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平成26年12月17日

保環研年報 第16号(2014)

 

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三重県保健環境研究所年報 第16号(通巻第59号)(2014)を発行しましたのでその概要をご紹介します。

 

各研究報告(原著、ノートおよび資料)の全文(PDF形式)をご希望の方は、こちらからダウンロードできます。

 

 

 

 

研究報告

原 著

  ・2014rep1 家族内感染が疑われたオセルタミビル投与前の小児患者から検出された抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09ウイルス 

    矢野拓弥,高下恵美*,江島美穂*,藤崎誠一郎*,中村一哉*,楠原 一,

    赤地重宏,小林隆司,西中隆道

   キーワード:オセルタミビル耐性A(H1N1)pdm09,H275Y変異A(H1N1)pdm09,薬剤感受性試験 

  2013年9月から2014年4月までの三重県におけるオセルタミビル耐性A(H1N1)pdm09ウイルス(オセルタミビル耐性ウイルス)の検出状況を調べた.オセルタミビル耐性ウイルスは41例中4例(9.8%)検出され,そのうち薬剤投与前の小児患者から1例検出された.本事例は,札幌市でオセルタミビル耐性ウイルスが多数検出された地域流行時に本患児とその家族が札幌市に滞在していたことと,札幌市と本県の患児から検出されたオセルタミビル耐性ウイルスとの遺伝子配列が一致していたことから,札幌市で感染し,三重県に持ち帰ったケースと考えられた.今後,国内でのオセルタミビル耐性ウイルスの出現状況を注意深くモニタリングし,医療機関へ迅速に情報提供していくことは投与薬剤の選択戦略を検討する上で有用だと思われる.

 

  ・2014rep2 三重県におけるMultiplex PCRを用いた肺炎球菌の血清型別法 

   永井佑樹,常 彬*,石岡大成**,赤地重宏,小林隆司,西中隆道

    キーワード:Multiplex PCR, Streptococcus pneumoniae, 血清型別

  肺炎球菌は成人の市中肺炎の主要な原因菌であるが,まれに血液中に侵入し侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal diseases: IPD)を引き起こす.本邦では23価肺炎球菌ワクチン(PPSV23)および13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)が定期接種されているが,ワクチン接種普及によるIPDの原因血清型の推移を把握することは極めて重要である.そこで今回,三重県の成人IPD患者から分離された肺炎球菌を対象として,multiplex PCRによるserotypingを実施し,ゴールドスタンダードである抗莢膜血清を用いた膨化法との比較を行った.その結果,すべての検体において,multiplex PCRで推定された血清型は膨化法の結果と一致していた.このmultiplex PCR法は標準的な実験室であれば比較的容易に実施が可能であることから,血清型別のスクリーニング法として有用な方法であると思われた.

ノート

  ・2014rep3 三重県独自の調査様式による性感染症サーベイランス  

      奈良谷性子,福田美和,高橋裕明,山内昭則        

      キーワード:性感染症,サーベイランス,無症状病原体保有者,パートナー検診,咽頭感染

   性感染症の発生予防・まん延防止には,10代後半~20代前半の若年層への対策に加え,無症状病原体保有者への対策の重要性が指摘されているが,現行の全国サーベイランスで把握できる情報には限界がある.このことから,三重県では平成24年1月から独自の調査様式による性感染症定点サーベイランスを開始した.

2年間の調査データについて,皮膚・泌尿器科系医療機関と産婦人科系医療機関に分け集計を行ったところ,受診者の背景が違うことや,診療科により報告される性感染症の割合に差があることが明らかになった.

皮膚・泌尿器科系からの報告では,30代以上の男性の感染経路として「性風俗産業従事者との接触」が大きな割合を占めた.産婦人科系からの報告では,「妊婦健診」や「不妊治療」等を契機として,多数のクラミジア無症状病原体保有者を確認できたが,淋菌については少数に止まった.このことは妊婦健診でクラミジアの検査料が補助されていることに対し,淋菌は検査が有料であることから,検査未実施のため感染者が多数潜在する可能性が考えられた.咽頭感染はクラミジア1例のみの報告に止まり,同じく,検査未実施のため見過ごされる可能性が考えられ,受診者への検査勧奨が望まれる.一方,男性の無症状のクラミジア感染者や女性の無症状の淋菌感染者の多くが「パートナーが有症状」であることを契機に受診していたことから,医療機関受診の動機を持たない若年層への対策として,パートナー検診の重要性を確認することができた.

  2014rep4 三重県における風しんの血清疫学に関する考察 (2009~2013年) 

     矢野拓弥,松野由香里,楠原 一,赤地重宏,小林隆司,西中隆道

    キーワード:風しんHI抗体保有率,風しん幾何平均抗体価,先天性風しん症候群

  風しんの流行は2011年に職場内における成人男性を中心とした散発的な感染事例が相次いで報告された.その後,2012~2013年に成人男性の患者数が急増したことで妊娠女性(胎児)への感染により先天性風しん症候群の発生が危惧され社会問題となった.2011年以降に成人男性の罹患者が多く認められた風しんの流行について,県内の風しん赤血球凝集抑制抗体保有状況の経年推移を基に風しんの血清疫学に関する考察を行った.女性の20~39歳群における風しんHI抗体保有率は90%以上であったが,男性は多くの年齢群で90%を下回っており,同世代の男女間には明瞭な差違が生じていた.特に男性35~39歳の年齢群が低率であったことが30代男性の流行に影響を及ぼしたと推察された.

