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平成20年12月09日

公の施設の管理運営について

第1  外部監査の概要
第2 外部監査の結果
  (1)施設の設置目的と利用状況
  (2)法規の遵守生
  (3)施設管理の経済性・効率性
  (4)財産管理の適正性
第3 コスト計算の結果および分析
第4 提言

第1  外部監査の概要

第1 外部監査の概要

1.外部監査の種類
 地方自治法第252条の37第1項、第2項及び三重県外部監査契約に基づく監査に関する条例第2条に基づく包括外部監査

2.選定した特定の事件(テーマ)

(1)外部監査の対象
 教育委員会所轄の公の施設のうち、条例を設けて管理運営している施設及びその管理を委託されている関連出資団体
(2)監査対象期間
 平成14年4月1日から平成15年3月31日まで
 (但し、必要に応じて過年度に遡り、また平成15年度予算額も参考とする。)

3.特定の事件(テーマ)を選定した理由

三重県は「三重のくにづくり宣言」のなかで謳われた基本理念に基づき、総合行政で取組む八つの重要な課題の一つに「ゆたかで個性的な文化県づくり」を掲げている。この課題の実現にむけて、文化・スポーツを暮らしのなかに根づかせる環境づくりをするとしている。従って、これら文化・スポーツ施設は県民に身近にあり、その管理・運営状況に関心も高いと思われる。
 一般的には、このような施設には多額の設備投資を要し、また、事業費に当初予期しなかった多額の費用を負担し続けることがあることから、文化、スポーツに関する公の施設のうち、重要性が高く条例を設けている施設について、その管理・運営状況を検討することの必要性を認めたため、特定の事件として選定した。

4.実施した主な監査手続

(1)各施設に赴き以下の手続きを実施した。
 1. 施設の利用状況及び設備の状況等について現場の視察及び各担当者への質問を実施した。
 2. 各施設の管理運営資料及び必要に応じて請求書等を入手し閲覧を実施するとともに、各担当者に質問を実施した。
(2)施設の単位指標あたりのコスト計算を実施した。

5.外部監査の実施期間

平成15年7月11日から平成16年1月31日まで

第2 外部監査の結果

教育委員会管轄の公の施設の管理において監査を実施した結果、以下の事項が発見された。

(1)施設の設置目的と利用状況

発見事項 該当施設 監査結果の要約
開館時間、期間 三重県立図書館
三重県営総合競技場
 公の施設は県民のための施設であり、県民にとって利用しやすいものであるべきである。従って、施設の開館時間、期間は利用者である県民が利用しやすい時間、期間である必要があるが、利用が多いと思われる日時の利用が制限されているなど、開館時間・期間に利便性の配慮に欠けている。【意見】
管理者の不在 三重県立鈴鹿青少年センター  公の施設の運営には一定のサービスを提供するため、開館時間については管理者の常駐が必要である。該当施設においては、宿泊施設であるが、職員は勤務終了時間である17時15分には退出するため、その後は宿泊施設として最低限必要なサービスが充足されない状況にある。管理者の不在がないよう勤務時間のシフト等の対処がもとめられる。【意見】
利用料金と利用者負担 三重県立博物館  公の施設を利用する際、利用する者と利用しない者との負担の公平性の観点から、利用者に一定の負担を求めることが必要である。該当施設においては施設の公共性の度合いや他県比較に鑑みて負担割合が低いと判断される。利用料金の見直しが必要と思われる。【意見】
施設の公共性 三重県営ライフル射撃場  三重県営ライフル射撃場は、銃刀法により、利用者は主に三重県ライフル射撃協会の会員約50名に利用が限定された状況となっている。また、設置当時から会員数は増加していない。設置目的のひとつである普及・ハがあったとも言い難く、公共性が低いと判断される。このことから三重県営ライフル射撃場の廃止及び三重県ライフル射撃協会への売却を検討すべきである。【意見】
利用料金の取扱い 三重県営松阪野球場  利用料金については、公平に徴収される必要がある。具体的に料金は条例や規則によって定められているため、施設の管理者は条例や規則に基づき料金を徴収しなければならない。該当施設においては、特定の団体の利用につき条例や規則にない料金優遇措置がとられていた。【指摘】
駐車場のスペース 三重県立博物館三重県立美術館  車利用者のための駐車場台数の確保が不十分であり、また公共交通機関の利用のPRも不十分である。さらに三重県立博物館では駐車可能台数の半数を職員の駐車で占められていた。
 利用者に公共交通機関を利用しての来館を促すとともに、混雑が予想される休日は職員の駐車を控える等の配慮が必要である。【意見】

