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研究報告第23号

1.ワイルドライスのカルスの懸濁培養系による増殖と植物体の効率的な再分化

橋爪不二夫・平野三男

本研究では、多くの植物種で行われているカルス培養における懸濁培養系をワイルドライスのカルスにおいて確立するため液体振とう培養における2、3の条件について検討した。更にこれらから得られた再分化植物の試験管内における幼植物段階における培養環境条件について検討したところ以下の結果を得た。

  1. ワイルドライスのカルスを小粒化し、更にNAAを含むMS液体培地で前培養(1日)することにより胚様体の誘導率を高め、植物体の再分化に有効であった。
  2. 胚様体を誘導する培地に1mg/リットルNAA及び0.4%ジェランガムを添加することは、胚様体誘導率の向上及び再分化植物の奇形緩和に効果的であった。
  3. 再分化した植物体の炭酸ガス施用による成長促進を行ったところ、再分化植物の奇形を軽減することができ、順化適応性が向上した。
  4. 再分化した幼植物体を滅菌水で1週間培養することにより、発根が促進された。

2.組織培養によるイセイモの種苗増殖に関する研究 第2報多芽体の効率的増殖及び植物体の再生方法

服部英樹・平野三男

イセイモの多芽体を利用したイセイモの増殖法を確立するため、多芽体の効率的増殖に有効な化学物質や植物体再生に及ぼす植物ホルモンと培養方法について検討し、次の結果を得た。

  1. MS培地にBA5mg/リットル、アンシミドール10mg/リットル、硝酸銀10mg/リットルを添加すると、BA5mg/リットルの単独添加よりも多芽体の芽数が増加した。
  2. ゼアチン0.1mg/リットルあるいはカイネチン1.0mg/リットルをMS培地に添加すると高い芽数増加率が得られた。
  3. 多芽体から植物体を再生させるにはMS培地にBA0.02mg/リットルを添加するのが有効であった。
  4. 液体培地で10日ごとに新しい培地に移植すると植物体再生率は80%で、再生した植物体の草丈は2.8cmであった。

3.大果系イチゴ品種「アイベリー」の先つまり果発生原因とその対策 第3報窒素施用と施肥時期が果実当たりのそう果数と先つまり果発生に及ぼす影響

森利樹・西口郁夫

イチゴの果実当たりのそう果数、花房当たりの花数と先つまり果の発生に及ぼす窒素施肥量の影響および花芽分化形成期間中の施肥時期の影響について明らかにした。

  1. 頂花房1番果のそう果数は基肥施用量が多いほど多くなった。
  2. 果実当たりのそう果数に対する花芽分化形成期間中の施肥の影響は、花芽分化初期が最も強く、以後順に小さくなった。基部の雌ずい配列がすでに決定した雌ずい分化期以降でも同様に、施肥時期が遅いほどそう果数は少なくなった。このことから、雌ずいの分化は、分化が終了するまで窒素栄養の影響を受け続けることが明らかになった。
  3. 花房当たりの花数に対する花芽分化形成期間中の施肥の影響は、花芽分化初期から花房分化の前まで強く、花房分化期以降は比較的安定するが、分化が完了するまで続いた。
  4. 先つまり果の発生は、基肥量が15kg/10aまでは大きな差がなかったが、最も施肥量の多い30kg/10aで多くなった。
  5. 先つまり果発生に対する施肥の影響は花芽分化完了まで続いた。しかし、花芽分化初期の影響が大きく、雌ずい分化期以降は小さくなった。

4.養液栽培におけるトマト根腐萎ちょう病菌の生態

黒田克利・河野満・冨川章

養液栽培におけるトマト根腐萎ちょう病菌の生態を調査したところ、以下の結果を得た。

  1. トマト根腐萎ちょう病の発病株から得られた種子から根腐萎ちょう病菌がわずかに(0.1%)検出された。
  2. トマト養液栽培施設の現地施設において、施設内の空気、土壌、培養液、定植前のトマト苗、施設外のトマト体積残さからF.oxysporum菌が検出された。
  3. 湛液栽培の培養液中にトマト根腐萎ちょう病菌を接種し、菌の増殖を調査したところ、栽培温度に関係なく菌の増殖は抑制された。
  4. トマトの湛液育苗とロックウール育苗を比較すると、湛液育苗よりもロックウール育苗の方がF.oxysporum菌が検出され、トマト茎下部の褐変も多かった。

