ったものの性能試験には至っていない。
  4. ロングマット苗の田植機適応性については、マット長が60、90、120cmとも差がなく、3.4~3.6本/株で機械的欠株率1~2%、1本植株率4~8%となった。マット厚25~30mmについても、明らかな差はなく、27mm前後で、マット長が90、120でも充分な精度が確保された。
  5. 露地中苗育苗技術の体系化では、型枠育苗床をベースに播種育苗の省力化体系を中心に検討した。また、体系化試験用として20条自走式播種機を新に試作し、その性能は18条用と同等の精度であった。
    型枠長さは12mとして作業能率を検討した結果、育苗床造成作業が10a当たり延作業時間1.03時間、播種作業は1.88時間、育苗管理作業は0.68時間となった。播種・育苗管理作業全体の延作業時間は、3.59時間となり、育苗箱体系に比べ1.49時間省力化された。
    このように、播種・育苗体系の機械化が図られたが、ロングマット苗の田植機供給システムの検討が必要であり、今後さらに研究を継続することが重要であろう。

本ページに関する問い合わせ先

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松阪市嬉野川北町530
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