(2)法規の遵守性

発見事項 該当施設 監査結果の要約
決裁手続の不備 三重県立美術館
三重県営松阪野球場
 公の施設の適正な管理のため、書類は過不足なく整備される必要があるが、該当施設において、貸出の調書や使用許可申請書に適切な承認印がないなど、決裁手続きの不備が発見された。【指摘】
利用料金の前受制 三重県営総合競技場
三重県営松阪野球場
 県は通常、条例、施行規則に基づき利用前に料金を徴収する前受制を採用している。しかし、実際には後払いのケースが多い。条例及び同施行規則を遵守しておらず、規則違反であり条例及び規則に遵守する必要がある。【指摘】
 ただし、屋外施設は特に天候等によるキャンセルの際の返金の機会が多く、煩雑になることから、後払い精算が可能になるよう条例や施行規則の改正も検討されてはどうであろうか。【意見】
会計規則の遵守性 三重県生涯学習センター  三重県文化振興事業団の会計規則では「予定価格が10万円以上の場合はできる限り相見積もりを入手する」ことになっているが、単品で10万円未満の場合、総額10万円以上の購入であっても相見積もりをとっていない。上記の場合も相見積もりを取るべきである。【指摘】
競争入札の適用範囲 三重県生涯学習センター  三重県文化振興事業団の会計規則では指名競争入札によるのか随意契約の方法によるのか適用区分が曖昧である。随意契約の実施可能な範囲を具体的に定めるなど、適用範囲を明確にすべきである。【指摘】

(3)施設管理の経済性・効率性

発見事項 該当施設 監査結果の要約
年度末支出 三重県立図書館
三重県立博物館
斎宮歴史博物館
三重県生涯学習センター
 年度末時点で当年度においては不要な消耗品や切手類の大量購入が散見された。当年度の予算を来年度のために使用することは適切な処理とはいえない。備品等の購入は年度内に使用する数量にするべきであり、不要不急の必要以上の備品等の購入は避けるべきである。【意見】
 また、特に切手の購入が目立つ。切手は換金性の高い資産であり、使用の目的もなく大量に購入することは管理上危険である。随時、必要枚数だけ購入するよう徹底すべきである。【意見】
施設の有効利用 三重県営鈴鹿スポーツガーデン  当該施設において、原則試合形式の利用に限定されているサッカー場は、利用率が極めて低い状況(概ね20%以下)にあるのに対し、芝の管理委託費は樹木緑地と合わせて年間34,100千円(税込)と高額となっている。試合形式以外のグラウンド開放等の利用促進策を進めるとともに、5面ある芝のグラウンドを利用状況に応じ、維持コストがかかる芝の撤去やグラウンド数の削減等の見直しを検討する必要がある。【意見】