   2014rep5 三重県における風しんの流行(2012-2013)   

     楠原 一,矢野拓弥,赤地重宏,山内昭則,小林隆司

    キーワード:風しん,先天性風しん症候群,麻しん,ワクチン未接種

 三重県の風しん患者数は全国的な風しんの流行に伴って増加し,2012年は58例,2013年は99例が報告された.性別の内訳は,男性が130例(82.8%),女性が27例(17.2%)であった.特にワクチン未接種者が多いとされる20~40代の男性が108例で全体の68.8%を占めたことは,ワクチンの定期接種によって高い抗体保有率を維持することの必要性を示す結果となった.また,病原体検査において,麻しん疑いの患者から風しんウイルスが検出された事例や,麻しんもしくは風しん疑いの患者からヒトヘルペスウイルス6B型等が検出された事例は,これらの疾患は臨床症状に基づく診断が容易ではなく,検査診断が重要であることを示した.したがって,類症鑑別を含むより精度の高い検査体制を整え,検査診断に基づくサーベイランス体制の構築が必要と考えられた.

 2014rep6 伊勢湾における貧酸素水塊発生時の植物プランクトン種の特徴につい  

      足立敦子,巽 正志*,齋藤麻衣,国分秀樹**,仲野申一***,小林利行****           秋永克三,前川行幸*****

   キーワード:伊勢湾,貧酸素水塊,植物プランクトン種,栄養塩類

    伊勢湾の重要な環境問題のひとつとして,貧酸素水塊の発生が挙げられる.三重県水産研究所が実施している浅海定線観測調査において,貧酸素水塊の直上でクロロフィルa濃度の極大が観測された.この現象は過去の調査でも頻繁にみられていた.そこで,貧酸素水塊発生時に伊勢湾湾央地点の表層水と貧酸素水塊の直上でクロロフィルa濃度の極大が観測された中層水を採水し,植物プランクトン種の同定を行ったところ,表層水では,珪藻が多くみられたのに対し,中層水では,渦鞭毛藻が多かった.渦鞭毛藻は運動性をもつため,生育に適した溶存酸素濃度および栄養塩類を豊富に含む環境に生息し,躍層下層域の物質循環に寄与していると考えられた.

 2014rep7 揮発性有機化合物(VOC)発生施設におけるVOC分析法について  

    寺本佳宏,佐来栄治,髙士昇吾*,秋永克三

    キーワード:揮発性有機化合物(VOC),FID,大気汚染防止法改正

 大気汚染防止法の改正により,光化学オキシダントおよび微小粒子状物質の原因物質である揮発性有機化合物(以下,VOC)に係る排出規制が導入されたため,測定に必要な機器等の整備および発生施設の事前調査等を行い,検査体制を確立した.

2010年度から2013年度にかけて県内延べ32事業場のVOC発生施設延べ41施設を測定したところ,3施設について基準超過または基準超過のおそれがあることがわかった.

 

資料

  ・2014rep8 2013年感染症発生動向調査結果 

    赤地重宏,楠原 一,小林章人, 矢野拓弥,前田千恵,永井佑樹,小林隆司

     キーワード:感染症発生動向調査,病原体検査定点,感染性胃腸炎,日本紅斑熱,風しん

   2013年1月1日~12月31日までに県内の病原体検査定点医療機関等から検査依頼のあった患者数は796人であった.疾患別の内訳は,感染性胃腸炎183人,インフルエンザ89人,リケッチア感染症80人,手足口病49人,無菌性髄膜炎24人の順に多かった.これらのうち,540人(68%)から病原体が分離・検出された.

   主な分離・検出病原体はノロウイルスGⅡ型(NV-GⅡ),ライノウイルス,日本紅斑熱リケッチア,ヒューマンメタニューモウイルス(HMPV),A群ロタウイルス(RoA),パラインフルエンザウイルス(Parainf),RSウイルス,インフルエンザウイルスAH3型(InfAH3)およびB型(InfB)であり,疾患によって様々な病原体が関与していることが明らかとなった.

    2014rep9 2013年度感染症流行予測調査結果(日本脳炎,インフルエンザ,風しん,麻しん)の概要               

       矢野拓弥,楠原 一,赤地重宏,前田千恵,松野由香里,山寺基子,  小林章人,                小林隆司,西中隆道               

   キーワード:感染症流行予測調査,日本脳炎,インフルエンザ,風しん,麻しん

 (1)日本脳炎感染源調査については三重県中部地域で飼育された豚の日本脳炎ウイルスに対する赤血球凝集抑制(Hemagglutination inhibition:HI)抗体保有の有無を調査した.HI抗体保有豚(10倍以上)が11頭で確認された.そのうち2-メルカプトエタノール(2-ME)感受性抗体陽性は7頭(63.6%)であった.