5.ブドウ「安芸クイーン」および「巨峰」成木の新梢と顆粒発育の比較

伊藤寿・輪田龍治

ブドウ「安芸クイーン」成木の新梢生長と果粒発育について、「巨峰」成木を対照に比較した。

  1. 「安芸クイーン」の新梢は生育期間中いずれの時期にも「巨峰」より短いことから、樹勢は弱いと判断された。
  2. 「安芸クイーン」では、第3花穂まで分化している新梢はなく、また、花穂重も「巨峰」より小さかった。
  3. 果粒は、発育初期から「安芸クイーン」のほうが大きく、さらに、糖度、着色も巨峰より優れた。主要な糖はグルコースとフルクトースであり、両糖の割合は、両品種ともほぼ1:1の割合であった。
  4. 以上より、果粒発育は、「巨峰」よりすぐれるものの、花芽の発達程度は劣ると判断されたので、安定生産のためには花芽の充実を図ることが必要と考えられる。

6.給与粗飼料の違いが生乳生産に及ぼす影響について

濱口勇・余田行義

粗飼料の形態の異なる、ホールクロップサイレージと乾草を乳牛に給与し乳生産および成分乳質についての影響を検討した。実験計画は3×3ラテン方格法により6頭のホルスタイン種を用い、2試験を実施した。試験1では、ホールクロップサイレージを供試飼料として、水稲、トウモロコシ及びソルガムの比較を行った。試験2では、購入飼料を供試飼料とし、アルファルファ、スーダングラス及びエン麦の比較を行った。
得られた結果は次のとおりであった。

  1. 水稲、トウモロコシ及びソルガムホールクロップサイレージについては、産乳性に差はなかった。
  2. 水稲、トウモロコシ及びソルガムホールクロップサイレージを用いた試験区のRVIは、いずれも30分/kgを下回る結果となったが、乳脂率はいずれの区でも3.5%を上回った。
  3. 各種乾草の給与試験において、スーダングラス及びエン麦は産乳性に問題はなく、アルファルファ乾草は産乳性は良いが乳脂率が若干低かった。

7.子豚の発育低下防止試験 子豚期(21~120日齢)に粉砕杉材を与えた場合の影響

安芸博・林道明・中村雅人・伊藤均・浅田忠利

21日~120日齢の豚に粉砕杉材添加飼料を給与し、発育性、消化管の生理的変化、肉質等を調査した。区分は21日~60日齢は無添加で61~120日齢に6%添加した0・6区、21~60日齢に2%、61~120日齢に6%添加した2・6区、21~120日齢に6%添加した6・6区並びに21~120日齢に無添加の対照区としたところ、以下の結果が得られた。

  1. 各区とも試験期間中、下痢、肺炎等の臨床症状は認められなかった。
  2. 一日あたり増体重、飼料要求率は、0・6区、対照区が最も良かった。
  3. 剖検所見では、各区とも以上はなっかた。
  4. 胃、十二指腸、血腸の管壁の厚さは各区とも差はなかった。
  5. 体重約110kg時の肉質検査では、各区とも差はなかった。

8.地域特産鶏を利用した高品質フレッシュ鶏肉の生産技術 伊勢赤どりの飼育期間と肉質の関係

佐々木健二・西口茂・出口裕二

伊勢赤どり(シェーバーレッドブロー種)を8、12、16週間の3期間飼育してその発育成績、解体歩留り成績、鶏肉の肉色、鶏肉中の一般成分、鶏肉の理化学的分析及び食味試験を実施し、飼育期間と肉質との関連を調査した。

  1. 伊勢赤どりの体重は、週齢の経過とともに増え、飼料要求率は低下した。
  2. 伊勢赤どりの解体歩留り及び腹腔内脂肪は週齢の経過とともに増加した。
  3. 肉中の水分含量は12週で少なく、粗脂肪含量が多くなり粗蛋白質含量は週齢の経過とともに増加する傾向にあった。
  4. 肉色は、もも肉で週齢の経過とともに濃くなったが、むね肉はほぼ一定であった。
  5. 伸展率、加熱損失は週齢の経過とともに低くなり、圧搾肉汁率は逆に高くなる傾向を示した。
  6. 食味試験では、飼育期間の短いものほど好まれる傾向にあった。

9.卵用鶏における孵化期別の性成熟日齢調整技術

佐々木健二・出口裕二

春夏秋冬に各孵化の白色レグホーン種を用い、育成期における飼料制限比率を不断給餌の10、20及び30%とし、それぞれ10~20週齢まで制限給餌し、性成熟及びその後の産卵等に与える影響を検討した。