(4)財産管理の適正性

発見事項 該当施設 監査結果の要約
物品登録・削除の不備 斎宮歴史博物館
三重県立美術館
三重県生涯学習センター
三重県立鈴鹿青少年センター
三重県営鈴鹿スポーツガーデン
三重県営ライフル射撃場
 「備品の購入等の受け入れがあった場合には、その都度物品管理台帳又は物品出納簿に登記しなければならない。」(三重県会計規則138条)物品の適正な管理を実施するため、財産登録の必要がある。一方で、廃棄対象となる物品の台帳からの削除手続をタイムリーに行う必要がある。
 しかしこれらの手続きが適切になされていないため、現物と台帳の不一致が生じている。
 県の物品管理台帳のデータの信頼性を向上し、適切な物品の管理が実施できるよう、登録手続、及び廃棄手続を確実に実施すべきである。【指摘】
持ち込みの物品 三重県立熊野少年自然の家
三重県営ライフル射撃場
 三重県立熊野少年自然の家及び三重県営ライフル射撃場では、私物のパソコンや小型天体望遠鏡が、県の施設内の相当面積を占めて設置されていた。県の行政財産は「行政財産の目的外使用に係る取扱いに関する条例」で無償使用は認められていない。適切な使用許可手続きを実施すべきである。
 ライフル射撃協会では、国体事務局の無償貸与物品、県の無償貸与物品及びライフル射撃協会の物品が所有者を明記することなく混在した環境になっている。県有物品以外の物品も管理ラベルを添付して管理するなど県有物品と同等に管理をすることが望まれる。【指摘】
収蔵品のデータベース化 三重県立博物館  貴重な県民の財産である収蔵品の管理について、有効かつ効率的に実施するためにも、データベース化が有効である。
 しかし、該当施設においては、収蔵品の管理はパソコンにてデータベース化が途上の段階であったり、手書きカードのみの管理となっている等、実質的に担当者レベルでの管理となっている。業務の効率化、収蔵品の有効活用という観点からデータの整備は必須事項と思われる。【意見】
保管環境 三重県立博物館  収蔵庫について温湿度の管理設備が不十分であり、加えて保管スペースが不足している。そのため博物館内では対応できず、一部収蔵品の保管業務を外部委託している。今後の収蔵品受け入れの際は保管スペースという制約条件を十分に考慮すべきである。【意見】
施設の老朽化 三重県立博物館
三重県立鈴鹿青少年センター
三重県営総合競技場
 公の施設は県民の誰もが利用できるよう、常に利用可能な状況に保持する必要がある。しかし該当施設においては、県内の公の施設のうち開設年月が古く、施設自体が老朽化し十分なメンテナンスがなされておらず利用に支障をきたしている。
 必要以上に贅沢な設備は不要であるが、利用者及び職員にとって最低限の環境は確保されるべきであり、衛生設備に関しては特に早急な修繕が望まれる。また、老朽化に伴い、その耐震性が危惧されるところである。耐震性を検査し、問題のある施設については、補強工事が必要である。【意見】
付保状況 三重県立図書館
三重県生涯学習センター
 図書館と生涯学習センターが併設されている建物は、稀少な図書の保存の見地からも、火災保険・損害保険をかけても保全するに値する施設の一つと考えられる。
 今後、施設の保全において、火災保険等のコストをかけても保全していくべき施設のガイドラインの設定を検討していただきたい。【意見】
貸出物品の整理不備 三重県生涯学習センター  当該施設において、紛失・毀損の場合の責任が明確になっていなかった。また、教育委員会関係者を対象に貸し出した物品が返却予定日を経過しても未返却であった。
 三重県文化振興事業団は、紛失・毀損の場合の責任の所在を明確にするとともに一定期間を経過した貸出物品の返却状況を確認するよう物品の管理方法を改めるべきである。【指摘】
施設のバリアフリー化の未整備 三重県立鈴鹿青少年センター  公の施設は県民の誰もが利用できるように、少なくとも必要最低限の対策をとる必要がある。よって障害者においても、利用しやすいようバリアフリー化が望まれるが、バリアフリー化が不十分であり障害者が不便を強いられる施設があった。早期の改善が求められる。【意見】
利用頻度の低い物品の有効利用 三重県立鈴鹿青少年センター
三重県営鈴鹿スポーツガーデン
 購入以来長期に渡って未使用の物品、現在は使用されていない物品、使用頻度が少ない物品があった。
 これら物品は有効に利用されるために購入されるものであり、安易な物品の購入がないよう、購入時にその利用可能性を十分に検討するべきである。また今後利用されないもの、利用頻度の低いものについては、他の施設に移管するなど、県有財産の有効利用が望まれる。【意見】

第3 コスト計算の結果および分析

コスト計算の分析結果

コスト計算の結果から以下のような事象が発見された。なお、下掲の番号が該当施設を表す。

1.三重県立図書館、2.重県立博物館、3.斎宮歴史博物館、4.三重県立美術館、5.三重県総合教育センター、6.三重県立熊野少年自然の家、7.三重県生涯学習センター、8.三重県立鈴鹿青少年センター、9.三重県営総合競技場、10.三重県営鈴鹿スポーツガーデン、11.三重県営ライフル射撃場、12.三重県営松阪野球場

(単位:千円、%)

 
人にかかわるコスト 238,238 62,286 149,818 149,818 483,269 62,302
物にかかわるコスト 265,218 20,234 470,963 446,124 254,571 27,282
移転的なコスト  
公債費(利子分のみ) 24,668 18,545
行政コスト 計 528,124 101,064 620,782 600,693 737,840 89,584
利用者一人当たり負担割合 0.06 0.34 1.51 8.23 0.01 3.53
県民一人当たり負担額 0.284 0.054 0.328 0.296 0.396 0.046
  10 11 12
人にかかわるコスト 73,830 58,556 33,236 66,302 797
物にかかわるコスト 216,029 52,653 585,342 721,751 1,788 4,950
移転的なコスト
公債費(利子分のみ) 29,752 20,193 131,584
行政コスト 計 319,611 111,209 638,772 919,637 2,585 4,950
利用者一人当たり負担割合 6.71 31.30 1.74 7.26 12.65 40.46
県民一人当たり負担額 0.160 0.041 0.337 0.458 0.001 0.002
利用者一人当たり負担割合(%)=利用者平均負担額÷利用者一人当たりコスト×100
県民一人当たり負担額=純行政コスト÷県民数(平成14年10月1日現在)