 (2)ヒトの日本脳炎感受性調査における中和抗体保有率は290名中192名(66.2%)であった.

 (3)動物の(2)ヒトの日本脳炎感受性調査における中和抗体保有率は290名中192名(66.2%)であった.インフルエンザウイルスの県内への侵入を監視するため,豚100頭を調査したがインフルエンザウイルスは分離されなかった.

  (4)ヒトインフルエンザウイルスの流行期前の血中HI抗体保有率(HI価40倍以上)    は乳児から学童期に対してのA/California/7/2009(H1N1pdm2009)は0-4歳18.1%,5-9歳65.5%,A/Texas/50/2012(H3N2)は0-4歳15.3%,5-9歳62.1%であった.B型インフルエンザウイルスのB/Brisbane/60/2008(ビクトリア系統)は0-4歳1.4%,5-9歳10.3%であった.B/Massachusetts/02/2012(山形系統)では0-4歳0%,5-9歳3.4%であった.

 (5)風しん感受性調査における全年齢層でのHI抗体保有率は84.8%(男性:81.9%,女性:89.4%)であった. 

 (6)麻しん感受性調査における全年齢層でのPA(Particle Agglutination)抗体保有率は94.8%であった.

  2014rep10 2013年度の先天性代謝異常等検査の概要    

        前田千恵,小林章人,楠原 一,永井佑樹,小林隆司

   キーワード:先天性代謝異常等検査,先天性副腎過形成症,先天性甲状腺機能低下症,先天性アミノ酸代謝異常症,先天性有機酸代謝異常症,先天性脂肪酸代謝異常症

  三重県における先天性代謝異常等検査事業は三重県先天性代謝異常等検査実施要綱に基づき,アミノ酸代謝異常症5疾患,有機酸代謝異常症7疾患,脂肪酸代謝異常症4疾患,ガラクトース血症,先天性副腎過形成症および甲状腺機能低下症の19疾患を対象に実施している.2013年度は県内の新生児のうち保護者が希望した15,298人について検査を実施した.そのうち再採血を依頼した検体は計491件,精密検査を依頼した検体はフェニルケトン尿症3件,メチルマロン酸血症またはプロピオン酸血症1件,イソ吉草酸血症14件,メチルクロトニルグリシン尿症またはヒドロキシメチルグルタル酸血症または複合カルボキシラーゼ欠損症1件,先天性副腎過形成症39件,先天性甲状腺機能低下症16件の計74件であった.また確定患者数は,フェニルケトン尿症1人,プロピオン酸血症1人,先天性副腎過形成症1人,先天性甲状腺機能低下症7人の計10人であった.

  2014rep11 三重県における2013年度環境放射能調査結果   

        吉村英基,森 康則,澤田陽子*,前田 明,志村恭子

   キーワード:環境放射能,核種分析,全ベータ放射能,空間放射線量率

   原子力規制庁からの委託を受け,降水中の全ベータ放射能測定,降下物,大気浮遊じん,河川水,土壌,蛇口水および各種食品試料のガンマ線核種分析(I-131,Cs-134,Cs-137,K-40)ならびに空間放射線量率測定を実施し,三重県における環境放射能の水準の把握を行った.                                                                                                                     降水中の全ベータ放射能,モニタリングポストを用いた空間放射線量率の連続測定およびサーベイメータを用いた月1回の空間放射線量率の測定結果では,異常は認められなかった.核種分析においてはCs-137が降下物試料などから検出されたが,検出濃度は福島第一原子力発電所事故前と同レベルまで低下していた.

  2014rep12 三重県における4-ノニルフェノール(分岐型)および4-t-オクチルフェノールの状況について

        佐来栄治,寺本佳宏,岩﨑誠二

        キーワード: 4-ノニルフェノール,異性体,環境基準,4-t-オクチルフェノール,要監視項目

   4-ノニルフェノールの水生生物にかかる環境基準の類型指定を行う予備調査を2013年に,三重県内43河川57地点について行った.また,環境基準生活環境項目の要監視項目として設定された4-t-オクチルフェノールも同時に測定を行った.その結果,4-ノニルフェノールの異性体および4-t-オクチルフェノールの環境濃度は,基準値および指針値のおよそ10分の1以下であった.

    2014rep13 三重県内における河川の水質分析結果-直鎖アルキルベンゼンスルホン酸とその塩(LAS)-

       西木美紗子,寺本佳宏,岩﨑誠二,佐来栄治

   キーワード:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸とその塩(LAS),環境基準 

    平成25年3月27日,環境省により直鎖アルキルベンゼンスルホン酸とその塩(LAS)が環境基本法に基づく環境基準のうち,水生生物の保全に係る環境基準の項目に追加された.これを受けて,三重県では,県内43河川の57地点において,水生生物に係る環境基準の類型指定を行うための予備調査を実施したので,その結果について報告する.

本ページに関する問い合わせ先

三重県 保健環境研究所 〒512-1211 
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