  1. 初産日齢は飼料制限比率が大きくなるほど抑制され、初産産卵は不断給餌区は重くなったが、飼料制限比率の違いによる差は認められなかった。
  2. 産卵改善効果は、秋、冬ひなでわずかに改善傾向が見られたが、春、夏ひなでは認められなかった。また、産卵率及び産卵日量は育成期の飼料制限比率の違いによる影響は認められず、飼料摂取量は不断給餌区が制限区に比べ多くなる傾向がみられた。
  3. MS、M、L規格卵の比率は、各孵化とも不断給餌区に比べ制限区の方が高くなる傾向が見られた。
  4. 育成飼料費を含めた収益性は、不断給餌区に比べ制限区が優れたが、夏ひなは産卵改善効果が見られなかったために、収益性についても同様な傾向を示した。
  5. 収益性からみて各孵化鶏の育成期の飼料制限比率は、春ひなが20~30%、夏ひなが10%、秋ひなが10~20%、冬ひなが30%が最適であると考えられた。

10.特産鶏肉生産における茶の利用

佐々木健二・出口裕二

伊勢赤どり(シェーバーレッドブロー種)に対して本県特産の茶を添加した飼料を給与し、その発育成績、解体歩留り成績、鶏肉の肉色、鶏肉中の一般成分、鶏肉の理化学値及び鶏肉の鮮度の推移を調査した。

  1. 飼料への茶添加割合が増えるに従い飼料摂取量が減少し、平均体重も小さくなったが飼料要求率は大差なかった。
  2. 育成率は、雄では対照区に比べ、茶1.0%添加区が優れたが、雌については大差なかった。
  3. 腹腔内脂肪は、対照区に比べ、茶添加区が低くなる傾向が見られた。
  4. 伸展率及び圧搾肉汁率は、対照区に比べ茶添加区が大きくなる傾向がみられた。
  5. 血中のグルコース含量は茶添加区が対照区に比べて低くなる傾向が見られたが、コレステロール含量については、一定の傾向は見られなかった。
  6. 茶1.0%添加区は、対照区に比べ屠殺後1、3、6日目のK値が低く推移し、鮮度保持の効果が伺われた。

11.暗渠排水における地下水位低下と排水時間に関する研究 第6報暗渠排水の設計

磯島義一

  1. 作物を栽培する土壌は土粒子、水、空気から成り立っている。土粒子の間隙は水と空気で占められる。土粒子の間隙には大小がある。
    小さな間隙を満たしている水は毛管水を呼ばれるもので、低い所から高い所へ上昇して作物に利用される。しかしながら高い所から低い所へ移動できないので、暗渠で排水できない。
    大きな間隙を満たしている水は重力水と呼ばれる。重力水は高い所から低い所へ移動して暗渠で排水できる。
  2. 圃場の表面にある耕作土とその下層の心土について暗渠で排水できる有効間隙を調べた。
    実験の結果、農家の圃場から採取した耕作土は、有効間隙率が5.5%あることがわかった。
    心土については次のように調べた。土粒子を篩い分けて有効間隙率の実験をした。粒径が1mmから0.5mmのものについては、有効間隙率は体積比で6.5%もあったが、粒径が小さくなるにつれて減少し、0.21mmから0.105mmになると0になった。
    作土層には雨水がたまる有効間隙がある。心土層についてはほとんどないと判断できる。3.耕作土中に入った雨水の排水について考察した。
    透水係数2.9×10-3cm/s、有効間隙率5.5%の土壌について試算したところ、その90%は1日で排水されることがわかった。この程度ならば畑作物の生育にとって障害にならないと思われる。
  3. 土壌の過湿については、雨水が耕作土中に貯留されることによるものと、地下1m内外の透水層からの地下水によるものがある。
    白山町地内で調査した事例によると、地下70~80cmに砂の層があり、この層を流れる地下水が地下水位に影響を及ぼす。地下水位の上下は、地下水の水圧を表すものである。
    地下水位が高くて、地下水位の上下が小さい場合がある。この地下水位は土壌の毛管が飽和している位置を示す。
  4. 白山町地内で調査した小麦の栽培と根の分布について考察した。弾丸暗渠を施工した圃場は、根の分布が深さ30cmまで伸びたのに対し、無対策圃場では深さ15cmであった。
    このことから弾丸暗渠は土壌構造の改良に役立つことが認められている。弾丸暗渠は雨水の排水の他、土壌構造の改善に役立つものである。

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