行政コスト全体については、10.三重県営鈴鹿スポーツガーデンおよび5.三重県総合教育センターが相対的にコスト高となっており、11.三重県営ライフル射撃場、12.三重県営松阪野球場がコスト安となっている。
10.三重県営鈴鹿スポーツガーデンについては設置当時の設備投資を耐用年数に亘って負担しても年間3.7億円の減価償却費が発生することにより、物にかかわるコストが大きくなっている。
 5.三重県総合教育センターは、人に関わるコストの高さが著しく目立つ。これは、三重県総合教育センターは、教員に研修を行う施設であるため、物(ハード)よりも人(ソフト)に重点を置いて運営していることによるものである。
 なお、3.斎宮歴史博物館、4.三重県立美術館、9.三重県営総合競技場の物に関わるコストについては、計算対象期間においてリニューアルまたは大規模な修繕を実施したことによる負担であり、一過性のものである。
 利用者1人当たり負担割合について、1.三重県立図書館及び5.三重県総合教育センターの利用者について負担割合が低いことは、他の自治体と比較しても利用者から原則として負担を求めていないため妥当である。しかし、利用者の負担割合が1割に満たない他の施設(2.三重県立博物館、3.三重県斎宮歴史博物館、4.三重県立美術館、6.三重県立熊野少年自然の家、7.三重県生涯学習センター、9.三重県営総合競技場及び10.三重県鈴鹿スポーツガーデン)については、一概に利用者負担割合が低いとばかりは言えないが(=利用者1人当たり負担額は、条例で定額に定められているのに対して、対するコストは定額ではないので、まずもって効率的な経営をしなければならないことは言うまでもないが)、これら公の施設で受けるサービスは利用者が選択して享受するものであるから、応分の受益者負担を求めることも必要である。
 10.三重県営鈴鹿スポーツガーデンについては、公の施設のコストとしては最もコスト高となっていたが、「利用者1人当たり負担割合」が7.26%であり、三重県民全体での1人当たり負担額は458円である。三重県教育委員会所轄の公の施設だけで、県民1人当たり合計2,403円を負担することになっている。
 公の施設の運営は、県民1人当たり負担額がいかに少なくできるかをめざして効率的な経営に努める必要がある。

第4 提言

1.受益者負担の見直し

公の施設で提供されるサービスは、利用者が選択して享受するものであることから、自治体はその運営にあたって利用者から適正な費用負担を求めることが必要である。
 「第4 コスト計算結果および分析」において、利用者の負担割合が1割に満たない三重県立博物館、斎宮歴史博物館、三重県立美術館、三重県立熊野少年自然の家、三重県生涯学習センター、三重県営総合競技場及び三重県鈴鹿スポーツガーデンについては、三重県においても、適正な受益者負担を求めていかなければいけない。特に、三重県立博物館の入館料は、長年に亘って入館料に関する条例が改正されておらず、他県博物館の入館料や三重県立博物館の実施したアンケート結果を勘案しても、入館料の値上げについて県民のコンセンサスは得やすいと思われる。

2.施設の運用方法の見直し

施設の運営方法は、そこで行う事業内容によって県の関与程度が異なるが、各施設の特性に応じて最小の費用で最大の効果が得られる運営方法を追求しなければならない。
 例えば、三重県営鈴鹿スポーツガーデンについては、現在財団法人三重県体育協会に管理を委託しているが、年間の純行政コストが8億円余り掛かっている。一層のコスト削減を進めるとともに平成15年9月の地方自治法の改正で認められた民間企業への委託を検討する余地がある。
 また、三重県営ライフル射撃場については、実質的に三重県ライフル射撃協会が利用しているだけであり、また競技人口の増加にもつながっていない。公共性が低い施設であり、運営の廃止、当該団体への適正価格での払い下げを含めた検討が必要である。

3.公有財産及び物品の管理について

公の施設については、常に安全かつ利用者が利用しやすい状態で管理されていなければならない。
 三重県立博物館をはじめとする老朽化した施設については、早急に地震に備えた安全対策も含めた修繕、改修の必要がある。
 物品については、施設によって管理レベルにばらつきがあった。三重県総合教育センターでは、ISO9001を取得し財産管理に必要な規則の整備と遵守に努め、提供するサービスの向上に努めていた。この点は他の施設も見習いたい。また、物品の稼動状況を集中管理し、稼動率を向上できるよう、物品管理データの有効活用を進めるとともにインフラの整備が求められる。

本ページに関する問い合わせ先

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